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冬桜



受け取っていた
降り積もる雪が
髪で
溶けてゆくまでの時間に
 
美しくあるために振り払ってきた
手の
表情は、
書かなくなった言葉の前で滲んで、
望まれているものを
あげられない日に、消えて、
よろこんでくれることを探していた、
本当のことを 告げる前の空
 
打ち消してきた、瞬間の
まばたきが、光を浴びて散る
花びらを追うように
つないできた言葉は、結ぶ間もなく新たに
届く街灯の光に燃え立つ、赤く、開いた雲の
絶え間から
姿をほどいて ここに
降る
 
手から手へ、
渡された
ご飯を食べて、行ける人が
行けるところまで、
気づかれないように、はじまっている
たたかいの底で軌道を本能に握られたまま、
行けるところまで、つづく冬の車窓、意識に
ゆられて意識のその先を夢見る、季節からも
こぼれおちるように、人間の
意識の外へも
伝う雨






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