読書note|『縄文人も恋をする!?』


  • 山田康弘「縄文人も恋をする!?」

  • 株式会社ビジネス社2022年3月17日発行

  • 200ページ


 タイトルは手に取りやすいように作られているだけでメインのテーマではない。この本は縄文時代についてそのようなライトかつはじめに気になるようなQ&Aをたくさん用意してくれている。著者の「縄文時代の歴史」(講談社現代新書)を先に読んでいたが、そちらは学術的な内容を含んだ入門書という感じだった。もっと簡単に、ということで作られたのがこの「縄文人も恋をする!?」である。

縄文人はどんな服をきていたの?

 これも本当は難しい問題です。北海道の斜里町朱円周堤墓遺跡で火葬骨に付着していた炭化したアンギン編みの服の一部が確認されたことはあります。(中略)完全な縄文時代の衣服の出土例は、まだありません。

「縄文人も恋をする!?」p.90

 縄文人の服というとなんとなく絵が浮かぶが、実際には詳しくはわからないようである。再現の参考には土偶の形状や紋様がつかわれるらしい。自分を良く見せるためにおしゃれをするという感覚があったのか、実用的なものなのか。あるいは今とあまり変わらないのだろうか。服を作るのが得意な人がいたり、流行などもあったのだろうか。大人はアクセサリーのような装身具をつけていたようであるが、呪術的なものかもしれない。

縄文時代には、飢え死にした人はいなかったのですか?

 これは難しい質問ですが、おそらくたった一人で暮らしている、そういう状況がなければ、餓死することはなかったと思います。
 縄文人は現代人に比べると少人数で暮らしていましたが、相互補助はかなり発達していたようで、怪我をしたり、病気にかかって動けなくなってしまった人を助けて、食物を与えていたこともわかっています。困った時にはお互いに助け合う、互恵的な社会だったのでしょう。

「縄文人も恋をする!?」p.105

 どこからが味方でどこからが敵になるのだろう。そしてそれはいつから?現代の価値観で見ても何もわからない。平和で穏やかなのか、毎日が生きるか死ぬかのたたかいなのか。

貝塚は単なるゴミ捨て場でないということですが?

 貝塚は、食べ残しや廃棄物といった「ゴミ」を捨てた場所と言われることが多いのですが、実際に発掘してみると、貝塚の貝層中から、しばしば埋葬された人の骨や、まだ使える土器や石器などが見つかります。

「縄文人も恋をする!?」p.158

 生活に対する考え方、そもそもゴミという概念を持っていたのかわからない。ふと糞土師の伊沢正名さんを思い出した。人間は自然の一部であって、消費して廃棄物を出すということではなく、大きなサイクルの中にいて回転しているようなものだったかもしれない。

 この他にも階層社会について、楽器について、恋愛について、死生観について、引用したい面白い話がたくさんある。縄文人は私たちと同じホモ・サピエンスなので言葉を話していたと考えられるが、文字がないのでわからないことが多い。そのために想像が膨らむ。学術的にあやしいとされる縄文関連の本も多いが、それも含めて多くの人がロマンを抱く不思議な日本列島の歴史のルーツなのだろう。

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