結局、スウェットがグレーのイメージなのはなぜ?
この記事にアクセスしたということは、「スウェット(ないしはパーカー)の色といったらグレー!」というイメージをお持ちなのではないだろうか。
そのイメージを裏付けるかの如く「🔍 スウェット」で画像検索をかけると、6-7割程度のスウェットがグレーの色調で作られていることがわかる。
画面上がほとんどグレー色に染まるのだ。
しまいには「グレーのスウェットは部屋着に見えるからおしゃれ服には向かない!」とまで言われてしまう始末。
では、一体なぜ「スウェット=グレー」というイメージが社会全体の共通認識になり得たのだろうか。
今回の記事では、スウェットがなぜグレーのイメージを持たれがちなのか、について可能な限りわかりやすく迫っていきたい。
その過程で、現代的な衣服の作り方・捉え方についても言及する。
釈然としない数々の“スウェットがグレーの理由”
この記事を執筆するにあたり、いくつかの文献資料及びネット記事を閲覧したが、実はこれといって納得感のある理由が見当たらなかった。
これを前提としてお伝えしなければ、読者の方に極めて不誠実な内容になると考え、前置きさせていただく。
ただ!
当然、記事にしている以上、皆さんにとって学びのある内容に仕上がっていることを同時にお約束したい。
前置きはさておき、
「🔍スウェット なぜグレー」で検索をかけると、概ね以下の内容が出てくるのではないだろうか。
「スウェットは歴史的に、ウールが原料のフットボールシャツをもとにして作られている。織り機の発達とともにコットンで編みあげることができるようになると、高価なウールに代わって、より安価なコットンが素材として用いられるようになる。その際にウールの高級感をコットンに変更したことで損なわないように、コットンでも比較的ウール見えする色として“杢グレー”が採用された」と…。
このような最もらしい説明がされている。
同時にスウェット(=汗)は、その源流にフットボールシャツがあることからもわかるように、運動の際に着用されていたことから、杢グレーは「汚れが目立ちにくい色」として採用された。とする説明も散見される。
筆者はこの様々な視点から「それらしい説」がいくつか流布されている点に、どうも違和感を覚える。
どれも確かに筋は通っているが、それぞれ都合のいいように解釈されただけのようにも思える。
ただ、中でも最も説得力があるのは「ウールの代用としてコットンを使用する際に、ウールの質感を担保しようとした」という説だろう。
この「ウールの高級感を担保しよう」という“高見えさせる感覚”は、昨今の服作りの中にも近いものを感じる。
わかりやすい例を挙げるなら、ユニクロで展開されている感動ジャケット・感動パンツ(ウールライク)だ。
商品名にウールライクがついていることからもわかるように、ウールではない素材(主にポリエステル)でウールの美しい風合いを再現しようという試みがそこに見て取れる。
感動ジャケット・パンツは、まさにスウェットと同じようにウールのような高見えを目指した事例といえるだろう。
他にも「シルケット加工」と呼ばれる加工も高見えを狙った一つの例だ。
シルケット加工とは、コットンを引っ張りながら、同時に特殊な加工液をかけることで名前のとおり「シルク」のような光沢のある風合いに仕上げる加工方法を指す。
近年、ファストファッションで綿素材の安価な製品を高見えさせる加工として、よく見受けられる。
このように「高見え」という単語は、ファストファッションが台頭した2000年代後半以降の概念だろうと筆者は考えていた。
しかし、スウェットが誕生した1920年ごろから「高見えさせるために(源流に近づけるために)」洋服のデザインやカラーリングが行われていたかと思うと興味深く感じる。
現在、ファストファッションが大量に製造する「高見えする衣服」が、数十年あるいは数百年の時を経て発見された時、この記事のように「コットンなのになぜシルクのような光沢を出す加工を施しているのか?」と誰かが疑問に思うのかもしれない。
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