病気になる前に真剣に向き合う、そんな社会はどうですか?

はじめに

病院って、病気になったら行く場所ですよね。
もちろん、病気になってしまったら自分の体と向き合い頑張って治療をしなければなりません。
それは事実です。

でも、病気になる前はどうでしょう?
自分の身体と向き合っていますか?
メンテナンスしてますか?
そもそも病気にならない方法はないのか、考えたことはありませんか?

今日はそんな予防医学的な話をダラダラとしたいと思います。

今日の結論は、自分の健康と日本の財政は、国民の意識次第で変わる可能性がある、ということです。

こんなは人は必読

40歳以上の健康な方
しばらく健康診断を受けていない方
病院なんか嫌いだと思っている方
予防医学に興味のある方

健康寿命を意識したことありますか?

日本人の寿命は伸びている、なんてことはよく耳にしますが、寿命とは心臓が止まるその瞬間までの時間を意味します。

元気に、楽しく、幸せに、そんな生活から急に寿命がきて人生を終える。
そんなハッピーな人生なら良いですが、ありえないですよね。

どこかで不調の兆しが現れ、心身を労わりながら生活し、最期の時を迎えるのが現実です。

より幸せな人生とは?

元気に、楽しく生活できる時間が1年でも長い方が幸せですよね。

健康に害されることなく、元気に過ごせる期間を、健康寿命と呼びます。

例え80歳まで生きられるとしても、病気で苦しみ、自由な時間を過ごせない期間が数年間あったとしたら?
もちろん、生きていることに意味はあります。
大切な人と過ごす時間は1年でも長い方が良い。

でもどうせだったらその時間を有意義なものにしたいですよね。

治療にはお金がかかる

病気になって失うのは時間だけはありません。
現実的な話になりますが、お金もかかります。

とは言っても日本の保険制度は非常に充実しています。
国民自身が負担する毎年の医療費には上限がありますから、全ての国民が金銭的な制約を受けることなく、保険診療を受けることができます。

生活保護の方は医療費の自己負担はゼロですし、後期高齢者の負担は1割。
限られた収入の中でも医療を受けられるのが当たり前になっており、多くの皆さんがそこに疑問を持つことはないでしょう。

しかし、自己負担の割合に関わらず、実際には同額の医療費が生じていることを忘れてはなりません。
誰が治療を受けても、実際には同じ額の医療コストが発生しており、支払いの残りを国の財源が負担しています。

これも当たり前のことですが、でも絶対に忘れてはならないことです。

あなたの周りにある医療費は、あなた自身とご家族のもの、そのうちおよそ3割。
ですが、国が抱える医療費は残り7割×1億2000万人。

年間の国内の医療費総額は40兆円を超えますが、国民負担は約12%、残りの88%は公費と保険料で補完されているのです。

癌を例にした早期発見の大切さ

勘違いしないで頂きたいのは、国民の負担を増やすべきだ、と言っているわけではありません。

そもそも、病気にならない、重症化させない努力をもっとするべきではないのか、ということです。

例えば肺癌1つとっても、健康寿命及び医療費という観点から、様々なフェーズがあります。

まずは肺癌にならないよう配慮すること。
エビデンスがあるのは喫煙くらい。
タバコを吸わない、家族に吸わせない。
それだけで発症リスクを抑えられます。
肺癌にならなければ、もちろん医療費も不要です。

次に早期発見に努めること。
肺癌は予後の悪い嫌な病気ですが、早期に手術をすればその成績は非常に良好です。
手術後の生活にも、それほど大きな支障は出ません。
定期的な健診と検診を受けることで、長い健康寿命という時間を得ることができ、医療費も限られた範囲で止まります。

しかし、肺癌は進行してしまうと厄介です。
治療のベースは抗がん剤をはじめとした薬(内科的治療)になるからです。
癌に対する抗がん剤治療は、非常に高額です。
しかも、薬で癌を完全に消すことはほぼ期待できません。
あくまで縮小させ、進行を遅らせ、現状を維持して生活できるようにするのが一番の目的です。
そしてそれは、癌が手につけられなくなるまで、ずっと続きます。
時には、一人の患者さんの年間治療費が1億円を超えるような新薬も必要になります。
そんな高額な治療が、長期に渡り必要になります。

進行癌は医療費も高額な上、患者さん自身の健康寿命という大切な時間を蝕み、癌を中心とした生活を強いられます。

予防医学について意見交換した話

先日、ドクター仲間と話しているときに、現状の医療制度、国民の健康に対する意識、予防医学の重要性に関して話題になりました。

我々ドクターの仕事は、病気になってしまった患者さんを一生懸命に治療することです。
治療する、というよりは、治療の手助けをすること、というのが正しいでしょうか。
病気を治す強い意志を持たなければならないのは、患者さん自身です。

患者さんの中には、何十年も医療機関を受診せず、ひどい状態で来院される方や、処方した薬を飲まずに悪化させる方、そもそも勝手に通院を止めてしまう方など、ドクターが頭を悩ます患者さんも少なくありません。

もっと意識改革が必要だよね
病院の役割も考え直さなきゃいけないね
治療にお金をかけるのではなく、その予算を予防に回したいね

そんな話になりました。

とは言え、現場のドクターにできることは少なく、一人一人の患者さんに向き合ってお話をしたり、こうやって細々と情報を発信することくらいしかできません。

病院の立ち位置、こんな未来はいかがでしょう

冒頭にも書きましたが、病院って病気になったら行くところですよね。
疑いようもない事実です。

ですが、病院は病気になる前に行くところ、って考え方も間違いではないですよね?
健診施設や人間ドック施設が該当します。
健康であることを確認する場所も病院なのです。

病院はもっともっと国民の身近なものになっても良い気がします。
元気だけど検査をする、医療者の問診を受ける、食事や生活の見直しを行う。

さらに言えば、健康なうちから薬を飲むことで生活習慣病の発生を抑えることができるとしたら?
高血圧になる前に、そのリスク患者が予測でき、予防的に内服を開始することで将来の高血圧発症を防ぐ。

予防的に内服することで、内服すべき人数は増え、一見医療費の増加に見えるかもしれません。
ですが、高血圧発症を抑えられれば、その先にある心血管系の病気の発症リスクを軽減することにも繋がります。
生涯を通して考えれば、国全体の医療費削減につながる可能性は十分にあると思います。

もちろん、そのためのデータがまだまだ不十分ですから、私も含め、積極的に研究をする必要があるのですが。

日々患者さんを目の前にしつつも、そんなことを考えている今日この頃です。

皆さんが健康寿命や医療費に関して少しでも考えるきっかけになってくれれば幸いです。

最後に問題です

『けんしん』という言葉を聞くと、どちらの『けんしん』を思い浮かべますか?

『けんしん』には『健診』と『検診』があります。

前者はいわゆる健康診断ですね。
学生さんから大人まで、定期的に行う簡易的なスクリーニング検査のようなものです。

一方で後者は、特定の疾患を早期発見することを目的として行う検査を意味します。
人間ドッグも任意型検診として扱われますが、もっとも一般的なのは対策型検診といって、対象者を明確にしぼって公的に行う検査です。

対策型検診で最も一般的なものは『がん検診』ですね。
その中でも、国が推奨している『がん検診』の対象となる癌が5種類あります。
自治体によっては6種類を推奨していますが。
それらの癌の種類、わかりますか?

健康寿命を意識したこの機会に、ぜひ調べてみて下さい!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?