月の光(藤崎くんのPHS)
たしかあれは高校最後の日のことだ。先生から臨時ボーナスが配られ、教室はいろめき立った。
ボーナスというのは校友会の出資金のことで、3万円が返還された。
もちろん親に返すのが筋だろうが、3年前の入学のときに出資したことなど覚えているとは思えない。お小遣いとしてもらっておこう。考えることはみんな同じだった。
ホームルームのあと、仲間うちで話し合った結果、3万円で携帯電話を買うことにした。当時私たちはPHSを使っていたが、携帯電話が急速に普及しつつあり、早々と乗り換えたかった。