勝手にファンド評価 Vol.2「ピクテ・グローバル・インカム株式、キャピタル 世界株式ファンド 2022年6月末基準」

こんばんわ。
元ファンドマネージャーのJackです。
第2回のファンド評価を書こうと思います。

今回の対象ファンドは、「ピクテ・グローバル・インカム株式」、「キャピタル 世界株式ファンド」です。比較として、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスF」も並べて見ていきます。

なお、これは元ファンドマネージャーが徒然なるままに、個人的趣味でファンド分析をやってみた感想文を公開しているだけです。
投資助言とか、アドバイスではありません。投資判断は、ご自分の責任でやってください。
また、情報の正確性も保証しません。個人的な感想文として読んでください。

それでは、始めていきます。

0.各ファンドの概要

「ピクテ・グローバル・インカム株式※以後、”ピクテ”と書きます」:世界の高配当利回りの公益株に主に投資するファンド。ベンチマークはなし。為替ヘッジもなし。残高は2022年6月末現在1兆円を超える巨大ファンドです。このファンドは、ファンドマネージャーが投資対象の銘柄と配分を決めて運用するアクティブファンドで、世界中の配当利回りが高いファンドに投資し、分配金を定期的にできるだけ払うことが狙いのファンドです。
「キャピタル 世界株式ファンド ※以後、”キャピタル”と書きます」:世界中の株式に分散して投資を行うファンド。ベンチマークはなし。為替ヘッジもなし。残高は2022年6月末現在2千8百億円程度。ファンドマネージャーが投資対象の銘柄と配分を決めて運用するアクティブファンドで、複数のファンドマネージャーが運用に関わり、投資対象や運用に関するアイデアの分散を図りながら運用するところに特色があるファンドです。
「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスF  ※以後、”三井住友”と書きます」:日本を除く先進国と新興国の株式に投資を行うファンド。ベンチマークはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスという株価指数で、それに連動する成果を目指すファンドです。為替ヘッジはなし。残高は2022年6月末現在1千億円程度。株価指数への連動を目指すインデックスファンド(パッシブファンド)です。

1.各ファンドの価格推移

※各社の基準価額データから作成。2011年6月末を1とし、月次ベースで指数化。                            

まず、上の基準価額の推移グラフを見てみましょう。
2011年6月末を1とし、それぞれのファンドの基準価額の推移を表してます(分配金再投資で計算)。
キャピタルがインデックスファンドである三井住友に追随する成績である一方、ピクテはその2ファンドから大きく離され、リターンは大きく負けています。2022年6月末現在で、ピクテ 2.399、キャピタル 3.525、三井住友 3.673です。期間中、ピクテは139.9%、キャピタルは252.5%、三井住友 は267.3%のリターンを上げたということです。
基準価額の推移から見て、キャピタルは三井住友のインデックスファンドのように、世界中の株式市場全体の動きを捉えた運用を志向しているようですが、やや負けています。
ピクテは、ファンドから分配金を定期的に払うことに主眼を置いているため、配当利回り重視の運用で、株式市場全体の動きは特に気にせず、運用しているようです。

2.各ファンドの年率リターンと年率リスク

※各社の基準価額データから作成。2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。        

次に、各ファンドの年率リターンと年率リスクを見ていきます。
年率リターンは、2011年7月から2022年6月の132カ月間のリターンを年率換算したものです。
例えば、ピクテの場合、基準価額が132カ月間で2.399倍になっており、139.9%のリターンを上げていますが、年率リターンの計算式は、以下のとおりです。
    年率リターン= (𝟏+139.9%)^(𝟏𝟐/𝟏3𝟐)-1=8.28%
    (※2.399を12/132乗し、1を引きます)
キャピタルと三井住友は、年率リターンが12%超になっている一方、ピクテは8%台に止まり、他の2ファンドにやや劣後しています。
一方、年率リスク(※基準価額のブレ)を見ると、ピクテの場合は、1年間で、プラス方向には+14.11%、マイナス方向には▲14.11%ブレるということを示しています。キャピタルと三井住友は、17%台後半でリスク水準が近い一方、ピクテは14%を少し超える程度で、ピクテのリスクの低さが目立ちます。
シャープレシオ(※年率リターン÷年率リスク)は、年率リスク1単位あたり、どれだけのリターンを上げたかを測る指標ですが、キャピタルと三井住友は、それぞれ0.68、0.71で近い水準です。それに対し、ピクテは0.59で低くなっています。
次に、上表の年率リターン、年率リスクをグラフ上にプロットしてみます。それが下のグラフです。横軸を年率リスク、縦軸を年率リターンとしています。

※各社の基準価額データから作成。2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。      

キャピタルと三井住友は、リスク、リターンともほとんど同水準ですが、グラフ上の見た目でも、インデックスファンドの三井住友の方がアクティブファンドのキャピタルより少し上の方に位置しています。同じリスク1単位では、三井住友の方が少し良い結果ということが見てとれます。
ピクテは、2ファンドと比べ、リスクが低い一方、リターンも低く、グラフ上の見た目では、キャピタルや三井住友と比べた良し悪しは判別がつきません。ただ、リターン/リスクから計算されるシャープレシオの数値は、2ファンドより低いので、リスク1単位のリターンという観点では、2ファンドに劣後しています。

3.各ファンドの最大下落率

※各社の基準価額データから作成。2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。      

次に、それぞれのファンドが期間中、最大でどれだけ下落したかを見ていきます。
結果は、上のグラフのとおりで、最大下落率は、ピクテが最も小さく、キャピタルが最も大きくなっています。
ピクテは2020年1月~2020年3月の間に最大の下落が発生した一方、キャピタルと三井住友は2015年5月~2016年6月となっており、発生時期が異なります。キャピタルと三井住友は、ポートフォリオの特性が極めて似ている一方、ピクテは全く異なる独自の運用を行っていることがわかります。

4.各ファンドの年率リターンと年率コスト

※各社の基準価額、信託報酬等のデータから作成。                      
年率リターンは、2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。            

次に、年率リターンと年率コストの関係を見ていきます。
年率コスト(※信託報酬等(税込))は、ピクテは1.8100%、キャピタルは1.7010%、三井住友は0.2750%で、かなり違います。
やはり、アクティブファンドのピクテとキャピタルのコストが大きく、インデックスファンドの三井住友のコストが小さくなっています。
ですが、年率リターンが一番高いのは、一番コストが安い三井住友です。
これは、年率コスト1%あたりの年率リターンとして見れば、もっと明らかになります。

※各社の基準価額、信託報酬等のデータから作成。                     
  年率リターンは、2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。                      

上のグラフは、以下のとおり計算した”Return to Cost レシオ”を表したものです。
 年率コスト1%あたりの年率リターン(%)
      =年率リターン(%)÷ 年率コスト(%)× 1/100

ファンドで支払ったコスト1%あたりリターンは、ピクテが4.57%、キャピタルが7.13%、三井住友が45.65%です。圧倒的に三井住友のリターンが高いですね。理由は、三井住友のコストがぶっちぎりで安いからですが、お買い得感が高いです。

まとめると、単純なリターンの大きさでも、シャープレシオの大きさでも、三井住友が一番勝っており、かつコストから見たリターン(お買い得感)でも、三井住友が最も魅力的という結果になります。

5.各ファンドの年率リスクと年率コスト

※各社の基準価額、信託報酬等のデータから作成。                    
  年率リスクは、2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。             

次に、年率リスクと年率コストの関係から見てみましょう。
グラフでは、キャピタルと三井住友が取っているリスク水準は、ほぼ同水準です。比べると、コストはキャピタルが三井住友より極端に大きいです。
一方、ピクテはリスクは2ファンドより小さいですが、コストは一番高いです。コストはマイナスのリターンですから、コストが高ければ、それを補うために高いリターンを狙う必要があります。高いリターンを狙うなら、高いリスクを取らなければなりませんが、ピクテは他のファンドとの比較では、そうなっていないですね。

次に、コスト1%あたりに換算したリスクを見てみましょう。

※各社の基準価額、信託報酬等のデータから作成。                      年率リスクは、2011年7月~2022年6月までの月次データで計算。            

コスト1%あたり、ピクテが7.80%に対し、キャピタルは10.50%、三井住友は63.92%で、大きく異なっています。ここから言えることは、三井住友が、同じコスト1%あたりでは、積極的に大きなリスクを取り、大きなリターンを取りにいっているということです。また、キャピタルの方が、ピクテより同じコストでは高いリスクテイクをしています。

6.まとめ

⇒ 2011年7月から2022年6月の132カ月間の成績で見る限り、
①基準価額の推移では、運用成績は三井住友が1位、キャピタルが2位、ピクテが3位で、三井住友とキャピタルのリターンがピクテより大幅に高い。
②シャープレシオ(=リターン/リスク)も三井住友が1位、キャピタルが2位、ピクテが3位で、三井住友とキャピタルがピクテより高い。
③キャピタルの最大下落率が際立って大きい一方、ピクテは最も小さい。ポートフォリオの特性が似ていると考えられるキャピタルと三井住友では、三井住友の方が最大下落率が小さい。
④単純なリターンの大きさでも、シャープレシオの大きさでも、三井住友が一番勝っており、かつコストから見たリターン(お買い得感)でも、三井住友が最も魅力的。また、ピクテとキャピタルを比較すると、コストはピクテの方が高く、リターンはキャピタルの方が高い。
⑤投資家が負担するコスト1%あたりでは、三井住友が圧倒的に大きなリスクを取り、大きなリターンを取りにいっている。ピクテはコストが一番高いので、それをカバーして高いリターンを上げるには、最もリスクテイクをする必要があるが、そうなっていない。

結論としては、私の感覚では、まずピクテは他の2ファンドと比べ、リスクリターンのバランスがイマイチだと感じます。リターンを狙うことよりも、分配金を継続的、安定的に支払うことを目的に運用されています。分配金狙いで投資するのでしたら、いいのかもしれませんが、高いリターンを求めるなら、他の2ファンドの方が良いと思います。

残るキャピタルと三井住友では、やっぱりコストが安いインデックスファンドの三井住友の方がいいですね。基準価額の推移が似ていて、最大下落率の発生時期も同じです。
また以下は、3ファンドの相関を表した表ですが、キャピタルと三井住友の相関は0.972で極めて高い正の相関が見えます。(※相関は、0~1は同じ方向に動く正の相関で、1なら完全に同じ動きをします。一方、-1~0は逆の方向に動く負の相関で、-1なら完全に逆の動きをします。)

※各社の基準価額のデータから作成した月次リターンから計算。               

同じようなポートフォリオなのであれば、単純にリターンが高く、シャープレシオが高い三井住友がいいですね。コストも安く、コスト対比のリターンから見たお買い得感も大きいので尚更です。

以上、私の趣味で行ったファンドの分析と感想でした。

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