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読書ログ:侍 - 遠藤周作の名著が信仰とは何かを教えてくれる

遠藤周作の侍の読書ログ。


遠藤周作すごい!の一言に尽きる名作です。
人生で信じるべきものを明らかにしてくれる感動小説。自分の人生に疑問符が浮かんだ時に読んでほしい一冊です。

これは私が運営しているブッククラブでの選書。最近、SHOGUNが流行っているので同時代の小説をピックしようという気軽な気持ちでの選書でしたが、度肝を抜かれる良書でした。


あらすじ

17世紀初頭の日本を舞台にした小説で、低位の侍がキリスト教牧師や商人たちと共に、使節団の一員としてメキシコ、スペイン、ローマを訪れ、外国での経験を通じて自己の信仰とアイデンティティを見つめ直す物語。お役目を果たすために信じてもいないキリスト教の洗礼を受けるのですが、帰国するとキリスト教禁制となっていたという、世の中の流れに翻弄される個人の小ささを描きつつ、個人の信仰とは何かをおしえてくれる素晴らしい一冊!

メインキャラクターの侍と宣教師

物語はメインキャラクター2人の視点から、交互に語られる形式で進みます。
1人は、侍。北国で一生うだつも上がらず細々と暮らすはずだった侍が、急遽使節団の1人に抜擢。北国とスペインとの貿易を実現させるために、日本から船旅へ。無骨で自分の心情も深く語らないのですが、彼の心情の変化や異文化からの影響が行動の変化から見て取れます。
もう1人はスペイン人の通訳兼宣教師。野心家で政治的手腕を持つ人物で、キリスト教迫害に傾く日本を自分の力でキリスト教国にしようと企む。
こんな2人がお互いの信念を胸に、大海を渡る。

心を揺さぶるエピソード(ネタバレ)

1つ目は、とても礼儀正しくお上に逆らわないのこの時代の侍が、メキシコにてインディオと共に暮らす日本人と遭遇するシーン。使節団の長である宣教師は行くなと命ずるのですが、自身の好奇心に勝てずその日本人に密会しに行く。侍の自立心の芽生えが感動的。
2つ目は、宣教師と侍の心の通じ合い。当初は互いにバカにし、利用し、不信感しかない2人ですが、自身の信じるものに裏切られた後に、互いを守ろうとする行動をとる。友情とは言えないだろうけど心の結びつきを感じられてグッときます。

理不尽of理不尽な話ですが、登場人物それぞれが、自分なりの救いを見つけて果ててゆく姿が感動的。信仰とは何か、信念とは何か、考えさせてくれます。

信じるものを外部に置くのは儚い

400年ほど前の侍がただ闇雲にお上を信じたように、現代人も企業や政府や経済など、信じているものがあると思います。私は科学を信じているのですが、400年くらいしたらまた変わってそうですもんね。(人類滅びてる説もあるけど)
これらは絶対的ではなく、あと400年もすれば、誰も今の人間が信じてる価値観なんて信じていないだろうなーと、心地よい「現世の苦しみどうでも良いわ感」、いわゆる虚無感や諦観を抱かせてくれた遠藤周作に痺れました。

読んでいる最中に、自分の外に信念を求めるのは危険があるな〜と悟りモーメントが訪れるおすすめの一冊です!

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