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SS【嵐の夜に】


嵐の夜、外から助けを求める声が聞こえてきたので、ぼくは少しだけ窓を開いた。

ビュウーー!! という音とともに強い風が部屋中を駆けめぐる。


あれは近所の騒音オジサンだ。

夜中に窓を開けて歌を歌う、注意しても聞く耳をもたない困ったオジサンだ。

商売をしているが表裏の激しい性格で、陰では客の悪口を言っている。

オジサンは風に飛ばされたのか、木の高い所で枝に引っかかり叫んでいる。

街灯に照らされたその姿は、喜劇を見ているようだ。

他人を蹴落としてでも自分の権利だけは大声で叫ぶタイプの人間だ。


これが因果応報とかいうやつだろうか。



ぼくは一瞬、トドメをさしにいこうかと思ったが、冷静さを取り戻し、窓を閉め、カップ麺にお湯を注いだ。


カップ麺を食べ終わると考え直した。


一寸の虫にも五分の魂。

仕方ない。


ぼくはもう一度窓を開け、仕事で使っているかなり明るいライトでオジサンの顔を照らした。

あんたの存在に気づいた。今から救助に行くぞという意思表示のつもりだ。


しかし眩しすぎたのか、ひるむように片手で目を覆うオジサン。

次の瞬間、オジサンの身体は宙に舞い、西の空へ消えていった。


結果的にぼくがトドメをさした感じになったが悪気はない。

ぼくは窓を閉め、よく冷えた瓶ビールの栓を開けた。

そして遠い目で呟いた。


「オジサンサヨウナラ」


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