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noteで出会った読書:『ベルリンは晴れているか』

深緑野分さんの直木賞候補作、『ベルリンは晴れているか』を読了した。とても面白くて、一週間ぐらい続けて一息に読んだ。

この本との出会いは、たぶんnote編集部のおすすめに入っていた、著者・深緑さんのこのnoteだ。これがなかったら、読まなかったかもしれない。

私は「現代の日本人が戦後のベルリンを」、真藤さんは「現代のヤマトが戦後のウチナーを」書いた。
自分が体験していないことに魅力と語るべき物語を見出し、心血を注いで書き上げた気持ちを、たぶん私は理解できるし、真藤さんの受賞に僭越ながら共感できたからかもしれない。

ということでぐぐっと惹かれてKindle版をぽちっとして、読みかけの勉強本をほっぽらかして、どんどん読んでいった。

ちょうど、昨年にローラン・ビネの『HHhH』を読んで、第二次世界大戦ドイツの雰囲気を少し知り(文中でも「ハイドリヒがプラハで暗殺され…」というくだりがあって、時間軸が揃う)、年末には野坂昭如『アメリカひじき/蛍の墓』を読んで、日本の戦中戦後を少し味わっていたから、よい流れでベルリンの空気に触れることができた。

それにしても、戦争というのは、本当にぼろぼろと人が死んでいくのだ。『ベルリンは晴れているか』は、終戦直後のベルリンを舞台にした主ストーリーと、主人公・アウグステが子どもだった戦中時代の「幕間」が交互に差し込まれる構成だけれど、幕間における人々の死にぶり(同胞に処刑されたり、空爆にやられたり、飢えや病気で命を落としたり)は、淡々と描かれているが、なかなか重たい。特に第三帝国の敗色が濃厚になってきた辺りから、一気に追い込まれていくところは、特に重たい。

戦後の暮らしの「貧しさ」も、現代日本の風景からはとても遠く離れていて、わずかな配給券でやりくりしていく、焼け残った人たちのしたたかさを追いながら、たくましいなあ、と思う。

ベルリンを訪れたことはないけれど、このところ深緑さんが「メイキング」的に上げてくれている取材写真を見ながら、どっぷりと74年前のベルリンを体験した。

この本、読書メーターの登録は1600を越え、300近い感想が書かれている。広く支持されている。ぜひ読んでみてほしい。


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