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”お前らはタダで働く奴隷” 【映画業界 ハラスメント体験記#0】


はじめに

アップリンクの浅野氏によるパワハラ問題の告発に端を発し、続々と映画業界の労働環境を是正するよう求める声がSNS上に溢れている。それはプロフェッショナルとして働く映画製作の場においても例外ではなく、あろうことか高等教育の場に於いても例外ではない。死にゆく現代日本の映画業界とは、こういったハラスメントや暴力暴言・ほぼ無給とさえ言える給与形態、それを甘んじて受け入れている若者がいてこそ成立しているのだ。

今回は、私の実体験を記そうと思う。今後、映画業界で食っていこうとする者こそ、この問題は真摯に向き合わなくてはならないと思う。

※このシリーズは、2020年6月頃に、過去のブログにて執筆していたものを、大幅に加筆し、修正したものです。その時期的な話(コロナ以前の話)や社会的地位(当時は学生だった点)に関しては、そのまま修正せずに書いていますので、ご了承ください。

 

「お前らはタダで動く奴隷やから」

これは、私が実際に商業映画の現場(2020年4月にクランクイン)において、唐突に投げつけられた文言である。

ちなみにこの発言をした人間が2021年現在も学内で教鞭を執っているから驚きである。その上、彼の日常的な暴力を目の当たりにしながら、ヘラヘラと笑っている他の教授陣にも辟易としている。もしも、同様の被害に遭っている者がいたら、連絡をしてほしい。学生課に相談すれば、対処してくれるはずだ。

少しでも映画の業界改善に寄与すればと、彼を中心に、映画を取り巻く今の高等教育の場での問題を記してみようと思う。少し長くなるかもしれないが、できる限り短期間のうちに記そうと思う。

 

本題に入る前に

この記事で初めて私を知った方のために、簡単に自己紹介をしておこうと思う。

当時、大阪芸術大学の映像学科に通っていて、領域としては監督として、大学では指導を受けていた。大学に入った経緯としては、ピンク映画やロマンポルノが好きすぎるあまり、本学の教授に敬愛する人間が複数おり、そんな方々と話す機会があるならと、入学を決めた。誤解しないでもらいたいが、大阪芸大には多くの尊敬できる映画人は確かにいる。そこだけは、強調して言っておく。けれど、そういう人がいる組織の中でも、問題点は多々あって、彼らでは掬いきれない若者の叫びが存在するのだ。

また、大阪芸大映像学科が約4年に1度製作する”産学協同映画”では演出部で参加。

この映画は、実際の商業映画の予行演習として学生と教授が一丸となって映画を作る企画で、別の学科と共同で企画を進めたり、OBを招聘したりと、いわば大学全体をあげて作られる映画だ。けれど、そんな企画でさえも、日本映画界の縮図とさえ言えるハラスメントに次ぐハラスメントが見られたので、後々この映画の話もキチンと書く。

 

このシリーズの目的について

以前、このシリーズを書き終えた後、多くのOBや現役学生から、似たような被害を報告され、自分たちのためにも戦って欲しいという声が届いたが、このシリーズの目的は告発ではない。このシリーズは、ほとんどが私の映画のスタッフだったJ太郎君が主役で進む。被害をダイレクトに受けていたのは彼であって、私はその彼を見て、書くことでしか反抗できなかったのだ。その彼が声をあげることを拒んでいるから、告発はしない。

けれど、これは『奴隷日記完全版』だ。私はもう大阪芸大生ではない。仮名こそ使えど、特定できる情報を出させてもらう。それは同大学の新入生からのメッセージが届いたことが原因だ。「あの奴隷日記の人は、いったい誰なのか。関わりを持つ前に距離を取りたい」ときた。

更に、OBからも「自分の時代から変わっていない」と何件もきた。このOBたちの発言は、彼が少なくとも10年弱もの間、常に同大学の学生に対して、暴力的行為を行なっている、何よりの証拠である。

そうとわかれば、配慮はしない。更なる被害を食い止めるためにも、この”特定できる情報を出す”という点は容認してもらいたい。

登場人物の大まかな紹介


J太郎:大阪芸術大学映像学科の同級生。3年次に『濡れたカナリヤたち』4年次に『海底悲歌』で美術部を務める。現在、某映像製作プロダクションにて、美術進行・制作進行をしている。


ツイマ:大阪芸術大学映像学科の同級生。3年次に『濡れたカナリヤたち』4年次に『海底悲歌』で照明部・特機部を務める。日曜大工経験が豊富で、美術部ではないものの、アキさんとは親交が深かった。現在、某会社にて特機部として活躍。


スナフキン:大阪芸術大学映像学科の一つ上の先輩。産学協同映画『虹の彼方のラプソディ』で美術助手を担当。そこでJ太郎や私と親交を深め、ハラスメントの内情を知る。


アキさん:今回書くハラスメント行為の殆どを担当。映像学科OBで卒業以降、これまで約10年弱ほど技術指導員として学生に教鞭をとる。一時期、東映の撮影所でも活動。美術部として、多くの商業作品に参加。最近では、『37セカンズ』で美術を担当。

※アキさんは教授という立場ではないが、学生の立場からすると大差はない。基本的には、学内に常設の撮影スタジオでの授業で教鞭を取り、学生がスタジオを撮影で使用する際は、彼の許可がなければいけない、いわばスタジオの門番的存在


その他、私の後輩や、全く大学とは無関係の登場人物も出てくるが、その方々はその度に説明する。改めて思うが、J太郎の紹介で「死亡」だとか、「現在は映画には関わっていない」みたいなことを書かずに済んだのが、救いだ。


シリーズの流れ

大学3年次の『制作2』という授業での課題映画として制作される『濡れたカナリヤたち』という作品から、話は始まる。時期としては、2019年の春から夏にかけてのことだ。この映画で出てくるラブホテルのシーンを、セットとして作りたいとなってから、アキさんと我々の親交が始まる。師弟関係といえば許されるのか、というハラスメントが始まり、J太郎は正常な判断ができなくなっていく。

ソレから、2019年の秋から冬、そして2020年春、産学協同映画『虹の彼方のラプソディ』の準備と撮影が行われる。ここでは、アキさんのハラスメントはもちろん、大学全体としての問題が見え隠れし、よりJ太郎は絶望へと追い込まれる。

続けて、2020年の春に関わったアキさんが美術を担当する商業映画の話。こちらは、私の情報で色々と物議を醸してもややこしいので、名前は出さないが、とにかくJ太郎はここで美術として初めて商業作品に関わる。無賃金労働、長時間の拘束、アザが出るほどの暴力と家族や恋人を否定する暴言。徹底的に人格を否定され、ここで決定的にJ太郎が壊される。

その現場を辞めさせ、いわばバックれさせてからのお話(2020年夏クランクインの『海底悲歌』お話)と、そこからの卒業までのお話を書き、そして、今現在(2021年)のJ太郎の姿とアキさんの姿を描いて終了となる。

『濡れたカナリヤたち』『虹の彼方のラプソディ』、そして初めての商業作品、『海底悲歌』と大まかには、この四つの映画を軸に話が進む。下に情報を載せておくので、ぜひみてほしい。


ソレでは、次回以降、本編に入っていきます。



ちなみに、このHPでのインタビューは、私は拒否している。その理由は、このシリーズを読めばわかるだろうが、まともに答えるJ太郎や私の後輩が、とても大人に見える。

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