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伊勢田 亮
2019年10月16日 12:14
彼女には花がよく似合うと思っていたのはきっと、僕だけではないだろう。美しい人だった。金木犀の香りがして、奥底へとしまい込んだ記憶が僕を呼んでいる。あの日の彼女がどんなかおをしていたかすら、ぼんやりと霞んでいるのに。なにかに急かされるように夢中で駆け出して、頬にあたる風が冷たく嗤う。野良猫がにゃあと鳴く、ここにはひとり血のような赫、目を塞ぎたくなるほどの夕焼け全部振りほどくみたいに走っ