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伊勢田 亮
2020年2月21日 21:17
振り返ることはできなかったけれど、近付いてくるその足音が誰のものかなんてわかりきっていた。夕陽が射し込む部屋の中、僕は本を読んでいる。近付いてきた足音は僕の背後で何も言わないから、僕も振り返らずに文字を追う。静寂とアールグレイの香りに包まれた中でどれだけの時間が過ぎただろう。文字はただ滑るばかりで一向に意味を成さない。諦めて本を閉じようとすると、背後の気配が動いてひやりとした手が僕の目
2020年2月12日 14:30
あなたはいつも笑うから、私は何も言えなくなる 夜を映した濃藍の淵に佇んで白い息を吐く晴れていれば澄んで輝いているはずの水面も、時折白銅色にぼんやりと揺らぐばかりだ いっそ沈んで溶けて、消えてしまえたらあなたと分かり合えるだろうか 湖を綺麗だなんてどれだけ澄んで見えたとしても、掻き回せば途端に濁った水で溢れかえるのに そう言ってわらったあなたの顔が焼き付いてじくじくと疼