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きみにつくる物語

絵本作家になることが夢だった。イソップ物語のような、少し教訓を含んだ内容で、生きていくために必要な心が育つ、そんな絵本を書きたかった。でも、私は絵を描くことがとても苦手だ。いまどき、文字だけの物語を採用するような募集は少ない。

そんな私を絵本作家にしてくれたのは、我が子だ。5歳になる上の子はとてもやんちゃ。たくさんのことを学んでいる最中だ。悪いことをしたときに、頭ごなしに叱っても、怒られた、という思い出しか残らない。
何がどう悪かったのか、どうすべきだったのか、自分で考えてほしい。相手の気持ちになれる方法はないか。そう考えたとき、上の子の知育のために絵本を書いた。棒人間がでてくる、とても下手な私の絵本を、子どもは気に入ってくれている。

例えば、うちのやんちゃっ子は、幾度となく保育園から急に飛び出し、横断歩道をひとりで渡り、お友だちを追いかけてしまっていた。危ないし、見失って、見つけたときに安堵の涙を流して抱きしめたこともある。当の本人は、ケロっとしていて、泣く私の代わりに叱ってくれた園長先生の顔面を靴で蹴るという、さらに怒られる内容を追加することもあった。
どんな危険があるか、今まで怖い目にあってこなかったのはなぜか、やんちゃっ子を探すあいだ下の子はどうなっているか。自分で理解できるように、やんちゃな主人公による冒険の物語をつくった。
すると自然に、誘拐や事故の危険があること、大人が守ってくれているから安心して遊べていること、下の子にも迷惑がかかることを理解し、「ママにどこに行くか、伝えてから行けばいいんだね」と納得してくれてるようになった。

スーパーの買い物カートで激走して人にぶつかる、お友だちのおままごとの邪魔をしてケンカになる、など、やりそうなことをやる上の子。そろそろ、親が謝っておわり、の年齢ではなくなっていく。自分で相手の気持ちになって反省できるように。子どもが問題を起こすたびに、私の棒人間作品は増えていく。

絵の力、文字の力、言葉の力が、いつかきみの力になる。
世の中に認められるような絵本作家にはなれずとも、私の絵本には濃厚な読者がいる。きっと、これからも子どもたちが壁にぶつかるたびに、その年齢に合わせた、たくさんの物語を生み出していくだろう。

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