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伝える、ではなく、伝わる

3歳児神話を信じていた私は、子どもがうまれたら、小さいうちはずっと子どものそばにいて愛情を伝えるべきだと思っていました。
3歳児神話とは、"3歳までに母親の愛情にたくさん触れなければ、その後の成長に悪影響を及ぼす"という考えです。かつては女性の就労を否定する理由にされてしまうことがありました。
でも、子どもが生まれて、気がついたのです。母親からの愛情に限る必要はないということ。そして、育児は3歳まで頑張ればいい、わけではないということに。

1日の大半を泣いて過ごす赤ちゃん。産後は、慢性的な睡眠不足と、ホルモンバランスの乱れ、自分のことがなにもできないもどかしさ、社会との関わりがない環境に、気がおかしくなりやすいです。
「泣いてくれて、教えてくれて、ありがとう」
そんな気持ちを忘れてしまったのはいつからだったでしょう。泣くことでしか感情を表現できない赤ちゃんにとって、これほどに大切な表現はないのに、泣き声にイライラしてしまうようになりました。そのときに、私は自分のなかの3歳児神話を崩しました。いま子どもに伝わっていることは、私が伝えたいことなのか。
イライラしているママと24時間そばにいることと、一緒に過ごす時間は減っても機嫌のよいママと過ごせる時間が増えることと、どちらが子どもに「自分は愛されているんだ」と感じてもらえるのか。
悩んだ末に、復職の道を選びました。社会との関わりや、やりたいことに触れ、気持ちを落ち着けてから向き合うことも、子どもへの愛情だと思ったからです。

園からは子育てのアドバイスをもらえるため、ひとりで悩まなくてもいいことが増えました。ママに会えない時間は、先生からの愛情を受けているという安心感もあります。同年代のお友だちと遊べることは、子どもにとっても、刺激になっているようです。叱ることも多いけれど、毎日たくさんハグをして、生まれてきてくれてありがとうと話す余裕ができました。
きっと成長や進学のたびに、働き方について悩むでしょう。いつまでも働いてはいられないかもしれないし、いつまでも働かなくてはいけないかもしれません。その時々の、自分のやりたいことと、子どもを守る方法を天秤にかけながら生きていくのだと思います。

人の脳には、3歳以前の記憶は残らないと言われています。残っている人は、後からだれかに話を聞いて、自分のなかで記憶として残した状態だそうです。
3歳児神話のとおり"3歳までに愛情にたくさん触れるべき"だとしても、大人になって残るのは、それ以降の記憶。3歳を過ぎたら愛情がいらなくなる、というわけではないでしょう。

いい意味にも、悪い意味にも、相手が自分にしてくれたことの積み重ねが、信頼を育むと思います。
親子でも、恋愛でも、友人関係でも、仕事でも、最初はきちんの伝えていた大切なことを、いつの間にか伝えているつもりになって、これで分かるだろうと、安心しているうちに、少しずつ擦れ違ってしまい、ダメになることがあります。
「伝えるだけじゃなく、伝わること」が必要なのに。
同じ言葉でも、感じかたは人それぞれ。状況や年齢によって受け取りかたも変わっていきます。何年経っても向き合って、向き合える方法で、確認をしながら、その時々で大事にできる方法を探っていくのです。

子育ては一生もの。どうすれば「自分は愛されているんだ」と感じてもらえるのか。信頼を得られるのか。
年齢にとらわれず、私なりに向き合い続けていきたいと思います。

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