見出し画像

韓国LGBT映画「ハーフ」

主演:アン・ヨンジュン、チョン・ユソク
2014年 96分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=GagaOOLalaより)

サブスクしている台湾のLGBTQコンテンツ専門動画サービスのGagaOOLalaに追加されてから、ずっと観たかった本作。LGBTのT、トランスジェンダーが主人公である。
ここのところずっと中国語オンリーだったので、小休止に韓国語。韓国のLGBT系映画に明るい内容のがないのはわかってはいたが、これもまたずっしりきた。。。

実話に基づくトランスジェンダーの物語

「シークレットバー」というトランスジェンダーのバーで働くイ・ミナは、MTF (Male to Female)のトランスジェンダー(アン・ヨンジュン演)。しかし、まだ性別適合手術を受けていないため、男性器は持っている。

ある日、同僚ユリが男性客に襲われ、ミナは助けようとしてこの男を殺してしまう。殺人罪で起訴されてしまうが、彼女についた国選弁護人はやる気のないキム・ギジュ弁護士(チョン・ユソク演)。

検察側は彼女の性的アイデンティティを利用して、殺人が嫉妬の結果であるかのように事件を仕立てようとするが、キム弁護士は「トランスジェンダーを弁護」するという行為で注目を浴びられると計算し、メディアに露出したりする。
しかし、ミナが刑務所で置かれている境遇には誰も注意を払っていなかった。。。

ミナは戸籍上はまだ男性であるため、男性房に入れられるが、他の囚人たちに犯されてしまう。なので、女性房に移されるが、そこでも散々な仕打ちを受ける。

ミナの壮絶な体験を通して、キム弁護士、そしてミナ自身の心境の変化を描くとともに、トランスジェンダーの人権問題に焦点を当てた法廷ドラマとなっている。

生きづらいなんてレベルじゃない

「ハーフ」というと、国籍あるいは人種の違う両親から生まれた子供のことを指すが(最近はこれも別の言葉に置き換えられるが)、本作の主人公ミナは「ジェンダーのハーフ」である。

ちょっと韓国の事情がわからないのでなんとも言えないが、性別適合手術にはどうも成人でも親の同意書が必要らしい。主人公のミナは兵役を完了させているし、刑務所も少年院とかではないため、成人のはずである。

しかし、ミナの唯一の肉親である母親は息子の状態を受け入れられなくて、絶縁状態。なんとか母親は手術の同意書にはサインをしてくれるものの、ちょうど同意書を手に入れたところで、事件が起こってしまう。なので彼女はまだ体は男のままなのである。しかし、ホルモン剤は飲んでいるので、胸は膨らんでいる。

親との不和、居場所のなさ、いじめなどなど、ただでさえ性同一性障害に苦しんで生きづらいのに、入獄という経験はさらなる地獄になる。
裁判所や刑務所も、トランスジェンダーを扱うのは初めてであり、彼ら側の戸惑いも見える。

元々の殺人事件も、本来なら起こらなかったものかもしれないし、ミナの体験はそう誰でも彼でもするものでもないだろう。しかし、極限の状態を見せることによって、トランスジェンダーの抱えている生きづらさの問題、そして司法システムなどの問題を浮き彫りにすることに成功している。ずっしりと重い作品ではあるが、観て良かった。

こちらはFTMであるがトランスジェンダーの鈴木優希さんの記事。
ミナの身近にも、こんなエールを送ってくれる人がいたら、全ては変わっていたかもしれない。
彼のnoteではご自身の経験の他、トランスジェンダーへの様々なサポートも紹介されているので、ぜひご一読を!

本作は現時点ではサブスクが必要なGagaOOLalaでしか配信されていないようだが、日本語字幕もあるし、これはぜひとも多くの人にも観てほしい作品。こちらがトレイラー。



この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文