「陸王」単なる老舗企業復活物語ではない。

「陸王」の視聴率は20・5%と最終話を終えた。

「陸王」は単なる老舗企業復活物語ではない。バンカー物語だ。

原作者の池井戸潤さんは「陸王」そして前作の「やられたら倍返し!」の「半沢直樹」でも、「会社は何のためにあるのか」「会社は誰のものか?」と視聴者へ問いかけている。

「陸王」「半沢直樹」では「会社は何のためにあるのか」「会社は誰のものか?」を視聴者へ問いかける番組だった。日頃地上波を見ない私も「陸王」を毎回わくわくしてみた。

老舗足袋メーカーの「こはぜ屋」四代目社長・宮沢紘一は、足袋の売上低迷と資金繰りに困窮。融資担当坂本から新規事業を提案される。

融資担当坂本からの提案がドラマが動き出す。

宮沢社長は足袋製造技術を活かせるランニングシューズに着手。先代もランニングシューズを開発していたが失敗し大きな損出をだした。

会社は株主のもの、「企業は利益を追求するもの」であれば、株主の融資する側のメインバンクも金利を稼げればいいわけで、投資して稼げなければ貸し出した資金を引き揚げればいい。売上低迷と資金繰りに困窮する「こはぜ屋」の新規事業へ融資するなど論外だ。

数字が優先され、社歴、会社が立地する地域、そこで働く従業員は関係ない。

「会社は何のためにあるのか」「会社は誰のものか?」を考えれば見方が一変する。地域社会の一つである会社が何代も存続してきた意味が出てくる。そこで働く従業員も誇りや思いがある。その会社は何のために存続してきたのか?会社そのものの意義が出てくる。

「会社は何のためにあるのか」「会社は誰のものか?」

原作者の池井戸潤さんは「陸王」「半沢直樹」でも視聴者へ一貫して問いかけたいたのは「バンカーとな何か」であり、社会に対する銀行の役割だ。

融資担当坂本は、上司に融資を迫り結果左遷させられる。

本来「バンカー」は、投資、経営コンサルティングなどのスキルがあり、企業、経営者に寄添い伴走する銀行家である。

企業は何かをするにしても資金が必要。資金を融資するのが銀行であるが、リスクを取らない保身だらけの銀行員が増え、メインバンクが何をすべきなのかを見失っている。

十数年前に金融シンポジウム(東京都信用金庫協会、東京中小企業家同友会共催)に参加した。そのシンポジウムで米国の金融業界に詳しい由里宗之氏は、中小の地域金融は相互扶助組織であると指摘した。

由里宗之氏は、ドナルド・メンゲドス米国銀行協会会長の「(開拓時代からネットバンキングの今日まで)コミュニティ銀行業は実は少しも変わっていない。それはいつも、人々が人々を助ける(people helping people)営みなのだ」とい素晴らしいコメントを紹介した。

米国は企業利益の為ならリストラ、企業売却もいとわないドライなビジネス環境だろうと思っていたが、企業、経営者に寄添う地域金融機関と中小企業の相互扶助の関係が構築されていることに驚いた。

地域金融機関と中小企業の相互扶助的な実態に即した金融環境づくりに協力することが必要であり、地域金融機関が中小企業との信頼関係を再度構築し支えることが中小企業の成長につながり、地域経済を活発にし、しいては日本経済再生につながる。

中小企業の経営者と寄り添い、陰に日向に支えて、事業を軌道に乗せていくのが、バンカーの仕事だ。バンカーは中小企業が健全に運営されることで、そこで働く従業員やその家族も幸せに暮らすことができる。

バンカーは、経営者だけなく、従業員やその家族まで思いを馳せる。

「陸王」は単なる老舗企業復活物語ではない。バンカー物語だ。

バンカーがいなくなり、保身の銀行員だらけの金融業界へのアンチテーゼが「陸王」「半沢直樹」が視聴者から支持されたのだろう。

単なる老舗企業復活物語だけでは視聴率は高くならなかったはずだ。

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201712250000162.html

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