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ライブハウスへの招待

 俺がガキの頃とは変わって、今は音楽もスマホひとつあれば聴ける時代になってきている。しかしネットで配信されているものだけが音楽じゃない。ホームページが無かったり、TwitterやFacebookページが無くても、世界で認められている素晴らしいバンドはたくさんいる。そういうバンド達は、レコードやCDのリリースと「ライブハウス」での活動が中心で、海外ツアーや国内ツアーも数多く行っている場合が多い。

そして、そういったバンドは「ハードコアパンク」と言われている音楽活動をしているバンドに多く見られる。

 俺が10代〜20代の頃に通っていたハードコアパンクのライブハウスは、渋谷センター街にあった「屋根裏」。新宿小滝橋通りにあった「LOFT」。目黒に現在でもある「鹿鳴館」。この3つを主流として様々なハードコアパンクのライブが行われていた。ライブと言ってはいるが、当時からそういったライブハウスでやるハードコアパンクのライブは「GIG(ギグ)」と呼ばれていた。

 日本のハードコアパンク創世記のライブハウスはとんでもなく危険で、GIGがあれば、ほぼ必ずと言って良いほど誰かが血祭りにあげられていた。暴力沙汰は日常茶飯事で、それでもライブハウスで行われるGIGは、学校や社会に馴染めない人間達の唯一のオアシスだった。

なぜそんな危ない場所に金を払って観に行くのか?そう思う人は多いだろう。しかし「若さ」というものの衝動は、何か理由があって起きるものではないと思うのだが、それは間違っているかな?

 そういったスキャンダラスで危険な面だけがクローズアップされがちだが、実際にライブハウスに勇気を振り絞って出かけてみると、驚く程フレンドリーで、本当に価値観を共有出来る「仲間」に出会うことができる。簡単に言うと「人生が変わる」ってことだ。

 ハードコアパンクのライブに興味はあるが、行かない人間が言う一番多いセリフは「怖いから」。モヒカンや刺青、髪を染めてこれでもかと立てていたり、革ジャンに鋲を打ちまくり、ボロボロのカッコで飲んだくれていたりするから怖いのかな?

 価値観と言うのは不思議なもので、何を怖いと思うかは人それぞれだ。

個人的に思うのは、ライブハウスで暴力沙汰に巻き込まれることより、交通事故や放射能のほうが危険だと思うし、怖い。

刺青を入れた人間を入場禁止にする温泉・プールや、それに同調する価値観を当たり前だと思っている偏見や差別の方がよっぽど怖い。

人種によって差別することや、人間の命を何とも思わないことを「当たり前」と思っている人間の心の方がよっぽど恐ろしいと思うのだが、それは俺がモヒカンで刺青だからなのか?

 俺はガキの頃から交通事故に遭うかもしれないからと言って、外に出かけないなんてことはしなかった。中学生や高校生のときに、まわりのクラスメイトや先輩たちと合わなかった自分の価値観が「正しい」と思わせてくれたのがライブハウスであり、そこで出会った仲間達だった。そして、その仲間達とは今現在でも心を開き合える関係が続いていて、困ったときなどには一番の助けになってくれる。

 学校やバイト先、仕事先にも、もしかしたらそういう人はいるかもしれないが、自分の興味のある音楽や感激した歌詞の歌が目の前で演奏されているライブハウスは、ひとりで抱え込んでしまっているものを、きっと吹き飛ばしてくれる。「なんかツマンネーな」と思っている日常を吹き飛ばしてくれる。それには「激しければ激しい程良い」ってもんだと俺は思うけどな。

 交通事故に遭うことを恐れて外に出ないなら来なくても構わないが、もし興味があるなら「ライブハウス」に勇気を出して行ってみてくれ。心がいったい何を叫んでいるのかをちゃんと聞き取ってやってくれ。自分のためにもな。

Photo by FUYUKI KATAOKA @Kyoto SOCRATES



30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!