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WAKIMIZU

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2017年4月の記事一覧

往路

高速道路を走るトラックの屋根と屋根を心が飛び移って行くのを他人事みたいに見ていると薄墨で描かれた山が日に映えて緑を光らせ始めて眩しいから私はカーテンを閉めてそれでも遮れない光の欠片だけを口許で受け止めて精一杯になっていたら急にマリリンモンローが耳元で歌い始めたから

醒めたフリをしてみても
それは言わないで
昔知らない間に同じように聴いていた歌を
それは聴かないで
馬鹿みたいに陽気なジャズ
涙を流

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藤の泡

うたをうたった

藤が垂れている側に我が魂は

あなたはいつかの

忘れてください

そしてそれも忘れた頃に

思い出したらいい

そんな声を出さないで

だって私は

もう今を受け取ることで精一杯なのだから

明日になったら何もなかったことになって

この記憶も私だけのものになる

ブクブク音を立てて

沈んでゆく

いけ



そこはとてもクライ

雨に打たれた

好きも嫌いも、精一杯の謝罪も

全部

暴力だったのです

君もそうなら私もそう

記憶よ消えろ記憶よ消えろ

雨に降られた日はとても清々しいので、なんでもどうでもよくなりました