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[#55] すすがないイギリス式の食器洗い

私がイギリスに語学留学した時に、カルチャーショックを覚えたことの一つが「イギリス人は食器洗剤をすすがない」ということでした。
有名な話なのでご存知の方も多いかもしれませんが、ご存知でない方のためにどういうことかと説明すると、

イギリス人は食器洗剤をすすぎません。

はい?となるかもしれませんが、読んで字の如くです。
大事なことなので3回言いますが、イギリス人は食器洗剤をすすぎません。

イギリス式食器洗いを工程順に文字で表現してみます。

1.食事後のお皿、コップ、カトラリー、調理道具(オーブン用耐熱皿)などを全てシンクの中にぶち込みます。
2.シンクの栓に蓋をし、ぬるま湯を溜めます。
3.洗剤を流し入れて泡泡にします。
4.ゴム手袋とブラシを装備して、片っ端から泡泡のシンクの中でゴシゴシ洗います。
5.きれいになったと思ったら泡泡のまま水切りカゴにあげます。
6.全て洗い終わったら、洗ったお皿たちをティータオルで乾拭きします。
7.食器棚に戻します。

イギリス式の皿洗い

あなたはお気づきになったでしょうか…。
上記7ステップの中から、洗剤の泡をすすぐ工程が抜け落ちていることを。

最初見た時、うちのホストマザー(以下おばあ)が編み出した、独自の節水ライフスタイルかとも思いましたが、どうやらそうではなくて、他国から見たイギリスの変な習慣あるあるの1つみたいです。
ちなみに歴史的にイギリス文化の影響が強いオーストラリアとニュージランドでも同様な食器の洗い方をするとのこと。

イギリス人の中でも「この習慣変じゃない?」と思っている人もいて、ガーディアンという新聞のWEBサイトで、
”汚れた泡と水がついたお皿をすすがないなんで信じられない!”
というスレッドが立ったりしているので、全員が全員そういう習慣というわけではないみたい。

しかし、そのスレッド内のすすがない派の擁護回答には、なんだかなあ…というのが散見され、

例えば…

・コツは洗う前に食器をよくすすいで、溜め水を汚さないことです!流水で流しちゃったら水も洗剤も無駄が多いでしょ。(どういうこと?最初にすすいでるじゃん)

・最近の家には食洗機があるでしょ。(全く答えになっていない)

・すすいでないお皿で具合悪くなった人いる?いないよね。だからいいじゃん。(帰納法で導かれる暴論)

guardian.co.ukより意訳。( )は筆者の心の声

という具合。

逆に、すすぐよ!派も半分くらいいて、みんな口を揃えてばっちいし身体に悪そう、だからすすぐよ、とのことです。よければ原サイトをどうぞ。


すすがなくなった理由を考察している人もいて、その昔、まだイギリス国内に食器用洗剤が広まっていないころの1950年代のTV CM内で、泡を洗い流さずに水切りカゴに入れているのを見た人たちが、洗剤ってそういうもんなんだとマネをした、という説もあるみたいです。

それが本当なら諸悪の根源となったブランドがこちら。
見るからにめちゃくちゃ洗剤です。


郷に入っては郷に従え、と言われるものの、留学中この習慣だけはどうしても慣れなくて、おばあがいない時に水ですすぎなおしたり、さっとナプキンで拭いたりしていましたが、最終的には「気にしないようにする」ことで乗り切りました。

だって、泡をすすいでないお皿で毎晩ディナーを食べたって具合悪くならなかったからね。いいでしょ。

最後に、ニュージランド在住の方が、このイギリス式食器洗いを動画にしてくれていました。コメント欄がOFFになっているところに、過去何かあったのでは、という邪推を禁じ得ません。

ではまた。

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