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【投資】資産運用立国って、何を目指すのか???

政府は資産運用立国に向けた「資産運用特区」の候補として札幌や東京などを軸に検討。英語で行政手続きが完結できるようにし、海外の運用会社の進出を促すとか。

政府のこの資産運用立国に向けての施策、いろいろとモヤモヤな感じがしている。目的と手段、これが合ってないのでは?なんて思ってます。


そもそも資産運用立国として何を達成したいのか?

これらの施策で何を実現したいのか、そこがイマイチ曖昧な気がしてます。1)日本国民に貯蓄から投資を促し、2,000兆円とも言われる家計の金融資産を投資に向かわせたいのか、2)外国人投資家に日本株を買わせたいのか、3)あるいは外国人投資家に日本に来てもらいたいのか?

1)から3)それぞれ別の目的だと思うんですが、それがごちゃ混ぜになって議論されている気がしてます。

以下、いくつかモヤモヤ点を挙げますと:

  • 家計の金融資産2,000兆円ですが、その年齢別の分布というデータはないものの、個人的な感覚として割と年齢層が高いところに偏在しているのではと推測されます。人生残り少なく、「長期投資」なんてどうでもいい世代です。そういう世代には、むしろこれまで批判の多かった元本取り崩しも含めた毎月分配型(タコ配)の投資信託のほうがスタイルがマッチしてたりもします。高い分配金を維持するために、元本取り崩しもありますよとちゃんと理解された上で投資をされるのであれば、残りの人生における資産運用とキャッシュニーズに合わせた商品としては意味があろうかと。まあ、自分がそれに投資をすることはありませんが。

  • 日本株を投資対象とする外国人投資家ってだいたい"グローバル株式運用"の運用者。彼らのグローバル株運用の投資対象の1部として日本株が入っているケースがメインなのかなって思います。外国人運用者で、日本株だけを投資対象に運用している人、いなくはないですがごく僅か。そういう運用者に「日本に来てくれ」っていうのはピンとこないですね。また、ほとんど大手の外資系運用会社、すでに日本に拠点がありますよね。わざわざ特区を作らなくても。。。

  • 外国人に日本株を買わせたいなら、投資対象である日本企業の魅力をもっとアピールしないといけません。最近の東証改革で、企業経営者も株価、ROEやPBRに対する感度が上がってきたかと思います。言語の壁という点でいえば、資産運用会社を日本に設立するための行政手続きを英語でできますっていうよりは(それは日本の弁護士、行政書士に任せればいいだけで)、日本企業の投資対象としての魅力を英語でちゃんと発信できる、コミュニケートできる経営者が増えないといけないのかなって感じます。

そもそもの議論が、「日本の資産運用会社は大手金融グループの傘下にあり、経営的に独立していないのでダメ」っていう問題意識があるようなのですが、個人的には、「個人の資産運用については2024年から開始される新NISAの枠組みのもと、非課税で米国株か日本株のインデックスファンドに投資」をしておけば、多くの人たちは割とOKなんじゃないかと思ってます。そのためにはもちろん日本株全体の魅力をあげる(日本企業の価値向上)ことは重要で、昨今の東証改革などはその路線で首尾一貫していると思います。特に海外の資産運用会社に日本に来てもらう必要はないと思うんですよね(もう来てるし)。

資産運用業って魅力的な業界なのか?

それに加えて、そもそも資産運用業界って魅力的、儲かる業界なのでしょうか?ここ数年、外資系運用会社はこれまでの伝統的な資産クラス(株式や債券)だけではフィーも安くなってきたので、こぞってプライベートもの(不動産やスタートアップ投資、またプライベートなデッドなど)へ投資対象、商品を広げていってます。プライベートものでも、その大手のプレイヤーであるブラックストーンなどは、機関投資家のみならず個人の富裕層をターゲットに商品をおろし始めています(要は機関投資家相手だけでは儲からなくなってきたので、個人を相手に儲けたいと)。なかなかしんどい商売だと思うんですよね。なんか政府も"高度な資産運用"に夢見すぎ?って感じがしてます。

そうはいっても…

そんな微妙な資産運用立国議論ですが、さはさりながら、政府が日本国民に投資を促し、新NISAのような環境を整備、そして日本企業にはROEの向上、低PBRの改善を促すことは、個人投資にとってはプラスです。個々の施策の是非が微妙であっても、こうした政府からの後押しには乗っかっていかないといけないな、と前向きに捉えるようにはしています(笑)

#日経COMEMO #NIKKEI

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