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国際制度・国際法は無意味か?

これは筆者が実際にレポートとして提出したものです。
記述内容が間違っているかもしれませんがご了承ください。

はじめに

 国際政治の基本的特徴は「無政府状態(アナーキー)における権力闘争」である。これは、各国家が主権を有しており、それらの上位に立つ「世界政府」が現在の国際社会に存在していないことから言われている。国際制度や国際法においては、違反したとしても強制力を持って罰する世界政府は存在しない。このような履行強制力を持たない国際制度と国際法は破られ、無意味ではないのかと問われる。しかし、筆者は以下の理由から国際制度及び国際法は有効、意味があるものであると考える。

正当性の証明

 国際法は、その形成方法から国際社会における共通認識を含んでおり、広く普及していると考えられる。これは、国際慣習法は一般慣行と法的確信の双方が必要でありすでに広く認知されているということから形成されているからである。
 国家はこの広く認知されている国際法を利用し、国際政治において自国が働いた行動の正当性の証明を国民に実施することができる。つまり、A国に対しB国が制裁を行なった場合、B国民に対し政府は「A国が国際法である〇〇法に違反したため、B国は制裁を実施した」と説明し正当性を証明することが可能である。正当性を証明することにより、政権への支持向上にも繋がる可能性もある。また、他国もその行動に賛同し制裁を行うとするなら正当性はさらに強まると考えられる。
 もし、国際法が存在しないなら国家の行動に対して正当性を持たせるものはなくなり各国家は各々が正しい(国益がある)と考える行動を行うため孤立する。そうなるとするなら戦争リスクが高まり、結果としてマイナスの効果が得られるため、国際法は必要であると考えられる。
 正当性を持たせることができるということは、国家間協力を促進されることにも繋がる。これは、違反した国家を共通の敵として非難する際に協力されることから言える。国連加盟国によって行われる経済制裁も国際法を基に違反した国に対し加盟国同士で共通の敵とし協力が行われている。

国家間関係における意味

 国際制度・国際法が有意味であると考える理由は、「国家の選択は制限され他国はその選択を予測しやすくなり協力を促進させる効果を持つ」と考えられるからである。制度によって協力が促進され達成されれば、互いに利益を得ることができる。つまりは、制度が有益であるということである。
 制度や国際法を遵守しなかった場合に行われる制裁がその国家に対して有効であるとき、国家における選択は制限されると考えられる。制裁は小国、国内資源が少ない国に対して有効である。小国は国内資源が少ないため、不足部分を他の国家との貿易などで補っている。制裁が実行され貿易が停止されればその国家は自足不可能なため打撃をうけることとなる。したがって、制裁が行われるような行為と選択は避けられると考えられる。このことから、制度は国家が行う選択を制限する効果、実質的な強制力をもつと考えられる。
 しかし、大国に対しての経済制裁はあまり有効ではないため上記のような状況は起こり得ないと考えられる。中国や米国は国内資源を多く保有しており、制裁が行われても自国内資源である程度は存続可能である。また、大国の国内資源に頼っている国は「仕返し」による関税引き上げや国交停止を恐れるため制裁は実行されにくいと考えられる。このように大国に対し国際制度と国際法は実質的な強制力を持っていないと考えられる。だが、大国は国際制度をや国際法を遵守する。それは、国際制度は、特定の国家の利益を優先させる性質を持っているからである。つまり、大国は国際制度から利益を見出せるため参加し遵守しているのである。
 上記のように、制度は大国・小国に対しても選択を制限させ選択を予想しやすくすることが可能であり、協力を促進させると言える。であるから、国際制度及び、国際法は有意味であると考える。

まとめ

 以上の理由から筆者は、国際制度と国際法は有意味であり、国際政治にとって必要な規範であると考える。これらが存在することによって国家間関係や協力が築かれ、現在のグローバル社会が実現しているのである。しかし、国際制度及び、国際法は不偏不党ではなく、パワーバランスや特定の国家の利益が反映されているという問題点も存在する。だた、大国の制度遵守を促している要因となっているため問題解決は難しいだろう。今回筆者は有意味であると結論づけたが、これら問題点もあるため今後も継続して分析していきたい。

参考文献

加藤信行『ビジュアルテキスト国際法』(有斐閣,2017年)
大沼保昭『国際法』(ちくま新書,2018年)
中谷和弘『国際法〈第3版〉』(有斐閣,2016年)

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