見出し画像

コーヒーについての私的考察 7.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

ん?あれっ・・・薄い?良さがさっぱりわからない

これが、ぼくの率直な感想だった。
豆は国際的な品評会で金賞や銀賞を取ったほどの非の打ち所がないものだし、またそれを焙煎し淹れてくださっているのは、その業界では名の知れたスペシャリスト内田さんである。この完全無欠とも思える状況の中、欠陥があるとすればそれはもうぼくの味覚としか思えなかった。

どうやら世間で良いとされているコーヒーであればあるほど、ぼくには理解ができないらしい。さすが違いのわからない男。

そんな自嘲的なぼくに、内田さんから思いも寄らなかった言葉をかけられる。

「わかります?これは、○○のような香りがすると思います」

「こっちは△△のような香りで、そっちは□□のような香りがすると思うんですが・・・」

○○や△△、□□の箇所には、フルーツや花などの名前が入る。
なんだかまるでソムリエさんの話を聞いているような気分になってくるけれど、ぼくは風邪もひいていないのに今度は嗅覚までおかしくなったのではと思えてくる。
そもそもぼくはコーヒーにフルーツや花の香りといったものを求めたこともないし、今後求めることも恐らくない。
そんなことを考えていると、ぼくが薄いと感じたことにも合点がいった。

コーヒーをブラックで飲まないぼくが求めるのは、クリームやミルクを入れることを前提とし、そこでバランスの取れるものということになるからコーヒー自体も必然的に深煎りのものを好むことになる。
一方、今のサードウェーブと呼ばれるコーヒーは、品質の良い豆本来の味や香りを活かそうといった考えなので、当然浅煎りになる。
そういえば日比谷でお世話になっているUnirの山本さんと同様の話になった際、「深煎りというのは、どんどん炭化へ向かっているということなので、豆本来の味は消えていくことになります」と話されていたのも頷ける。

昔から喫茶店にあるブラックのコーヒーやサードウェーブがぼくの中で引っかからなかったのに、エスプレッソやカフェ・オ・レ、カプチーノには引っかかったのも腑に落ちた(エスプレッソにミルクは入れないけれど必ず砂糖は入れる)。
いま思えば内田さんがぼくらに試飲させてくださったものこそ、サードウェーブの象徴の一つであり時代の先端を行くものだったとわかるけれど、残念だったのは、ぼくのコーヒーに対する概念や、何よりも好みがセカンドウェーブで止まったままだったということなのだと思う。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?