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なぜか夏の思い出


ピアノレッスン


土曜日の午後、いつものように小学生の私はバス停を降りて、小さな坂を下りほそい道を歩いて、ピアノの先生の家に向かっていました。その時後ろからリズムに乗ってタッタッタっと足音が近づき、あっという間に私を追い越していきました。

それは青いジャージ姿の大学生くらいの男の人です。
「あっ落ちた!」後ろポケットから何かが落ちて、走り寄って拾い上げると、それは4つに畳んだお札の束でした。

「あのー、落ちました。」声は届きません。重いピアノの教本を片手に下げて思うようには走れず、それでもなんとかかんとか走りましたが、中々追い付かず「これ、落ちました!」そう大きな声で叫ぶと、やっとその人は振り返りました。

「これ、落としました。はぁ、はぁ」「あ、ありがとう。これ」そう言ってそのお兄さんは、その札束の中から1枚を私に差し出しました。
「いえ、いりません。」「でも、さぁこれ。」「いえ、あの、いいんです。」
(知らない人からお金をもらってはいけないから)
お兄さんは笑っていました。
私が頑ななのがおかしかったようでした。「じゃあ。」また走っていきました。

帰宅後、母に話したら、母は笑って「そんな時はもらっても良いのよ。」
(そうだったのか。貰えば良かった)
真夏の出来事でした。

自転車なのに...

高3の朝、自転車通学をしていた私は、その日は珍しく1人でした。通学路には歩道はなく、車道の隅を走ります。
夏は風を切って走るので、自転車通学はとっても気持ち良くて、爽やか朝でした。
「あっお金!」走っている途中なのに、なぜか自転車のペダルの下あたりにあるお札に気が付きました。拾い上げると、1万円札!「こんなところに珍しいなぁ」

帰宅後、母に言うと近くの交番に届けるよう言われて、半年後ご褒美になりました。
真夏の出来事が、冬にお小遣いになりました。

一歩ちがえば...

電器店からの帰路、バス停に向かって歩いていた時のことです。
チャリンチャリンチャリンと音がして、「あれ?ここから?」
すぐ横には自動販売機がありました。
チャリンチャリン!まだ聞こえます。お釣りの返却口に指を入れたら、硬貨が複数落ちてきました。
(こんな偶然があるなんて。これは天から降ってきたんだから、もらってもいいよねーニンマリ)正当化する私。
天からなんて、大げさな。今はそう思います。でも降ってきたことに違いないのですから。
今ではもう時効の10年以上も前の夏の終わりのちょっとした思い出。

なぜかお金にまつわる出来事は夏ばかり。暑さで人の気持ちが緩んでるからでしょうか?
紫陽花の見頃ももうそろそろ終わりです。私も暑さでお金からはぐれないように用心しなければ。





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