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小説/【V*erno】黄昏時の金平糖。

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Ves*lisというアカペラのグルーヴ所属の、宵宮氷、黄昏わらべ、師走わさび、黎明わた、暁愛華葉、木暮葉凰。少年少女らがグルーヴを立ち上げたあの年の物語。
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記事一覧

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#1 宵宮氷の6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#1 宵宮氷の6月1日

あらすじ
氷、わた、わらべ、わさびの幼馴染み4人は
氷の急な引っ越しにより、距離をとるようになってしまった。
とある梅雨時、わらべの母のスマホに氷が夏休みに帰ってくるとの連絡が来た。
しかし、3人は昔とは違い、一言も交わさない存在に。
相棒の悲しむ姿は見たくないと思ったわらべは、
わさび、さだめに声を掛けることにした。

─今、あっちはどうなっているんだろう。
ずっと気になっていた。
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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

黄昏わらべ 6月1日 水曜日 午前8時15分
          愛知県 夏露中学校 1年4組

「─ということで今日は校外学習のくじを引きます」
 周りが少しだけざわつく。みんな、楽しそうにしている。
 どうやらもうすぐ、歴史を学べるテーマパークに行くらしい。その時の行動班は、全10クラスから1人ずつ集め、合計10人が1班になる。何班になるかはくじで決まるため、今から担任がシャッフルしたくじを引

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#3 暁愛華葉、木暮葉凰の6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#3 暁愛華葉、木暮葉凰の6月1日

木暮葉凰 6月1日 水曜日 午後3時35分
          愛知県 夏露中学校 会議室

「こんにちはー」
「はーい、木暮葉凰(こぐれ はおう)さんね、ここの席に座ってー」
「了解です」
 ため息を付きたくなるのを堪えてパイプ椅子に座った。
 なんで俺が校外学習の実行委員やんなきゃいけないんだよ。
 クラスの中でじゃんけんに負けたやつがやるという運試しな企画をやり、楽勝じゃんとか言いながら挑ん

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis 】#4 考える少年

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis 】#4 考える少年

宵宮氷 6月1日 水曜日 午後6時30分
            静岡県 じいちゃんの家

「ねぇ、じいちゃん」
「ん、なんだ?」
 俺は夕飯にじいちゃんが作ったカレーを食べていた手を止めた。
 わざわざ手を膝の上に置く。緊張しながら息を吸って、思いきって声を出した。
「愛知県に、行きたいんだけど」
「ほぉ?なぜ急に?」
 去年はずっと静岡県から出なかった。愛知に行きたいとも一言も言わなかった。し

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #5 出会い頭

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #5 出会い頭

師走わさび 6月2日 木曜日 午前5時45分
      愛知県 児童養護施設からふるとまと

「─んーと、ここの問題は、、、」
 チクタク、と時計の針の音だけか部屋に鳴り響く。
 私はデスクライトだけを点けて、勉強していた。近くまで迫ってきた期末テストに向けてだ。
 オレンジの優しい光に包まれて、気を抜くと寝てしまいそうだ。
 時計を見ると、5時45分を指していた。
 ─あと、15分。
 6時に

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#6 ヒーロー

黄昏わらべ 6月2日 木曜日 午前7時10分
           愛知県 夏露中学校登校道

「─」
 呆然と立ち尽くしていた。
 取り敢えずノリで話しかければなんとかなるって思ってた。でも、違った。
 そうだ。俺たちはもう幼くない。ノリだけじゃ仲は修復されない。もうすぐ大人なんだ。このまま居れるわけでもない。
 歩き続けなければならない。なんとか方法を探しだして、話し合わないと。
 さっき腕を

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#7 君にだけ正直に

黄昏わらべ 6月2日 木曜日 午後13時30分
          愛知県 夏露中学校 美術室

 葉凰が、こんなに大胆なことをするなんて思ってもいなかった。
 というか俺、そんなにいつも通りじゃなかったか?
 なんて言っても実は人の話を聞いていなかった。先生の話ですら聞いてない。朝、わさびにあんな突き放され方したら、どうしても頭で考えてしまう。
 そんなに嫌いだったのか?やっぱりあの時みたいには

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#8 アイデア

木暮葉凰 6月2日 木曜日 午後13時40分
          愛知県 夏露中学校 美術室

 話を聞く限り、幼馴染みとのトラブル、のようなものなのかもしれない。
 時間が空き、成長し、相手のことはこの数年間一切分からない。好きだったのか、嫌いだったのか、ましては覚えていないのか。
 どちらにせよ、お互い気になっていることはなんとなく分かる。
 そんなに大切な幼馴染みを簡単に忘れられるわけがない

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#9 揺らめく火

黎明わた 6月2日 木曜日 午後2時
          愛知県 夏露中学校 理科室

 物質の性質を調べる方法、か。
 こういうの将来に使うのかな、なんて思って苦笑した。
「わたー。ガスバーナーとマッチと燃えかすいれ持ってきて!」
「ん、了解!」
 隣の席の男子、来井芽草流(くるい めぐる)に言われて、自分は席を立った。
 普通は四人グループなのだが、今日は前の席の女子二人が休みなのだ。だから、

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#10 君のために

黄昏わらべ 6月2日 木曜日 午後2時05分 
          愛知県 夏露中学校 美術室

「─よし!」
 やっと書き切った。
 改めて見直す。
 わさびに仲直りのために届ける。曲名は「天体観測」。アカペラで歌う。
「あぁ、いい感じ」
「あとは練習だなぁ、、、」
「練習なら任せろって」
 音楽の授業内での練習は、あと2回。その中と、あとは家や休み時間に練習しないといけない。
 というか、葉凰

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#11 もう一人

暁愛華葉 6月3日 金曜日 午前6時

「─みんなー、おはよー」
「、、、ん?朝、、、?」
 アラームを止めて、弟妹たちを起こした。そしたら、魁斗が起きてくれた。
「朝。他はやっぱ起きないね」
「な。でもぐっすり寝てるのは良いことだよ」
 そう言って、弟妹を起こす。
 魁斗は起きるのが早いが、他の妹弟は遅い。
「おーい、若葉ー、翔瑠ー」
「鞠音も。遅刻するぞー」
「んん、、、?うるさいよ、魁斗、、

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#12 作戦失敗と製作開始

黎明わた 6月3日 金曜日 午前7時13分
          愛知県 夏露中学校の登校道

 よくないよくない。
 なんで隣町から中学校に通わなきゃいけないの?
 絶賛、走って通わされている。
 自分が通う夏露中学校は、「夏露」ってついてるくせに、実際には八季市(はつき)の冬雫町(とうだ)にあるのだ。
 って言っても、学校楽しいけど。
 ここら辺から夏露中に行く人は、ざっと10人くらい。他はみん

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno 】#13 憶忘逃避

黎明わた 6月3日 金曜日 午前7時20分
              夏露中学校 体育館

「げ、劇はプリンセスシリーズが良いんじゃない?」
「シンデレラとか白雪姫?」
「そうっ!」
「ありかもねぇ」
 そんなことより、さっきのことを思い返していた。
 気まずくて思わず逃げてきたけど、なんか話したかったのかな。
 って思うとなかなか集中できない。
 ─自分が思いきって逃げてきたんだ。自分を困らせ

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#14 一歩後ろに

師走わさび 6月3日 金曜日 午前8時15分
          愛知県 夏露中学校 1年10組

「ありがとうございました!」
 日直の号令を聞きながら、私は頭を下げた。みんながありがとうございました、と言う中で一人口をつぐんで。

 最近身体が重くなってきた。なんとなく。
 わらべと話してから、結構気が沈んでいる。でも、明日から休み。2日休める。2日もあればきっと気力も回復する、はず。

 ─

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