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一刻を争う子どもの「症状」の話 Vol.1

こんにちは。
岩間こどもクリニック 院長の岩間義彦です。

今回は【一刻を争う子どもの症状】にフォーカスします。
患者さんからよく質問される内容をもとに、一刻を争う症状とその対処法について書きたいと思います。

1つの記事でまとめるには文字数が膨大になるため、2回に分けた記事にしたいと思います。


<体調不良で気を付けるべき「5つのキーワード」>

お子さんが急に体調不良(発熱・嘔吐・下痢等……)になると、ママ・パパは心配になります。それが医療機関(病院・クリニック)の診療時間外だとさらに不安になりますよね。

診療時間外の選択肢として「救急車を呼ぶ」「救急外来に連れていく」「様子を見る」等が思い浮かぶと思いますが、『どれを選択したら良いのか分からない』という方が多いのではないでしょうか。

お子さんの体調不良には、注意すべき「5つのキーワード(症状)」があります。

1.頻繁に嘔吐する
2.呼吸がおかしい
3.激しい腹痛
4.明らかに顔色が悪い
5.身体がぐったりしている

このうち、1つ以上当てはまったら「救急外来に連れていく」「救急車を呼ぶ」という判断をしてください。

5つの症状は、緊急性の高い病気が潜んでいる可能性があります。一刻も早く小児科医による診断を受けてください。

本記事では、緊急性の高い5つのキーワードに関する質問に答えていきたいと思います。

<質問①:赤ちゃんが初めて発熱をして心配です。>

初めての発熱は心配になりますよね。赤ちゃんが発熱した場合「月齢」が大きなポイントになります。

当クリニックでは、1カ月健診、3ヶ月健診を受けた赤ちゃんのパパやママに、必ずお伝えしていることがあります。

『生後3カ月までの赤ちゃんが「38度以上の発熱」を出したら、すぐに小児科を受診してください。』
『夜中や休日(診療時間外)であっても救急外来に行きましょう。』
『あまりにもぐったりしている場合は、救急車を呼びましょう』

赤ちゃん(乳幼児)はママからもらった免疫があるので、生後3カ月までは熱を出すことはほとんどありません。ところが稀に、生後3カ月に満たない赤ちゃんが38度を超える熱を出すことがあります。

こんなとき、小児科医はまず髄膜炎、尿路感染症、敗血症など重い感染症を疑います。
特に髄膜炎は、風邪の原因となるウイルスや細菌が血液を通って、脳を包んでいる骨髄に入ることで起こります。
手遅れになると、脳性麻痺など重度後遺症や死亡することもある怖い病気です。

すぐに大きな病院で、検査をしなければなりません。
診断・治療は一刻を争うのです

メディアやYouTubeにあふれている情報をみると「熱があっても赤ちゃんの機嫌が良ければ様子をみてください」と記載されていることが多いですが、生後3ヵ月までの赤ちゃんは注意が必要です。

<質問②:子どもが嘔吐して心配です>

嘔吐にも様々なパターンがあります。一度だけ吐いて、そのあと機嫌よく食事もとれるのであれば、様子を見て問題ありません。

心配なのは5つのキーワードにある【1.頻繁に嘔吐する】ときです。
何度も繰り返し嘔吐するのは、髄膜炎や腸重積など、一刻を争う怖い病気が潜んでいる可能性があります。昼間であればすぐに小児科を受診しましょう。夜間・休日の場合は、救急外来へ行きましょう。

急性胃腸炎の場合の嘔吐や下痢は、体の中の細菌やウイルスを体外に出そうとするための症状です。症状があっても、元気で食事をいつも通りに食べられているなら、あまり心配ありません。

しかし嘔吐が長く続くようでしたら、小児科を受診してください。

先日7歳のお子さんが、1日に何度も嘔吐をしてぐったりしているということで、当クリニックを受診されました。3時間ほど点滴をして様子をみると、みるみる回復してニコニコしながら私に手を振ってくれました。
子どもは体調が悪くなるのも早いですが、適正な治療によってどんどん良くなります。子どもの回復力にはいつも驚かされます。

<質問③:子どもが普段とは明らかに違う咳をして不安です>

呼吸器の病気でクループや咽頭蓋炎(いんとうがいえん)には、オットセイや犬の鳴き声に似た「咳」をする症状があります。「ケンケン」と聞こえる高い音の空咳が特徴です。

子どもから発するこの咳に驚き、当クリニックに来られるママ・パパは「今までに聞いたことのないような咳だった」とおっしゃいます。
当クリニックにはその「空咳の音」をサンプリングしたものがあるので、それをパソコンからお聞かせすると「あ、この音です」とうなずかれます。

クループは、咽頭部(声を出す部位周辺)が腫れる病気です。
この部分は空気の通り道になっているので、腫れると呼吸しにくくなります。

のどの腫れが強くなると、息を吸う時にヒューヒューと音がすることがあります。この症状が出たら呼吸困難になる可能性があります。必ず救急外来を受診しましょう。

クループが急速に進行すると急性喉頭蓋炎という、のどの奥にある喉頭蓋という部分全体が腫れて呼吸困難を起こします。これは滅多に起こる病気ではないですが、死亡率の高い病気です。

この病気はのどの痛みが強すぎて、よだれを垂れ流す症状や口を開いてあごを前に突き出す独特の姿勢をとることが特徴です。すぐに救急車を呼びましょう。

救急車で搬送する際は、刺激を与えないように細心の注意を払う必要があり、当院からの搬送時は、医師が同行するようにしています。
少しの刺激によって呼吸困難になる危険性があることから、緊急で気管切開が必要な場合もあります。

喉頭蓋炎は子どもが急死する原因の一つですので、ぜひ覚えていただきたいと思います。

<質問④:喘息持ちの子どもが苦しくて眠れないようです。どうすればいいでしょうか?>

お子さんに「ゼイゼイ」、「ヒューヒュー」とする症状が見られたら喘息発作の可能性があります。
症状がひどくて夜眠れない場合や、寝ても苦しくてすぐに起きてしまうような場合は、救急外来を受診しましょう。

多少呼吸が乱れていても、お子さんが眠っていられるのであれば、次の日まで様子を見ても大丈夫です。

<質問⑤:子どもが「お腹がすごく痛い」といいます。どう対処すればいいですか>

まず、子どもが極度にお腹の痛みを訴えたら、先に書いた5つのキーワードのうち「3.激しい腹痛」に当てはまりますから、すぐに小児科を受診してください。診療時間外の場合は、救急外来を受診してください。

これに「1.頻繁に嘔吐する」「5.ぐったりしている」というキーワードが当てはまる場合は、特に要注意です。腸重積という怖い病気が疑われます。救急車を呼びましょう。

腸重積という病気は、腸が腸にはまり込むことで発症します。
はまり込んだ部分に血液がいかなくなり、壊死してしまう可能性もあります。
診断・治療に一刻を争う怖い病気なので、通院を先延ばしにしないようにしてください。

腸重積の腹痛には特徴があり、締め付けられるようなお腹の痛みが、強くなったり弱くなったりを繰り返します。

赤ちゃんが、今まで聞いたことのない様な泣き声をあげたりやんだりを繰り返す場合は、腸重積の可能性があるので早めに小児科を受診してください。

<質問⑥:赤ちゃんの便通が数日ありません。どうすれば良いでしょうか>

赤ちゃんの便通が一時的に止まるのはよくあることです。
そんなときは「浣腸」をして様子をみることをアドバイスしています。

薬局やドラッグストアで売っている「イチジク浣腸」がおすすめです。
お子さんの月齢や体重を伝えると、薬剤師が最適なサイズを教えてくれます。

浣腸は安全性が高く、クセになるものではありません。お子さんの便秘や軽度の腹痛が気になるときは、ぜひ試してみてください。浣腸をして便が出れば回復することが多いです。

なお、赤ちゃんの便秘については「3日以上ためない」ことを意識してください。便が出なくなって3日目には、イチヂク浣腸をして排泄してあげるようにしましょう。

お腹がはって不機嫌だったり、踏ん張っても便が出ない時などイチジク浣腸がおすすめです。

<質問⑦:子どもの便に赤いものが混じっていましたが血便でしょうか?>

便に血液がまじると赤くなり、それを血便といいます。
腹痛を訴えているお子さん(赤ちゃん)に血便が出たら、小児科医は先に触れた「腸重積」の可能性を疑います。

血便にも程度がありますが、腸重積の場合は「イチゴジャムのような血が混じる」と表現されます。ただし腸重積の血便は個人差があるので、血便が出たら要注意です。

ご不安な場合は早めに小児科医に相談をしていただき、夜間・休日など診療時間外の場合は救急外来や救急車を呼ぶことを検討してください。

便から確認できる血液の量が少ない(または色や形状が血液に見えない)場合、血便かどうか判断が付かないこともあると思います。
便に赤っぽいものやオレンジ色っぽいものが混じっている場合は、血便を疑ってください。。

稀にトマト等「赤色の食材」を食べたときに便が赤くなることがあります。
便に赤いものが混じっていても、腹痛などの明らかな症状がなく、子ども(赤ちゃん)の機嫌が良ければ診療時間内に小児科を受診してください。

今回の記事は以上です。
次回は「4.明らかに顔色が悪い」「5.身体がぐったりしている」症状と対処法について、記事を掲載したいと思います。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます。
育児と向き合うママ・パパの参考になりましたら幸いです。

岩間こどもクリニック
院長 岩間 義彦

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※note内では個別のご相談・ご質問に対応することが出来かねます。何卒ご了承ください


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