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じゃんけんのインタラクションデザインと「スマート意思決定」研究

こんにちは、インタラクションデザインの渡邊研究室の代表の渡邊恵太です。
3月8日(金)、9日(土)の渡邊研プロトタイプ展2019 に向けて連載企画をはじめます。展示で展示する作品や、考え方について紹介していきたいと思います。

第1回目は「スマート意思決定」という研究について紹介したいと思います。
今回は、修士1年生の金子翔麻くんに「じゃんけん」のインタラクションデザインについてと自身の研究について紹介してもらいたいと思います。

 じゃんけんのインタラクションデザインと「スマート意思決定」

こんにちは、渡邊研究室 修士1年の金子翔麻です。

みなさん、たまにじゃんけんすることがありますよね。
「カラオケ誰から歌う?」「グループ課題で誰がリーダになる?」といったことがすんなり決まらないと、じゃんけんで決めることが経験的に多いです。

じゃんけんは元々は子どもの遊びですが、今や生活の中に入り込んでいます。考えてみるとじゃんけんのインタラクションデザインって実はすごいのです。

実はすごい「じゃんけん」のインタラクションの特徴

・ 道具が不要
・ 誰が勝者なのかが一目瞭然
・ 瞬時に出し手の形状を変えられる
・ だし手の視認性の高さ
・ 3すくみによる出し手の平等性
・ イテレーションの早さ
・ レフリー(第三者)がいらない
・ 「じゃんけん、 "ぽん"」で決まる同時性・リアルタイム性
・ 石、ハサミ、紙というメタファのわかりやすさ

ざっと挙げてみました。特に最初の3つは自身の身体を使うということがポイントだと思います。道具が不要であるのはもちろん、勝った人が誰なのかすぐわかります。手は自分の意思と直結してますので、出し手を変えるコストはほぼゼロだと考えていいでしょう。

でも、じゃんけんにも問題があります

じゃんけんは大人数だとなかなか決まりません。10人もいれば、ほとんどがアイコになってしまいます。

また、じゃんけんで決まるのは「勝ち負け」であることも問題だと考えます。たとえば順番を直接決めることはできません。勝った人が先なのか、負けた人が先なのかといったルールを決める必要があります。さらにいえば、先になる=勝ちとは限りません。状況次第では人によって、どの順番になりたいか違ってきます。ここに齟齬が生じます。かといって、勝った人から指定するルールにすると、勝った人が番号を指定するまで決められませんので時間がかかります。(何番にするのか決めること自体、僕は億劫に思います。)

スマート意思決定

そこで我々が提案するのが「スマート意思決定」という新しい概念です。簡単にいうとコンピュータの力をうまく利用することによって、よりスマートに意思決定しよう!ということです。ここで大事なのが、コンピュータによってすべて自動で決めてしまうという発想ではなくて、「じゃんけん」といった既存のインタラクションを分析し、その優れている要素を取り入れることです。

手の代わりに「顔」を使う

僕は「Facelot: 顔検出と顔属性をエントリーとしたアドホックな抽選システム」を研究しています。(フェイスロットと読みます。)

簡単にいうと「顔じゃんけん」です。お題(例:笑顔なほど当選確率がアップ)が示す表情をしているほど選ばれやすくなります。表情は、笑顔・真顔・驚き・悲しみなどがあります。

Facelotは顔をズームアップすることで当選者を示します。

じゃんけんと同じように自身の身体を使うというのがポイントです。自身の身体だけでき、抽選に参加する人は道具が不要です。またズームアップされた顔を見れば誰が選ばれたのか一目瞭然です。

Facelotでは表情を作ること、じゃんけんでの出し手にあたります。お題の表情をするだけというシンプルさがありつつ、じゃんけんより多様な"出し手"(出し顔?)があります。周りに負けないように表情を作れば作るほど、当選でのズームアップされた顔が面白くなって盛り上がります。

順番決めやグループ決めといった場面でも使えます。

じゃんけんにはない要素として、大人数でも使えること(最大50人ほど)、場全体の雰囲気を盛り上げる演出工夫があります。本当に盛り上がるのか?ぜひ展示会で体験して確かめてみてください。

顔以外のスマートな意思決定インタラクションは?

展示会では、後輩の國松祥一くん(学部4年)と眞野隼輔くん(学部3年)も同様にスマート意思決定をテーマに研究を進めており、そちらも体験できます。

展示会ではスマート意思決定ブースを設け、その中で3つの研究を展示します。

 「Facelot: 顔検出と顔属性をエントリーとしたアドホックな抽選システム」(金子)
「Fingerlot: ディスプレイに指を置くだけでエントリーできるアドホックな抽選システム」(國松
 「Voicelot: 音声入力をエントリーとしたアドホックな抽選システム」(眞野

単純に入力が「顔」「指」「声」と変わるだけではありません。それぞれ特性を活かしたインタラクションデザインになっており、その特徴や利用シチュエーションが異なります。全部を一度に体験できる機会はそうそうありません。違いをぜひ体験してみてください。そして議論できたらと思います。

展示会でお待ちしております。

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