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【インタビュー】マラソンは”過程を楽しむもの”ニューノーマルな楽しみ方を発信する酷道ランナーにとっての「走る」とは

“最後尾の景色”、“サブゴール”、“メスティン補給食”など、数々のパワーワードを生み出し、独自のスタイルでフルマラソン・ウルトラマラソンの楽しみ方を発信し、市民ランナー界に新たな旋風を巻き起こしている二人がいる、酷道ランナーだ。

オリジナルTシャツである“酷道T”は「3日で約400枚」の注文が殺到し、彼らが参加するマラソン大会の沿道には、“酷道”と書かれたうちわを片手に応援するファンも見受けられるほど、その人気ぶりは市民ランナー界を賑わせている。

彼らのSNS(主にYouTubeやInstagram)では、基本的に“走ることのないような道”を走った様子や、参加したマラソン大会を“最後尾からスタート”し“制限時間ギリギリでゴール”する様子などが発信されており、彼らの一風変わったスタイルに惹きつけられる視聴者やファンも多い。

そんな彼らにとって「走る」とは何か、フルマラソンやウルトラマラソンの魅力、ランニングを通して伝えたいことなどについて話を聞いてみた。

【酷道ランナー】左:ウエノアキラ 右:サトータツヤ 市民ランナー兼YouTuber。年間約12本のフルマラソン・ウルトラマラソンに参加し、これまでに約50以上の大会に出場。難関だとされる『村岡ダブルフルウルトラマラソン100km』も完走するなど、確かな完走実績も誇る。自身のSNS(YouTube・Instagram)ではマラソン大会だけでなく“酷道ラン”などニッチなランニング活動も発信している。

初マラソンがウルトラマラソン!無知で挑むも無事完走

−−マラソンシーズンは毎週のように大会に出場され、多忙を極めるお二人ですが、走り始めたきっかけは何だったのでしょうか。

サトータツヤ(以下、サトー):私は、大学4年生の時に友人から「ウルトラマラソン(100km)出ない?」と誘われて、ノリで「OK〜」と返事したことが走り始めたきっかけですね。当時はランニングの辛さとか何も分からなかったですし、ジョギングさえしていなかったのですが、“フルマラソンよりも先にウルトラマラソン”に出ることになりました。

−−いきなりウルトラマラソン(100km)とは!すごいですね…!あきらさんはどうして走ろうと思ったのでしょうか。

ウエノアキラ(以下、あきら):私の場合は、8年ほど前にサトーに誘わたのが、ウルトラマラソンを走り始めたきっかけですね、それまでは、登山やトレイルランニングなどしていたので、体力には自信がありました。

アルバイトもトレーニングだった?学生時代に培った基礎体力

−−お二人とも初マラソンがウルトラマラソンなんて…!初(ウルトラ)マラソンで、サトーさんは100km、あきらさんは71kmをそれぞれ完走したとのことですが、やはり元々体力があるのですね!学生時代の運動経験は?

サトー:私は小中高ともに野球部で、高校時代は“脅威の代走”としてベンチを温めていましたね。短距離はマジで速いです!大学時代の運動は野球サークル程度でしたが、“めちゃくちゃ”アルバイトをしていたので、そこで体力がついたのかもしれません。

あきら:アルバイトってフィジカルが鍛えられるものだっけ?(笑)私は、中高ソフトテニス部で、21歳から15年以上、ずっとテニススクールに通っています。なので、習い事に結構なお金使ってます!(笑)

過程を楽しみたい×変な知識欲=“酷道”だった

−−学生時代の部活やアルバイト(笑)、趣味などの経験から、ウルトラマラソンも完走できる体力が培われていたのですね。マラソンの実績もすごいですが、“酷道ランナー”としての活動も印象的です。どうして“酷道”を走ろうと思ったのでしょうか。

あきら:なんか元々サトーは、ダムを走るとか”テーマラン“をやっていたよね?

サトー:そうそう、ランニングって「スタートして、ゴールしました」が切り取られるじゃないですか、でも、ランニングって“点じゃなくて線”なんですよ。

「走ってる」って流れというか経過だと思うんです、だからこう「流れてるこの時間を残したい、大事にしたい」と思ったときに、「行く道や走る道にこだわりたい」と思ったのがきっかけで、テーマランを始めました。例えば「ダムを目指そう」とか「大仏を目指そう」とか。

「ただ走るのではなく、そこまでの過程を楽しもう」というのが(酷道ランの)前身としてあって、例えば深夜の商店街を走って、その過程を映像化したら楽しいだろうな、みたいなのがなんとなくありました。“人と違うことがしたいな”と。

あきら:ある時私が知識を披露したくて「ここ地図繋がってないよ、すごくない?」って、サトーに話したんだよね。

サトー:そう!それだよね、それが(酷道の)始まりだったと思う。元々廃墟とか日本にある“不思議なもの”が好きだったので、その地図を見せられたとき「めっちゃ面白そうじゃん!走って行ってみようぜ!」ってなったのが始まりですかね。

−−ちょっと変わったところへ行ってみよう!が「酷道」だったのですね。

サトー:「過程を楽しみたい」と「変な知識欲」が掛け合わさった結果、誕生したのが「酷道」ですね。

あきら:酷道は「行ってみたいけど、車だと運転に自信がないと危険だし」とかもあったので、丁度ランニングするし「行けるじゃん」ってなりました。

サトー:酷道を走ってみたら楽しくて、活動記録をSNSで発信し続けているうちに、気づいたら「酷道ランナー」と名乗るようになっていましたね。

ウルトラマラソン完走の秘訣は“信じること”

−−今や“酷道ランナーファン”も多いお二人ですが、多くの人が「どうして“ほぼ練習なし”で完走できるんだろう」と疑問を抱いているかと思います。お二人流のフルマラソン・ウルトラマラソン完走の秘訣やコツなどはありますか。

あきら:私は、基本的にタイムを求めない「完走目標」っていうのもありますが、やっぱり普段の生活習慣ですね。“早く寝る、よく寝る”、あとは体に良いものを食べることですね、アボカドとかブロッコリーとかよく食べています。

サトー:ほんとかよそれ(笑)

あきら:あと、ストレッチもよくしているので、大きな故障(怪我)はしないですね。まぁ、なんだかんだたくさん大会出ているので、それが練習を兼ねているというか。あとは“ちゃんと休むだけ”です。

−−よく食べてよく寝て、たくさん大会に出て、しっかり休むと。サトーさんはどうですか。

サトー:フルマラソンに関しては、元々ウルトラマラソンを完走しているのでそこまでハードルが高くないっていうのはありますね。あと、スピード重視ではないということも。ウルトラマラソンに関しては、メンタル面に関わるかもしれませんが、脚が壊れることに対する恐怖がないというか、“壊れることがデフォルト”なんですよね。

−−脚が動かなくなっても当然っていう感覚なのですね。

サトー:全然当然、「あ、壊れたね」っていう感じ。でも不思議なもので脚が壊れても補給食を食べて歩いていると、脚治るんですよね。

−−もちろん個人差はあると思いますが(笑)、回復しちゃうのですね。

サトー:(もちろん個人差はあると思いますが)この脚が治るということを“信じられるか信じられないか”は大きいと思います。きっと多くの人が、一度脚が動かなくなったら「あぁ…」って落ち込んでしまうと思うんですけど、そこをいかに受け止められるかというメンタルですね。

走らないと見られない“非日常的な景色”がそこにある

−−個人差があるので無理してはいけませんが、“再び脚が動くと信じること”、メンタルコントロールがやはり大事なのですね。そんな数々のマラソン大会を完走されているお二人ですが、お二人にとってフルマラソン・ウルトラマラソンの魅力や醍醐味とは?

あきら:フルマラソン・ウルトラマラソンに出たことって、1年を振り返ったとき“1番大きなイベント”になりますね、ただそこへ行ったとかじゃない“良質な思い出”になることですかね。

サトー:マラソン大会は、いろんな土地へ行けて、且つ、体を動かすという良いことをしながら観光ができるというのが良いですよね。“普段観光では来ないようなところも走れる”という点も、面白いです。

あきら:マラソン大会がなかったら行かなかったような、身近な地元にも意外な発見があったりするよね。

サトー:その土地の魅力を走りながら時間をかけて見ることによって、再発見することは結構ある気がします。
特にウルトラマラソンに関していうと、ウルトラマラソンってほんとに田舎でやるんですよ。それで結構、場面ごとに忘れられない景色があって。
例えば、ものすごい坂道のところにある畑から、おばあさんが畑を耕しながら「がんばれー」って応援してくれるんですよ、なんかその光景とか「なんなんだろうな…」って思うんですよね。

−−ウルトラマラソンの道中からしか見られない光景ですね。

サトー:あとは、塩田が盛んな地域の大会で、海岸沿いの“さいはての地”のような所で、(またこれ)おばあさんが作業していたり。

あきら:あの景色はもう、“幻想的”レベル“だったよね。

サトー:そういう“非日常感”を味わえるのはひとつの魅力かもしれませんね。

あきら:都市型マラソンも、大都会の道の真ん中を走れるのはマラソン(ランナー)の特権だよね。

サトー:うん、都市型には都市型の魅力があるし、田舎で開催される大会には田舎の魅力があってそれぞれの“非日常感”があるよね。

とにかく過程を楽しむというコンセプトに多くの人が共感

−−普段走ることのない“非日常”的な光景はもちろん、慣れ親しんだ“日常”的な道でも、走りながらでないと気づけない発見などもありますよね。斬新な角度から、新たな視点を発信し続けるお二人ですが、酷道ランナーの活動を始めて変わったことや気づいたことはありますか。

あきら:私は最近、土日の予定が大会で埋まっているので、人付き合いが悪くなりましたね(笑)

サトー:(笑)でも知り合いは増えたでしょ?

あきら:めちゃくちゃ増えましたね。それもあるし、活動自体が楽しくて仕方ないですね。

サトー:私は、速さではなく“とにかく過程を楽しむ”というコンセプトが、こんなにも多くの人に共感してもらえたことに驚きました。

あきら:“ウケ狙い”で始めて、もっとアンチコメントとか来るのかなって構えていましたけど「すごく元気もらいました」とか、感謝されることが多くて、予想外の反響でしたね。

サトー:どちらかというと、タイムを求めない方からの共感が多いのかなって感じですが、意外とサブスリー(※フルマラソン3時間切りランナー)の方とか、速い人からも支持していただくこともあるので「なんでなのかな」とは思ってます。タイム的に通常“交わることのない”人々と交わっております、って感じです。

あきら:ただ「一緒に走りましょう」って言われても難しいよね(笑)

サトー:難しいね(笑)あと、よく「楽しみましょう!」っていうじゃないですか、でも「どう楽しむのか」っていう部分が大事なのであって、“最後尾を走って大会を味わいつくす”とか、もっと“具体的な楽しみ方”を提示していこうっていうのが我々の楽しみ方ですね。
「楽しもう!」ではなくて「結果楽しい、楽しかった」なんですよ、「結果楽しい」になるためにどうするか。

あきら:ただ「楽しみましょう!」というのはなんか違うよねというか。

サトー:「タイムの上がり方」「沿道とのコミュニケーション」「その土地の名物のエイド」とか、楽しみ方は人それぞれじゃないですか、「〇〇だったから、楽しかった」となるわけで。

あきら:最近はもう、どんな大会になるのか“予測できない”っていう感じだよね。何かしら起きる。

サトー:うん、起きる(笑)他の人たちがスルーしてしまいそうな事をピックアップして面白みに変えたり、無駄な知識を投下したりできることは、我々の強みかもしれませんね。

ギリギリ素人が行ける非日常的な世界で起こる奇跡

−−予想外の反響や交流が多い分、数々のエピソードがあると思いますが、これまでの活動の中で、特に印象に残っているエピソードはありますか。

あきら:マラソンに関して言えば、やっぱり“ゴールした瞬間”だよね、みんな一緒だと思うけど(笑)結局「完走したこと」が一番嬉しかったことだったりしますね。

サトー:この(酷道)スタイルで完走できたことはでかいよね。

あきら:元々、装備とか撮影とか何もしない状態でギリギリ完走できていたレベルだったので、撮影しながら完走できるようになったのは大きな成長ですね。まぁウルトラの場合完走率50%くらいだけど。

−−完走できなかった場合でも、面白いコンテンツに変えて、大会の魅力を伝えられるところが酷道ランナーさんですよね。

サトー:基本的にネガティブなことは発信したくないですし、完走できなくても「60,70km走った」だけでもすごいことじゃないですか。

−−たしかに。

サトー:あと、酷道ランの活動で印象に残っていることは、もちろん安全は考慮して行くんですけど、廃道とか「もうほんとに戻れなくなるんじゃないか」みたいな道を行くのは、やっぱり印象に残りやすいですね。険しい道を頑張って18kmとか進んだのに、その先が崖崩れで進めなくて、またその来た道を夜22時とか23時に引き返さないといけなくなった時は、一番やばいなと思いました。

あきら:あと「息子捜索事件」も大事件だったよね。あんなことはもう今後ないだろうな〜。

サトー:あれはやばかったね、そういう“ギリギリ素人が行ける非日常的な世界”で起こることが面白かったり、印象に残りやすかったりするかな。

あきら:全然知らない集落に辿り着くとかね、「酷道×人探し」だからできたドラマだよね。

サトー:あと酷道とかって、“情報がない”んですよ。地図に載ってなかったりブログの情報が古かったり。なので“自分の足で行かないと”分からないんです。

−−お二人の活動によって、情報がアップデートされていくのですね。

あきら:まぁ、酷道は安易に勧められるものではないですけどね。

サトー:言えない!危ないので。

−−そうですよね、危ない酷道に「行かなくても実態が知れる」というのが、お二人のコンテンツの魅力のひとつでもありますからね。

サトー:あとはマラソンに関して言えば、やっぱりウルトラマラソン完走、特に『村岡ダブルフルウルトラマラソン100km』ですかね。大会の面白みや過程も、撮影・ライブ配信しながらゴールできたことは、やり切ったって感じです。

あきら:やり切ったね!

ただ“期待を裏切りたい”という想いから溢れる独特の世界観

−−数あるウルトラマラソン大会の中でも、難関クラスであるともいわれる『村岡』を、「やり切った!」って言えるのは清々しくていいですね。
そのような活動の記録をYouTubeやInstagramで拝見すると、独特のセンスとクリエイティブ力の高さに敬服するばかりなのですが、お二人の“クリエイティブ力”はどこから生まれてくるのでしょうか。

サトー:私はまぁ、元々こんな感じですからね。高校時代、クラスの紹介ページを小説風に独特な文章で書いたら「このクラスヤバいぞ」ってザワついたこととかはありましたね。元々日記を書くことは好きだったり、大学時代はブログ書いていたり、昔から文章を書くことは得意でした。
あと、高校野球が好きで、チームの紹介文を読んだりするんですけど、すごく洗練された文章なんですよね。

−−そのような経験や知識が、現在のコンテンツ作りの文章力や構成力にいきていますね。あきらさんは、メスティンを持って走ったり、AI画像を作成したりしていますが。

あきら:メスティンを持ち始めたきっかけは、酷道ランで「カップラーメンとか食べたいよね」ってなって、元々登山とかもやっていたので、メスティンの方が“玄人感出るな”と思って取り入れました。で、メスティンを持って活動してみたら面白くて、そこまで定番化するつもりはなかったけど、何回かやっているうちに定番化していました。
それで、マラソン大会にも持っていってみよう!となって、沿道から「メスティン!!」って応援されることもあって(笑)その流れでもう持つしかなくなりましたね。

サトー:やっぱりそれぞれ“キャラ”が立った方が面白いじゃないですか。それで、メスティン(料理)とか「サブコンテンツがあった方が面白いんじゃないかなー」と思ったのがきっかけですね。

あきら:あと私自身が楽しんでいますね、事前にサトーにもメスティンで何を作るのか知らせていないんですけど、“どれだけ多くの人の予想を裏切れるか”楽しんでいます。

サトー:たまに捻りすぎてよく分からないときもある(笑)

あきら:元々料理が好きとかではなく、ただ“みなさまの期待を裏切りたい”というだけです。

−−いつも予想の斜め上をいっていますもんね(笑)。AI画像もかなり駆使していますよね。

あきら:AI画像は、元々“インターネットが好き”なので。AI画像を作ること自体はそんなに難しいことではないと思います。

−−一目で面白いと思える画像を作れるのは、やはりいろんな要素が必要であると思います。元々ものづくりがお好きなのでしょうか。

あきら:作り込んだりするのは苦手ですが、“かじるのは好き”ですね。元々「CGアニメーションを作ってみよう」とかはありました。なので、そういうことを活かして何かやってみたら「化学反応が起きるんじゃないかな」と思って。

サトー:基本的に「新しいもの好き」っていうのはあるかもしれません。元々友人の結婚式の映像を作りまくっていたりしたので、何か自分でできたらなと。

ヒエラルキーを崩し具体的な多様化のあり方を提示したい

−−趣味の範囲とは思えないほど、動画作成のスキルも高いですよね。コンテンツからもお二人が伝えたいメッセージは伝わってくるのですが、改めて「走る人や、これから走ろうと思っている人たちに伝えたいこと」はありますか。

サトー:んーそうですねー、ハードルを下げた方がいいっていうことかな。

−−ランニングに対するハードルが高いのではないかと。

サトー:もちろん発展していくことは良いことなんですけどね、SNSとかがどんどん普及していくことによって「走るということに対して敷居が高くなっている」んじゃないかなと。きっと「私なんかにはできないな」とか思ってしまう人もいると思うんですけど、“ただ走ってるだけ”ですからね。

あきら:関門に引っかかった(完走できなかった)としても、恥じることではないよね。

サトー:何も問題ない、ただ間に合わなかっただけの話。それでも30kmとかまで走っただけでもすごいことじゃないですか、普段30kmも走りますか?って話なんですよ。

あきら:だから私は関門に引っかかっても“堂々”と発信しますし、非常に意義のあることだと思っています。

−−そうですね、敷居を下げることで、マラソン初心者の方は特に「完走できなかったらどうしよう」というプレッシャーから解放されますし、「挑戦したこと」をマイナスに捉えないことが大事ですね。

あきら:走っただけですごいことですよ。タイム関係なく「完走した」だけでもすごいことですし。

サトー:最近は特に「多様化の時代」ってよく言いますけど、それをもっとこう、具体的に実現したいっていう感じですね。もちろん速い人は尊敬しています。でも「速さ」がトップになっているヒエラルキーを“崩しにいきたい”という感じですね。

あきら:速い人は好きだよね。ストイックな人は応援したいし。

サトー:うん、速い人は好き。

ゲーム実況から得た着想で世の中が変わる?

−−お二人のコンテンツは確かに「速くなくてもいいじゃん」「こういう楽しみ方があってもいいじゃん」というメッセージが伝わってきます。そんな“ニューノーマル”なマラソンの楽しみ方を発信し続けるお二人ですが、今後の目標・野望などはありますか。

あきら:野望でいうと、最近「ゲーム配信」見ていて思ったことがあって。あれって、自分がゲームとか全く知らなくても(ゲームしている人を)見たりするじゃないですか。そこから「(視聴者は)マラソンをやらないけど、マラソンの大会を見てもらえる」というコンテンツを作ったら面白そうだなと。

サトー:新しいねそれ。

あきら:マラソンに興味ない人も、マラソンに興味を持ってもらう。まぁそれなんの経済効果もないんだけど(笑)なんか、世界広がるかなと思って。

サトー:その発想はなかった(笑)

あきら:マラソン全然走らないよって人でも、我々のYouTube(マラソン大会)を見てもらえるようになったら、なんかちょっと新しい世界が見えるんじゃないかと思うんですよね。
今「ゲーム配信」ってメガコンテンツになってると思うんですけど、もしその主体がマラソンに置き換わったら“これ世の中変わる”んじゃないかと。

サトー:うわーーー(笑)無駄に説得力あるなそれ。

あきら:「まぁ別に走る予定ないな」って人になんとなく見てもらって、その人たちが“無駄に”マラソン詳しくなったら面白いですよね。

−−会話の引き出しも増えて、コミュニケーション能力の向上にも一役買いそうですね。

あきら:マラソンしない人たちに、マラソンについて興味持ってもらえたら、都市型の交通規制とか、きっと迷惑だと思う人も多いと思うんだけど、ちょっと理解してくれるようになるかも…とか。地域住民の方とかの意識が少しだけ変えられるかもしれない。

サトー:すげーなー。

あきら:まぁ、ただの妄想ですけどね。

もっとみんなにスポットライトが当たってほしい

−−走る人・走らない人、双方の意識は大切ですよね。サトーさんはどうですか。

サトー:私はなんかこう、(市民)マラソンが競技というところから脱して欲しいというのはありますね。かといってただただゆるすぎる大会にも振り切って欲しくはないんですけど。ワークアウトは良いことですし、もう少し「THE競技」というものではなくて、若者世代もフェス感覚で参加できる(フェス行ったことないけど)ものがあっても良いのではないかなって思います。

−−もっとポップなものがあってもいいのではないかと。

サトー:なんか“祭りみたいなもの”がいいかな。「ゴールしました、はい終了でーす」というよりかは「ゴールした後までデザインされた大会」とかがもう少し増えてきてもいいんじゃないかなとは思いますね。

−−確かに、前夜祭とかはあったりしますけど、あまり見かけないですね。

サトー:なんか通常の大会って、スッと終わっちゃって、尻すぼみ感がすごいじゃないですか。最後のランナーのゴールを迎える瞬間にみんなで「おめでとう!!」みたいな感じで終わる世界とかは、結構見てみたいですね。大会の定員割れの話とかも聞きますけど、やっぱり“ライト層の取り込み”が大事なんだと思います。そのような層を取り込みやすくするためにも、誉れのステージを用意することで、“忘れられない経験”になるような気がします。

あきら:そうだよね、「初めて完走しました」って人でももっと祝ってあげたいよね。

サトー:祝ってあげたい!

あきら:マラソン走ったことを、ほんとはもっとみんなに話したいのに、話す相手がいない人とかもいるよね。そういった声も拾いたい。

サトー:うん、ウルトラマラソン完走したことって自分の中ではもうニュース、すごいことなんですよ。でも次の日会社行くじゃないですか、何事もなかったかのように日常が始まる、このギャップが耐えられなくて。そういう背景もあって「自分で号外」とか作ってるんですよ。

−−もう自分で称えよう!と(笑)

サトー:いや、すごいことじゃないですか。参加したみんなひとりひとりにとってニュース、大事件なんですよ。それぞれが限界突破してるから。“市民レース”なんだし(速い人だけではなくて)もっと「みんなにスポットライトが当たればいいな」と。

あきら:なるほど。

サトー:めっちゃ真面目に話してしまった。

−−(笑)貴重な?真面目コメントありがとうございます。

サトー:あとは、もし今後(タイムが速いわけではない)我々をゲストランナーに呼ぶ大会があったら、その決断をした大会事務局は「すごいな」って思います。

あきら:すごいね(笑)

自分なりの楽しみ方をみつけられるきっかけになれれば

−−そのような日も遠くなさそうです。最後に、酷道ランナーファンのみなさまへ、メッセージをお願いします。

サトー:いやー、本当にいつもありがとうございます。

あきら:いつもありがとうございます。

サトー:有難いことに差し入れとかを頂くこともあるんですけど、決して「マストではない」ので、お気遣いなく。

あきら:はい、声かけていただけるだけで嬉しいので。あと、一緒に写真撮る時に「サングラスしなきゃ!」とか、サングラス無しでも全然大丈夫ですし。

サトー:(笑)我々はそんなにハードルが高い者ではないです。

あきら:あと写真を撮る時「真顔じゃないといけない」とかもないです。全然笑顔でいいですし、自分が一番良く写る表情でいいんですよ。

サトー:我々のマラソンの楽しみ方の何かが、みなさんの“自分なりのマラソンの楽しみ方”を見つけられるきっかけになれば幸いです。

−−貴重なお話ありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています!



【酷道ランナー】左:ウエノアキラ 右:サトータツヤ

【YouTube】


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