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私が本を読むということ【1冊目:自省録】

いったい全体君は物事を受身に経験するために生まれたのか、
それとも行動するために生まれたのか。
                    - 自省録


本を読む。
その時間が、今思えば私にとっては救いでもあり、祈りでもあり、パワーチャージでした。


本を読むきっかけになった事柄は覚えてはいません。
私は幼い頃から、一冊の本を暗記するほど読み込むタイプではなく、気になったものはとりあえず読んでみる、というタイプ。
すぐに興味が移ってしまうんですよね。
小学生の頃に図書室での貸し出し数で褒められ、子供ながらに誇らしく、とても嬉しかったことは今でも覚えている。
小学校の図書室にある、色とりどりの易しい本たち。
本の登場人物たちに、文字を通して思いを馳せる。
両手で抱えられる程の小さな本の中に、自分の知らない世界が無限に広がっている様が、とても面白かった。


けれど、その後、自分の意思を表明し行動する勇気のない、そもそもやりたいことも分からない自分から目を背けたいという理由で、本を読むようになった。
あらゆる悩みや恐れに対する答えを、人ではなく本に求めたのです。
人からのアドバイスが、自分の不出来を責められているようで怖かった。
ページをめくり、文字を追う。
私にとって本を読むという行為は、現実を一時的にでも考えなくてすむ、もっとも身軽な方法で、絶大な方法となりました。


働くようになってからは、仕事の忙しさを言い訳に、本を読むことが途絶えた時期もある。
けれど今は、幼い頃に覚えた「物語の楽しみ方」と、その後習得した「本から探す」という楽しみ方を駆使して、なんだかんだ活字を追う生活を送れている。


そして最近では、文中から「今の自分が気になる文を見つけ出す」という宝探しのような楽しみ方を覚えてしまった。
ただ本を読み進める最中に、気になった言葉に線を引く。
好きな言葉でもいい。
考えさせられる言葉でもいい。
「なにこれ?」と思う言葉でもいい。
もちろん、借りている本の場合は線を書けないので、メモとして別に残すけれど。
気になる文を見つける度に「私はここまで読んだ」「新しい言葉を知れた」という、ささやかな自己肯定感さえ生まれる気がする。
それがちょっとだけ、肩の力を抜くきっかけにもなるのです。


楽観的とは言い難い性格で、悩みに悩んで結局行動しなかったことも数多ある。
そういう時は本の一節に、そっと、時に力強く背中を押してもらう。
私にとって本を読むということは、一種の救いであり、今日明日という一日を無事に過ごすための祈りにもなり、栄養ドリンクにも勝るパワーチャージ方法なのです。


現在の時を自分への贈り物として与えるように心がけるが良い。
                         - 自省録


そうやって、少しずつでも笑顔でいられる時間が増えていけば、とても嬉しい。



[ 引用]
書名:マルクス・アウレーリウス 自省録
訳者:神谷美恵子
発行:株式会社 岩波書店 (岩波文庫)
ISBN: 978-4-00-336101-6
                    (敬称略)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
皆様が素敵な本や言葉に出会えますように。
どうか良い時間をお過ごしくださいませ。

Izumi

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