狂気のような熱情によって自己世界に陥る者を最早止める術はない。彼の意識、彼の理想、彼の罪、彼の有終の姿態は、彼の中で既に完成しており、それは他者の如何なる干渉も受け付けず、運命的に決定されている。殺人或いは自殺でさえ、その影響も評価も、それが相対的である限り、彼には何の意味も無い。結末を決定してしまった人間は、生に迷い悩む者には到底発揮出来ない、恐ろしい程のエネルギーによって猛然と世界を切り開き、自己の求める形へと世界を変化させていく。但しそれは戻ることの許されない一方的転落的エネルギーである。他者から見た彼の結末は一つ、粉々に砕け散るのみである。
せめて宙を舞う彼の欠片に、陽光でも星光でも煌めいてくれ。彼の命に反射した光はきっと、いつか誰かに届くから。