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トレーニングをどのように選ぶのかの考え方

アスリートが身体を鍛える際の手段として、筋トレはもちろん重要な役割を担う。
このブログを読んでくださっている選手たちも、筋トレをしたことがない人はほぼいないだろう。(筋トレはウエイトも自重も全て含む)
ではそういったトレーニングの際のターゲットはどのように決めているだろうか。
そしてそのターゲットを鍛える方法はどうやって決めているだろうか。

この部分、『トレーニングの選択』というフェーズに該当するが、一般的に考えられている以上に、非常に重要だ。
そしてもちろんのこと、難解であるし面倒なフェーズだ。
しかしこのフェーズでしっかり突き詰められていないと、トレーニングという『努力』パフォーマンスという『成果』につながりにくい状況を生んでしまう可能性が高まる。(詳細はフィジカルブラックボックス参照
何が何でも努力の量で全てが超越できると信じる人はこの先を読み進める必要はないと思う。
選手の努力と成果のギャップを最小限にしたい、無くしたいという私の考えに少しでも共感する人にはぜひ読み進めていただきたい。

トレーニングは、パフォーマンス低下や怪我にだって繋がってしまう。
トレーニングによって身体や動きは必ず”ポジティブな方向”に変わるとは誰も保証していない。




クリアすべき2つの問い

「〇〇筋が大事。その筋肉はこのように鍛えられます。」という話をSNSなど何らかの機会に目にしたことがあるかもしれない(場合によっては”採用”しているかも)
このとても”分かりやすい”構図には注意が必要である。
努力と成果の観点から、最も重要なフェーズが欠落しているからである。
この場合、少なくとも以下の2つの問いをクリアする必要がある。


問①なぜ〇〇筋なのか

あなたのやっている競技において、なぜその筋肉が大事なのか。
筋肉をターゲットにする場合、最も重要な問いである。
例えばハムストリングス(モモ裏の筋肉)を鍛えようと考える場合。
ハムストを鍛えることでパフォーマンスが向上すると言える論理的な根拠はどの程度あるだろうか。
この部分はいわゆる論文的なエビデンスがなくとも、重心の位置や動作により生じる力のベクトルなどで説明しても成立すると私は考える。
(全てを定量的・論理的に説明することは不可能だ)


いずれにせよ、”鍛えた結果パフォーマンス上がりませんでした”という結果だけは回避しなければならない。
だから筋肉が強くなった結果、その競技動作にどのような影響があるのかという関係性は常に選択理由の中心にならなければならない。
ということは、パフォーマンスアップ目的のトレーニングは、そもそも筋肉からスタートするのではなく『競技動作』から視点をスタートする必要があることを示唆している。

ボディメイク(外見)を作る目的のトレーニングであれば、筋肉の観点からトレーニング方法選択をスタートするのは合理的である。




問②なぜその『鍛え方』が競技動作につながるのか

この部分は2つに分岐する。
ひとつは鍛え方(方法)と競技動作の繋がりの観点。
①の疑問をクリアし、競技動作に影響の深い筋肉を選択していたとしても、鍛える方法によって成果は大きく変わる。
同じ筋肉でも、競技動作によって要求される働きは確実に異なるからである。
筋肉の収縮様式(力の入り方)だけでも、少なくとも3パターンある。

【求心性収縮】
例えば手でダンベルを持ち上げるときの力こぶ部分の収縮

【遠心性収縮】
手で持ったダンベルを床に下ろすときに肘が伸びる時の力こぶ部分の収縮(筋肉が急に伸びないようにする速度調整)

【等尺性収縮】
肘の角度が変わらないようにダンベルを把持する時の力こぶ部分の収縮

※基本的なことなので詳細はご自身で検索願

ターゲット筋の解剖学的観点を中心に据えると、筋肉の作用さえ知っていればその筋肉の鍛え方は簡単に設定できてしまう。肘を曲げる筋肉であれば、曲げる動作に負荷をかける。分かりやすい。。



しかし、同じ筋肉でも競技動作によってその作用は大きく異なる。
同じ筋肉なのに、違う働き方が求められる。
ハムストリングスは大事だが、サッカーとピッチャーでは必要となる働き方は異なる。


必要な収縮パターンそして収縮タイミング、他の部位との協調など、決して”分かりやすい構図”ではない。
ということは、「ハムストリングスだからこの鍛え方」という構図ではこの疑問をクリアすることができない。

疑問:
なぜその『鍛え方』が競技動作につながるのか

つまり鍛え方を選択するためには、競技動作で要求される動き(収縮パターンや力の組み合わせ)をできるだけ深く理解する必要があると言える。




もうひとつは『あなたが』その鍛え方を採用する理由という観点。
あなたの身体や動き方は他の人と異なるはず。なのに他の人と同じで良いのか。
同じトレーニングや練習でも成果の出方が大きく異なるケースは多々ある。


この点は『対象依存』といって、その選手の身体や動き方を詳細に分析することで導き出される。
それゆえ一般的にはなかなか困難であり専門家の助言を要する。
こういった理由で、ここでは掘り下げることはしないが、最も努力と成果の関係に多くの影響を与える部分でもあるので、本気の人はぜひパーソナルでチェックを受けてみてほしい。



トレーニング選択プロセスを設計する能力

結果的に同じメニューをこなしていたとしても、差が生じるケースは多い。
差を生むのは、「どういう目的と理由でそれを行うのか」の部分である。
「何をするのか」に目を奪われている間は、どんなに“最新の”トレーニングを採用したって、本質的には何も進化していない。
そして方法を探し続ける方法依存の泥沼にのめり込んでいくことになる。
この沼にはまっている人は、「もっと良い方法がある」というフレーズにひたすら弱い。

あらゆるトレーニング方法は、文脈や前提条件次第で「正しい/間違い」はころころ変わる。
どの競技の選手がやるのか、どういう状態の選手がやるのか、どのタイミングでやるのか。
そういった前提条件で指標は大きく変わるため、正しいや間違いは、ほとんどのケースで絶対値ではない。つまり常に絶対に正解となるトレーニング方法はない。
私はそのように考えている。

そういう立ち位置から見ると、フィジカル系のトレーニング方法を選択するまでの『プロセスを設計する機能』は、世の中で考えられている以上に重要だ。


SNSなどで、トレーニンング方法の過剰供給がおそらく今後も続く以上、これから重点的に習得すべきところになっていくだろう。



ピッチング身体操作

最後に、7月に初公開するオンラインセミナーのご案内です。
ピッチャーの競技動作の構造(力の組み合わせ)を紐解き、それに基づきピッチングに必要な身体操作トレーニングを実際にワークアウト形式で実施する流れです。
『トレーニング選択のプロセスを設計できる』ことは非常に重要である、という考え方に基づいています。
トレーニング方法も含めて私が実際にプロ野球のピッチャーたちに指導してきている内容なので、実際のトレーニング選択プロセスも見ていただけると思います。

詳細→ピッチング身体操作セミナー




全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 

YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:https://twitter.com/nakanobodysync

1980年生
たくさんのプロアスリートたちに身体操作を教えています
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
株式会社JARTA international 代表取締役

JARTA
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