マガジンのカバー画像

俳句/短歌/詩 作品

66
自作品
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

うつくし(50首)

うつくし(50首)

連作


うつくし    丸田洋渡

花びらの影が桂馬をおびやかす 立方体の光が動く

送電塔ひとつひとつが磔刑の形に見えて春の疾風

窯変をひとさし指に触れながら言語が今立たされている岐路

水琴窟は銀のきらめき 愛されてきた偽史の愛し方が解った

簒奪か禅譲か美は掏り変わり葉ざくらの川べりを眺めた



美は摩耗する。



朝は楠〈私たちは年甲斐もなく大人として遊んだ〉夜は楡

鋸は引

もっとみる
連作から落とした歌①(1×10首)

連作から落とした歌①(1×10首)

 お世話になっております、丸田洋渡と申します。
 昨年頃から特に短歌連作に力を入れて、まだ誰にも言及されていないのに次の50首、次の30首、次の50首……とがむしゃらにハイスピードで書いてきました。
 この辺りでひとつ、今まで読んできてくださった方へのボーナス・トラック的な記事が必要だと思い、今まで公開した連作を組み上げる上で、最終的にそこから落とした歌たちを紹介したいと思います。
 今まで歌のみ

もっとみる
連作から落とした歌②(1×10首)

連作から落とした歌②(1×10首)

 お世話になっております。丸田洋渡と申します
。①に引き続いて、短歌連作を組む際に最終的に落とした歌を、落とした理由や創作時のエピソードともに触れていきます。



11

殺人鬼/天真爛漫/友だちが誘いを断ったコンサート

──2021.4 ①で説明した「ラウンドアバウト」の頃。四字熟語を入れることにややハマっていた時期。''友だち''というのも良く書くモチーフのひとつです。
「天真爛漫」は、

もっとみる
夏的憂い(30首)

夏的憂い(30首)

  夏的憂い   丸田洋渡

扉から恐い光が洩れている夏的憂いが胸に染みこむ

 ○

翡翠色の雲形定規あそばせて空中に描けるだけ描いた石

空は急に卑猥になって段々と誠実になる 首で挟む傘

占い師の恋愛が上手くいかない それが何 パフェの嵩増しのフレーク

心に藻 陽だまりにある水たまり 殖えそうなわずかなわだかまり

寸分違わず噂どおりの人だった反対側が開くエレベーター

味噌汁のわか

もっとみる