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読書記録|小坂井敏晶 『社会心理学講義 <閉ざされた社会>と<開かれた社会>』

読了日:2024年4月28日

 社会心理学とは、その名の通り「社会学」と「心理学」を織り交ぜたもので、個人と社会がどのように影響しあっているのかを学ぶ学問。身近な例でいうと、職場の人間関係販売戦略(マーケティング)なども社会心理学の範疇だし、広義であれば政治のあり方国民へのある種の”支配”社会心理学で紐解ける。つまり、人がいて社会があるところ全てにおいて、社会心理学を用いることができる。
 「合理性」ばかりが重要視される時代の今、哲学だとか社会心理学だとかは「役に立たない」などと足蹴にされる傾向にあったり、文系よりも理系が有利など言われることも多いが、実際のところ、人の向き不向きを大まかに2つに分けて評価したところで何のメリットがあるのかとも思うし、理系と文系それぞれの守備範囲は誠実を違えているので比較できるものではないと私個人は思う。強いて言えば、理系が得意な人は文系も得意でなければならないと思う。なぜなら科学とは理論的思考がまず最初にあるから。ゆえに、理系に進みたい人ほど、社会心理学などに触れる機会が必要かもしれない。
 本書を一通り読むとわかるが、社会心理学がカバーする範囲はとても広い。イデオロギーと国民への支配形態差別が芽生える根本的原因少数派が世間に与える影響と役割日本という国と国民の性質日本という国の<閉ざされた社会>と<開かれた文化>…。例えばこれら全ては、社会心理学をベースにして「なぜそうなっているのか?」を深く理解することができる。そのロジックを知れば、目の前の景色や出来事の捉え方も変わってくる。「変わる」とは「わかる(知る)」ことでもある。

 『社会心理学講義』、厚みのある本で一見難しそうなタイトルだが、予想を覆して最後まですんなり読むことができた。著者の小坂井敏晶氏は実際に大学で教鞭を執っている方ということもあり、大学の講義で学ぶようなことを、わかりやすく、かつ深く、本として読めるのはかなりオトクなことではなかろうか。
 手元に置いておいて、また時間ができたら最初から読み返したい一冊になった。社会心理学に興味がある方には(むしろそうでない方にも)、積極的にオススメしたい本である。

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