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提案書の「4タイプ」を完全解説!!勝ちパターンを見つける!

これまで数多くの提案書を自身が作成したり、また、同僚、先輩の受注した提案書をいくつも見たりしている中で、営業が作る提案書には「癖」があることに気がつきました。売れている営業はみんな自分の得意な勝ちパターンのような提案をいつもしているのです。

今回は、そんな営業が使う提案書をよくある4つのタイプに分類し、なおかつ資料(PowerPointスライド)として、どのように作成すればよいかまで、解説した記事となっています。

内容は、かなり盛沢山になりましたので、資料作成を超えてセールステクニックみたいな内容も含んだ記事となっておりますので、皆様のお役に立てれば幸いです。

1┃ステップ導入型提案

最近は、大企業であっても、一担当者が大きな予算を取れるということは少なくなって来ました。そんな中、導入ステップを分けて提案するという機会がかなり多くなってきた気がします。

このような場合、まずは、スモールスタートでシステムを導入したり、費用対効果を検証した後で、本導入・追加導入を進めていくというステップアップ型の提案を行うタイプです。

★☆スライドの作り方★☆

資料では、通常の提案書の中に、以下のようなスライドを盛り込みます。

SFA導入までの3ステップのご提案
IoTデバイスを使った工場見える化のご提案

ステップ提案資料では、該当ステップの連番をしっかり振って、どの範囲までが1stステップ、次のどの範囲が2ndステップ…のように、ステップの内容を明確にしておきましょう。

また、よく似ているものとして、松竹梅提案もあります。

かんたんシステム診断プラン

ステップ提案と似ていますが、順を追っていくのではなく、松竹梅をわかりやすく比較して、どれがよいのか判断を促すためのスライドになります。

★☆気を付けるべき点★☆

この提案タイプで注意してほしいのは、ステップ提案向きの製品/サービス、ステップ提案が不向きな製品/サービスが存在することです。

◆適している                                            業務システムの開発、製造装置の導入、新たなマーケティングの企画etc. ◆適していない                                       小規模のシステム開発、定期的にしているキャンペーン、デザインetc.

ステップ提案が適しているものは概して、段階を踏んでいくことにより、最終的にゴールが存在するものといえます。ステップ提案では、1stステップをクリアすることにより、それ以降のステップを安心して導入できたり、費用対効果を理解した上で検討できるということがメリットになるからですね。

逆に、定期的な内容(例:夏の販促キャンペーン等)やほぼ当たり前の内容(例:webサイト制作します→保守します)のような場合は、あえてステップ提案をする意味はありません。

★☆まとめ★☆

ステップ提案をうまく使うことができれば、顧客視点でも「初期導入コストを抑えることができる」「導入時のリスクを下げることができる」などの多くのメリットがあります。是非、活用してみてください。

利用シーン:システム開発、ローコード/ノーコード開発、Webマーケティング、広告プロモーション

注意:自社の製品/サービスや顧客の意向に合わせて、ステップ提案がマッチする場合に使う。ステップ提案ばかりしていると商談単価が下がり、安売り体質になるので注意。


2┃コンセプト・セールス型提案

次はコンセプト・セールス型の提案書の解説です。このタイプの提案は、自社製品/サービスを持つメーカー大型案件を受注する必要がある営業の方は、必ず抑えておく必要があります。

セールス手法で言うところのビジョンセリングやコンセプチュアルセリングなど手法を提案資料作成にも適用します。つまり、製品の機能や価格メリットというよりは、顧客がその製品/サービスを導入した後の理想の姿、解決されたあとの姿をイメージさせて、提案を行うタイプです。

この提案の場合、お客様を満足させるだけでは不十分で、お客様の期待を超えるということが求められます。したがって、後述するように、顧客の細かな要望や課題を把握はするのですが、一つ一つ細かく答えていくというよりは、そのすべての本質を突いたベリーベストのアンサーをひとつ持っていきます。そして、このベリーベストアンサーを常に自社の製品/サービスに設定し、自社が最も顧客の解決策にふさわしいソリューションとして提案を行います。

★☆スライドの作り方★☆

自社/サービスのコンセプトや歴史、あるべき姿などの凝ったスライドが豊富にあり、ストーリーを語ったり、ブランドイメージが統一されているのが特徴です。テンプレートというよりは、オリジナリティのあるスライドが多くなるでしょう。

また、お客様の実現したいイメージを一枚でまとめたもの(ビッグピクチャーとも)を入れます。大型案件では必ずといってよいほど、このような一枚ですべてを語ってくれる最重要スライドがあります。

陣屋コネクト構想

◆中小企業庁、陣屋事例紹介ページよりhttps://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2017/170419smartsme03B.pdf

業界では非常に有名な事例です。システムの細かな設計・連携ではなく、陣屋コネクト構想のコンセプトを一枚にわかりやすく記載しています。そして、それを支えるプラットフォームとしてSalesforceをうまく登場させています。

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◆新日鉄住金ソリューションズプレスよりhttps://www.nssol.nipponsteel.com/press/2017/20171201_110000.html

こちらも同じく、細かなデータ連携やシステム機能ではなく、どの業務範囲まで変わるのかわかりやすく一枚で示しています。

★☆気を付けるべき点★☆

コンセプトセールスの特性上、複数の会社の製品を仕入れ販売する商社、日常的に毎日受発注を回すような卸売業では、コンセプトセールスというのがマッチしない(≒あまりそういう文化がない)ことがあります。

利用シーン:大型案件、自社製品・自社サービスのプレゼン

注意:資料作成スキルというより、そもそものセールススキルが求められますが、成長につながるでしょう。オリジナリティのある資料になるので、作成時間の掛け過ぎにも注意してください。


3┃網羅(RFP)型提案

RFPとは、提案依頼書(Request for Proposalの略)のことで、顧客側が「これこれという事をしたいので、それにマッチした提案してくださいね」とベンダーに対し依頼するものです。

大手企業や自治体の案件など、顧客側が比較的大きな組織であり、検討する体制もできている場合に、よく提示されます。(私のいるSIer、システム開発、コンサルといった業界ではよく目にします)

RFPが出ている場合は、自社のブランドやコンセプトのような抽象的なものではなく、具体的かつ細かな顧客の要望・要件に対して抜け漏れのない回答を行う「網羅型提案書」を作る必要があります。

〈よくRFPが出てくるシーン〉
・大手製造業での生産管理システム導入の提案
・自治体でのパソコン数千台の一括購入etc.

★☆スライドの作り方★☆

スライドの作成方法ですが、例えば、RFP内に以下のようなシステム開発条件の指定があったとします。

開発条件

この時の回答スライドの作成方法ですが、以下のようになります。

提案書の4タイプ

非常に地味ですね(笑)ですが、これをRFPの内の全要件に対して抜けもれなく一つ一つ回答するのが基本の作成方法なります。そのため「RFPの番号と提案書の番号を合わせておく」ことや、自社では当たり前の用語や、記載する必要がないと思っていることであっても「きちんと提案書内に回答として記載する」ということを忘れない(不精しない)ようにしましょう。

提案の差別化や工夫も必要なのはもちろんですが、まずはこれらのスライド作成の基本は絶対に守っておくのが、網羅(RFP)型提案のルールです。

★☆まとめ★☆

RFPがある商談は、よくも悪くも定番の大型商談であることが多いので、経験がものを言います。また、内容も大規模なものが多く、大変骨が折れます(平気で80~150スライドくらいになります)。

ですが、資料を作成する過程で、情報収集力、提案力、業界理解など自身の成長にもつながりますので、是非頑張ってみてください。

利用シーン:RFPが出ている時。特に、大手企業や公共自治体等のようにあらゆることを細かく要求されるような商談に多いです。全く新しい事業企画よりは、単純に規模が求められる商談であることが多いです。

注意:漏れなく、ミスなく。とにかく減点ポイントを極力減らすことが基本です。


4┃ヒアリング型提案(いわゆる提案書)

最後に、ヒアリング型提案(いわゆるよくある提案書)は、王道ですが、この4つの提案対応の中で実は最も勝ちパターンを確立しにくい提案書タイプです。最もロジカルな資料構成ではあるのですが、ロジックだけで人は物を購入しません。また「論理的に考えて、御社の製品は導入効果があまりないということが分かりましたので、他社にします」と納得したうえで他社に負けるという笑えない話もあります…

その変わり、どんな顧客や案件にも使うことができ、確実に自身の資料作成力・提案力アップにもつながります。また、この提案書を作成できる人は、だいたいどんなパターンの資料であっても、きちんと仕上げることができます。

★☆スライド作成方法★☆

ヒアリング型提案では、冒頭、顧客の現状および課題を洗い出し、整理を行います。それに対して、あるべき姿を設定し、解決手段を提案します。

コンセプトセールス型との違いは、解決策に自社製品/サービスだけを設定するのではなく、論理的に導き出したものを設定しますので、案件により、自社製品であったり、他社製品であったり、パッケージシステムであったり、独自システム開発であったり・・・様々なものが設定されます。

最も重要なスライドは以下になります。

あるべき姿

お客様からヒアリングの情報をもとにした本質的な解決策やビジョンが示されるスライドです。

ただし、このデザインは、どちらかというと営業の研修などで習う概念を表した基本のデザインです。お客様への提案用には、この要素をいくつかのスライドに分解したり、アレンジしたりして、よりシンプルに作成するのがよいでしょう。

以下は、現状を洗い出して課題をまとめたスライドです。どんな案件も最初にお客様の現状ややりたいことをヒアリングすることになるので、このスライドは、作成しやすいと思います。

現状整理

課題?問題?あるべき姿?・・・難しいよという方は、聞いた内容(=現状)を分野別に整理するだけでも立派な資料が出来上がります。

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ただの文章の箇条書きとあなどるなかれ、これでも十分にお客様とのコミュニケーションに使えます。人・モノ・カネで整理するのもよいですし、部署別に整理するのも、簡単ですが、お客様にもわかりやすいので、よいと思います。

※問題と課題の違いやあるべき姿の作り方は、解説を始めると非常に長くなるため、ここでは割愛します。以下のような記事が参考になります。                                   https://betterlife-labo.jp/purpose-target-problems-issues/

★☆まとめ★☆

ヒアリング型提案書は王道中の王道、横綱提案です。必ず、あなたの資料作成(+セールススキル)の力になりますので、何度も何度も思考錯誤してみてください。でも、受注という本来の目的も見失わないようにしてください。どんなに論理的で、カッコいい資料で説明しても、人は動くとは限らないのです。

〈作成のポイント〉                                      論理的である分、実際に費用対効果が低いと顧客に伝わった場合、確実に失注します。そのため逆転が難しいタイプの提案でもあります。特に、機能やサポートで劣る中小企業やスタートアップは、自社の強みを生かす売り方も考えましょう。

まとめ

以上、4パターンでした。

もちろん、いきなりすべての提案書タイプを作れるようになる必要はありませんし、会社の扱っている製品や社風によっても使う/使わないということがあるでしょう。

いきなり全部とは思わず、自分のやり方に合った提案書をたった一つでも習得できれば、それをひたすら突き詰めるだけでも、会社でトップセールスくらいには十分になれます。

ご活用頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

<本日の内容>星4つ★★★★☆
「資料作成を得意スキルに、職場で一目置かれる」

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