見出し画像

「母親だけは絶対に許さない」不倫、暴力、ネグレクト、教育虐待、性的虐待…“毒親”に育てられ振り回された子どもたちを襲う負の連鎖【中村淳彦の名前のないコラム】

親子関係がうまくいかないと、子どもの人生はどうなるか。一方的な「あなたのため」を押し付けることは、最悪の結果を招きかねません。他人ではないからこそ、とんでもない悲劇を引き起こすことも……。

あなたも毒親になっていませんか?

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 先日『私、毒親に育てられました』 (宝島社新書)という本を書きました。2ヶ月間ぐらい毒親の取材を一気にして、すぐに書いて本にした感じです。じっくり練られた本もいいけど、こうやって勢いよく書くのもなかなかいい。女性たちから話を聞いたそのまま書いて、すぐに印刷みたいな感じでした。

好評発売中!

 毒親、すごかった。取材対象探しに苦戦するかと思ったけど、「私、毒親に育てられました」「私の母親、毒親です」「母親ろくなもんじゃありません」「母親だけは殺したいです」「母親と地域はもう絶対に許せません」って人があっという間に殺到した。今の日本はすごい状況だな、と思いました。

 毒親に育てられた女性たちの話は、もうめちゃくちゃでした。8割方が娘と母親の関係ですね。母親との関係はいろんなケースがあるけど、すぐに書けってことなのでヤバイ順に掲載した。
 まず、日本の毒親の総論をざっくりと言うと、地方が酷いです。地方はやっぱり男尊女卑とか、長男信仰とか昔ながらの価値観が根拠になって、母親も、母親の母親、祖母もずっと男尊女卑で酷い目にあっている。その娘も酷い生活、酷い人生を強制されていて、だから家族ではなく、地域そのもののせいですね。保守的な地域の常識や伝統によって、生まれた娘が酷い目にあって、一番身近な存在だった母親と、この地域だけは絶対に許さないってなるわけです。
 そんなことになると、もう親子関係断絶は当然です。娘はほとんどの人が子どもを産んでないけど、「あんな母親のあんな血を受け継ぐわけにはいかない、私はもう生涯子ども産みません。あの母親だけは絶対に許さない、そんな血が入っている子どもなんて産めるわけない、産んでしまったら私も同じことしてしまうから、私でこの血を受け継ぐのは最後にします。だから生涯絶対に子ども産みません」っていう人がほぼ全員です。母親と地域を恨み尽くした結果、ほぼ全員にそういうこと言わせてるわけですね。

 都会の毒親となると、代表的な行為は教育虐待です。教育虐待は中学受験とか、娘に幸せになってほしいとか、子どものためという建前のもとに、母親のエゴや見栄のために徹底的にやる。あと、過干渉。娘のことを思ってやったことが全て裏目になって親子断絶して、「母親だけは、あいつだけは絶対に許さない」って最悪な結末になるわけです。
 教育虐待は読者のお母さんでも、「ちょっと怪しい」っていう人はかなりいるでしょう。あなたね、自分がしてること立ち止まって、娘にしてることを振り返ってみてください。どうですか? 娘がやりたくてやっていますか? やりたくてやってないのに「あなたのため」とか言っていませんか? 一度立ち止まって自分が娘にしていることを考えたほうがいいでしょう。
 自分自身の胸に手を当てて、自分は学歴厨じゃないかとか、自分の見栄のために娘を受験戦争に押し込んでないかとか、自分がどういう状況で娘に勉強させてるんだってことを、立ち止まって考えてみた方がいいと思います。せっかく家庭を築いて子どもを産んで、その子どもに恨まれて親子断絶になってしまったら、いったい、あなたの人生はなんだったのでしょう。という、元も子もないことになってしまいます。

 娘と断絶して娘があなたにキレてしまうと、娘はもう子どもを産まない。血は途絶えます。関係が破綻すると憎たらしい母親の血をこの世に残さないぐらいまで、恨みつらみが深くなります。親子関係は友達とか取引先とかとは違って、切っても切れない仲だから、すっぱり切れない。憎しみ合うしかなくて、とことん憎しみ合って、それは悲劇以外の何物でもない。たかが中学受験とか、自分の見栄とかそんなことで悲劇を引き起こしてしまったら、もう取り返しがつかない。現在進行形でやっているならば、直ちに引き返した方がいいですね。

家庭内暴力も、性的虐待も、日本の日常にある

『私、毒親に育てられました』の章立てを読んで、こういう本ですよって説明させてください。さっきも言ったけど、症状が重い順、ヤバイ順に掲載しました。

 第一章はまず「『暴力』と『強姦』という地獄」です。
 地方の話だけど、母親がネグレクトとか暴力とか。自己中心的な母親が娘のことを所有物と思って、さらに地域によっては長男信仰だから長男だけ可愛がっていれば別に私の仕事は終わり、娘にはなにをしてもいいってことで、暴力性が強い母親が娘に徹底した暴力で支配するわけです。男尊女卑が浸透している地方に多いですね。
 あとお父さんは性暴力。まず、大前提として日本の男性はまずい。ロリコンとか変態とか異常性欲者があまりにも多い。必然的に娘への性的虐待も多い。性的虐待は子育ての最悪の結末なので、被害にあった女の子は本当に傷ついていると言えば簡単な言い方だけど、まあ、やってしまったら、とんでもないことになるわけです。
 話聞いてやっぱこれ悲惨だよねというのは、性的虐待ですね。お母さんには関係ないけど、そういう性的虐待するような人と結婚した責任というか、そういう人を選んでしまったのもあるし、あなたが選んだ人が娘に対して強姦するわけだから、家庭と家族にとっては耐え難い悲劇なわけです。地方でめちゃめちゃある。たぶん、日本の日常です。
 
 第2章は「『不倫』が家族を狂わせる」。不倫はいろんなケースがある。ちょっと小見出しの一部読んでみますね。
 
家族が毒なだけではなくて、地域も毒、全員許さない」

 母親の不倫相手による性的悪戯

 母親の不倫相手の娘と同級生に

 大切な物を笑って捨てる祖父母と母親

「死のう死のう、死のう死のう、死のう死のう」

 父親の愛人が家に住み着いて家庭崩壊

 親権を押しつけ合った両親

 角刈りの漁師たちと次々と肉体関係に

 
 すべて地方の話だけど、角刈りの漁師が女子中学生とやりまくるわけです。やっぱり漁師はエロいので、男尊女卑地域、男性優位な地域で、あたりまえのようにそのような行為をするわけです。
 母親に酷い目にあって、父親にも酷い目にあって、家出した中学生の女の子がいた。家出をしたら性欲に飢えた漁師が拾うわけです。特に角刈りの漁師がエロいらしいけど、角刈りの漁師が家出した女子中学生を匿って、セックスフレンドとか輪姦とかする。そうやって性的におかしなことになって、その家出した女子中学生はそれでも家に帰りたくないから、角刈りの漁師に輪姦される方がまだマシという判断となって人生がどんどんおかしなことになるわけです。

 第3章は「異常すぎる『教育虐待』」になります。VOICYのプレミアム放送で取材に出てくれた子を生放送でインタビューしているけど、まあむちゃくちゃな話でした。ちょっと聞いてみてください。彼女は徹底した教育虐待の末に、家出して歌舞伎町の売春婦になって自分を傷つけ続けていた。彼女も「母親絶対許さない」って言っていたけど、教育虐待した母親への復讐のために自分を傷つけるわけです。

 第4章は「毒親の遺伝子」。母親が虐待して娘と破綻する。でも、だからって縁が切れるわけじゃない。憎しみ合う。娘の容姿や性格が、この世で一番嫌いな母親に似る。あれだけ憎んだ母親に中学生になったら顔も性格もやることも似て、自分で自分に絶望する。それで自殺未遂する子もいれば、リストカット以上の自傷みたいなことする人もいる。
 逆に母親に似ていることで破壊衝動みたいなのが起こって、自分で自分のことを自傷するのもきついけど、逆に振れる人もいるんですね。暴力的な人になるわけです。だから恋愛も破滅的になって、そういう人と男性が付き合ってしまうと振り回されて、脅されて大変なことになる。とにかく、その人を中心にして不幸なことしか起こらないわけです。
 で、その本人は生きていて不幸なことしか起こらないから、頭がやっぱりちょっとおかしくなる。冷静に話を聞くと全て母親が悪い。他責思考になる。けど、憎い母親の血が入っている自分が憎いってことだから、他責思考なんだけど、自分も責めるっていうむちゃくちゃなことになるわけです。

 最後の第5章「『いらない子ども』の悲劇」は離婚してたり、シンママになって、その後再婚したり、子連れ同士で再婚したりする。自分の子どもじゃない義父・義母とうまくいかないことは、まあ普通に起こります。普通はうまくいかないと思うので、そうやって振りまわされた子どもが、まあ、おかしなことになるわけです。
 義父か義母からよからぬことになって、今度は義父と義母相手に憎しみ合う。そういう環境、そういう状況を招いた母親のことを憎んで、家族の人間関係がうまくいかなくなって、負の連鎖みたいなことが起こるわけです。
 
 バーッと話したけど、これが宝島社新書『私、毒親に育てられました』で、面白いと思います。毒親に育てられた似たような人が読むのかもしれないけど、反面教師というか、自分はこういうことはならないようにしましょうって気づきだけでも、一瞬にして元が取れるような本です。ぜひ買って読んでください。 

ニコニコチャンネル+「中村淳彦の40歳から婚活ちゃんねる」
好評配信中!
婚活のことならこの一冊!
『中年婚活 50歳、年収450万円からの結婚に必要な30の法則』

<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」ほぼ毎日放送中。ニコニコチャンネルプラス「中村淳彦の40歳からの婚活ちゃんねる」が2月より配信スタート。