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技術実習制度を起点とした外国人労働者仲介ビジネスの表裏

 日本の主な労働力となる15歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年は8,726万人に達したが、2015年には7,728万人。さらに今の30代が高齢者になる50年後(2065年)には、4,529万人にまで減少することが予測されている。働き手が不足していく影響は、既に製造業や小売業を中心に深刻化して、閉店や廃業に追い込まれるケースも出てきている。

これから加速していく人手不足を解消させる手段として、日本政府は外国人労働者の受け入れを容認する政策を次々と打ち出し始めている。2018.8.30号では、外国人介護士の向を紹介したが、それ以外でも、技術実習生として来日した外国人に対して、就労可能な期間が3年→5年→10年と延長される規制緩和が続いている。さらに、試験合格などの条件をクリアーすれば、在留期限の制限が無い在留資格に移行できる道も開かれる見通しだ。

これまでの日本は、国内の雇用を守るため、一部の専門職を除けば「外国人の就労を認めない」というスタンスを貫いてきたが、今回の政策は国内の代替労働力として、外国人を活用することを容認するという、方針の大転換を示している。
それに伴い注目されているのが、外国人技術実習生の仲介事業である。上図にあるように、新興国の外国人が日本での職を見つけて、定住を目指すには「技術実習生」として来日するのが最初のステップになる。

外国人向けの技能実習は1993年に、開発途上国の経済発展や人材育成を支援する国際協力を目的として制度化されたものだが、実際の職場では「実習生=安価な労働者」として利用されてきた実態がある。そこで、2017年11月に施行された法律「技能実習法」では、外国人実習生の保護を強化した上で、実習期間の延長(3年→5年)や、対象職種の拡大など、従来の条件を緩和している。

日本で合法的に就労している外国人の数は、留学生のアルバイトを含めて約127万。その中で技能実習生の数は、は27万人で、ベトナム(38.6%)、中国(35.4%)、フィリピン(9.9%)、インドネシア(8.2%)、タイ(3.2%)の5国で、全体の95%を占めている。日本政府は2025年までに外国人技能実習生を50万人超に増やす計画を立てていることから、関連の人材ビジネスが成長分野として注目されている。

ただし、途上国の貧しい若者を日本に呼び寄せて、安い賃金で働かすことについては、国連や米国務省から「人身売買や奴隷制度に近い」という指摘もあり、表と裏の両面から、外国人材仲介ビジネスの構造を理解する必要がある。

 ベトナム、フィリピン、インドネシアなど、主にアジア圏の若者を技術実習生として日本に呼び寄せる仕組みとしては、実習を行う企業が入国までの手続きを直接行う「企業単独型」と、仲介役となる団体が、入国から生活のサポートまでを行う「団体監理型」がある。しかし、法務省のデータからみた現状は、96.4%が団体監理型であることから、後者の仕組みを理解することが肝になる。

外国人技能実習制度とは(国際研修協力機構:JITCO)

団体監理型で技術実習生を招聘するには、人材を送り出す国側の「送り出し機関」と、日本側の「監理団体」とが連携をして、実習生の送り出し・受け入れをする仕組みになっている。いずれも政府からの認定や許可を受けた団体でなければ、この事業には関われないことになっているが、その大半は民間の人材仲介業者である。

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