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窓ぎわのトットちゃん

鑑賞:2023年12月@TOHOシネマズ新宿

簡単に言葉にしては伝わらない良作。
黒柳徹子さん原作。ご自身の幼少期を通じて戦争に巻き込まれていく市民たちを描いています。

ストレートに言って、あまり期待せずに拝見しました。見事に裏切られた良作。大変失礼しました。平謝りします。しかも、アニメだからこそできる表現も多く、実写で描くとハードなシーンも、淡々と、次々と、見せてくれます。これが実写だったら恐ろしすぎる。

まず驚いたのがキャラクターデザイン。洗練されていて、全年齢対象なタッチなのに今っぽい。少し斜に構えてしまうと、子供に媚びたり大人に媚びたテイストにしそうなものですが、どちらでもありません。古臭さも出そうなのに、全くそれもない。魅力あふれるキャラクターデザインが、作品をずっとリードします。ホントに驚きました。

次にお話です。子供が親・先生・同級生と過ごすのですが、なんともない出来事なのに、キャラクターの機微をしっかり描いている。その上で、戦争の影響がそこかしこに出てきます。両親の呼び方を、パパ・ママと呼ばないように言うシーンなんて、どストレート過ぎるのですが、それをしっかり伝える。幼児麻痺な友達とのお話も、きっちり伝えてくれる。変化球がほとんどない、真っ直ぐで挑んで来る描写の数々に、作り手の実直な姿勢を感じます。文句のつけようがない。

戦争の様相を示す町の人々については、婉曲表現が素晴らしいのですが、そこは朝日新聞の影響が拭えないことだけは心に命じて見なければいけませんでした。良くない偏りは感じませんでしたけれど、ここだけは注意深く見ましょう。

本筋は、おてんばな幼少期の黒柳徹子さんを受け入れる学校の姿勢や、身体の都合でみんなと同じように遊べない友達との関係、そして親の振る舞い。そこに加えて、疎開のために家を取り壊したり、学校の先生との会話が切ないのですが、妙に淡々としているのが、この作品の演出なのでしょう。情をエグる必要は無く、汲み取る人には汲み取れるという、観客を信頼したツクリです。作り手に頭を下げたくなります。素晴らしいです。ありがとうございます。

映画として発表するのが然るべき良作でした。

▲原作本。発売日が1981年。驚きです。

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