『ミナリ』

A24とブラッド・ピットのプランBエンターテインメントが製作で、いかにも「アカデミー賞狙ってます」なムードがムンムンの『ミナリ』。さぞ、移民家族のマイノリティの苦労を描いた重いヒューマンドラマかと思いきやかなり違い、ホームドラマ色が強い映画だった。

 

 

言ってしまえば倉本聰の「北の国から」のアーカンソー版みたいな感じ。ジェイコブら家族はアーカンソー州に来る前にシアトルやカルフォルニアで暮らしているのでアメリカの生活には慣れっこで、そういうカルチャーギャップはほぼない。加えて、都会のカルフォルニアから田舎のアーカンソーという都会と田舎のギャップも妻のモニカが過敏なだけで、こちらも薄い。さらに、韓国系に対するマイノリティへの差別も殆ど無く、農場を手伝うポールや教会で出会う近隣の住民も比較的優しい。

 

要は、独自の手法で農場を切り開こうとするジェイコブの奮闘劇とそんな父親、家族を見つめる7歳のデビッドの目線のドラマ。事件らしい事件は終盤にしかなく、淡々と展開。

唯一、韓国からやって来たモニカの母親が淡々としたドラマの味付けになっている。デビッドにとっては料理も出来ず、花札ばかりやり、変な汁を飲ませる変な婆さんで、その変な婆さんと7歳の子供のやり取りでほっこりさせる。

 

 

このデビッドや長女アンの目線が幼き日のリー・アイザック・チョンと考えれば80年代のリアルなアーカンソー州オザーク高原の風景と考えれば味わいが深いホームドラマではある。個人的には肌が合わなかったが、「北の国から」か大好きな人なら楽しめるワンチャンはあるかな。

 

 

評価:★★★

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