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作業療法士が考える自閉症療育で大切な事 「対立的でない交流スタイル」

自閉症の特徴に、相手の意図理解の難しさやコミュニケーションの困難さがあります。ですが、自閉症の方は相手の情緒的な様子について驚くほど敏感に察知されていると思います。こちらがイライラしたり、嫌悪的な反応、対立的な態度をすぐに見破り、活動やかかわりに乗ってきてくれなくなります。

一度嫌わせると、その後なかなか相手にしてもらえません。
環境と感情を強固に記憶するからかもしれません。
逆に、はじめに好印象を持ってくれると、そのあとは協力的に乗ってきてくれたり、楽しみにしてくれます。

初めてお会いする時はとても注意が必要です。
予告なしにパーソナルスペースに侵入しない、顔を覗き込まない、言語的な声掛けを少なくします。
そして、写真カードのブックを見せる、本人の好きそうな玩具を提示して、子どもが自分から手を出してくるのを待ちます。
本人の嫌がるであろう刺激を最小限にして、本人から動きを引き出すのがポイントだと思います。

「対立的でない交流スタイル」は自閉症療育において様々なことに影響します。

例えば、感覚過敏。対立的な交流スタイルは感覚過敏を悪化させます。反対に、友好的な交流スタイルは感覚過敏を軽減します。これは、感覚過敏が情緒の影響を受けやすいことが背景にあると思います。

また、反省・行動を修正にも強く影響します。自閉症の人は行動を修正する事をとても嫌がる傾向があります。子どもが反省する・修正するには、相手を「好き」と思っていないとしません。つまり、肯定的な関係性が教育や行動修正の土台にあるのだと思います。

自閉症療育で忘れてはいけないのは、「人が人を育てる」ということでしょう。共同注視の意味や、対人関係で「人と関わるのも悪くない」という経験の積み重ねは、肯定的関係性のものとに育ちます。その根本となるのは「対立的でない交流スタイル」ではないでしょうか。

たくさん関われば、たくさん話しかければ良いというものではなく、自閉症児が望んでいる、心地よいと思う関わり方が大切です。

これは、一般的に肯定的な人間関係を築くのと同じだと思います。
違うのは、一般的な人が心地よいと思う関わり方と、自閉症の人が心地よいを思う関わり方にあると思います。

自閉症の方に、「この人なかなかいいな」と思ってもらえると、うれしいものです。


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