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「~しない」は目標にならない

療育や支援の相談で「~しないように教えたいんです」と聞かれることがあります。一通り困っている事を聞いて後に、「じゃあ、どうしてほしいですか?」と聞き返します。

これは、言い負かそうとか、論破しようとしているわけではありません。
「~しない」というのは行動ではないので教える事が難しいから、指導目標にならないのです。???

指導目標を立てる時は「行動」にする必要があります。
「行動」って何かというと2つポイントがあります。

1つ目は、死人にはできないこと
2つ目は、具体的であること

一つ目の「死人にはできないこと」をわかりやすく言うと、「~する」という形に置き換える事です。なので、「~しない」や「~される」というのは死人にもできるので、行動にはなりません。

例えば、
「靴を投げない」→「靴を持って下駄箱に置く」
「叩かない」→「カードを~さんに渡す」
といった感じです。

2つ目の「具体的である」は、誰がみても同じ、数える事ができるといった感じです。

例えば、
「落ち着きがない」→「椅子から立ち上がり、廊下を歩く」
「騒がしい」→「あーと言う」
といった感じです。

勘の良い方はお気づきだと思いますが、目標を行動に置き換えるとどうやって教えていくかイメージが付きやすくなるかと思います。
「靴を下駄箱に置く」であれば、下駄箱に靴のマークをつけておいて、そこに置きたくなるように、合わせたくなるように設定することが考え付くと思います。

逆に「~しない」という事は、実は何も教えていない事になります。
なので、指導目標にはならないのです。

もう一つ「~しない」という指導には副作用が生じます。
行動を減らすための方法は、ペナルティ(好きな事へのアクセスを減らされる)か罰(嫌悪刺激)を提示するがあります。

特に後者の嫌悪刺激を使った指導は、倫理的に現代のヒューマンサービスにおいては使用してはいけない方法です。

また、「ちがうでしょ」「だめでしょ」と言われ続けたら、どうしていいかわからなくなり、固まり、行動そのものがなくなってしまいます。

これが、「~しない」指導による副作用「学習性無力感」が形成される仕組みです。分かりやすく言えば「やっても良い事がないなら、やらない」という思考・行動パターンができてしまう事です。

実はこの状態が、予防したい2次障害の一つです。
「とにかくチャレンジしてみる」お子さんを支援するのはそんなに難しい事ではありませんが、「何もしたくない」という方を支援するのはとても難しいのです。

話はもどって、指導の狙いを「~する」という形にすると、それができたとき「褒める」ことができます。「うれしい」とまたやろうとします。褒められて行動する経験を積み重ねていると、上手くいかなかったり、できなかった時に、「あれっ」という顔を大人がするだけで、修正したりやろうとします。これが自分からやろうとするを育てるコツです。

だから、「ほめる」「子どものチャレンジをポジティブに見守る」ことが大切なのです。


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