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作業療法士が考える自閉症療育で大切な事 「個別性の原理」

「1人の自閉症を知っているという事は、1人の自閉症しか知らないという事」

これはTEACCHの中で言われていることで、自閉症支援における個別性の重要性を表していると思います。

自閉症支援は、診断基準をもとに、特徴的な発達特性が「共通して」みられる人達に、特性に応じた支援やサービスを提供していきます。

共通してられる特徴にたいしては、これまで様々な支援方略が蓄積されているので、それらを学んで支援に生かしていくと良いと思います。視覚支援、環境を整理する支援、感覚の困難に対する配慮、コミュニケーション支援などなど

でも、こうした知識を研修会で学び、実際支援をしようとすると、どうでしょうか?ある自閉症の子に行った支援やプログラムを他の子にそのままやってみてうまくいくでしょうか?

上手くいかないことが多いかと思います。なぜでしょうか?
それは、自閉症の子は1人1人違うからです。
個別性の原理があるからです

何が好きなのか?どういう認知機能をもっているのか?どんな場所で生活しているのか?どんな地域で生活しているか?誰と生活しているのか?支援者はどんな人か?家族や本人はどんな希望や夢を持っているのか?

考えてみれば当たり前のことなのですが、どうしても、「自閉症にはこれをやっておけば大丈夫」みたいな考え方に流れてしまいやすいです。

ある自閉症のお子さんに型はめのやってもった時のことです。市販されている乗り物の型はめを使用していました。バス、車、消防車、飛行機などのピースがあり、全部やってほしかったのですが、飛行機のピースしかやってくれませんでした。「消防車もやろうよ」とピースを提示しながら誘ってみても応じてくれません。何度も提示すると、しまいにはピースを投げてしまいました。

恩師に相談したら、あっさり
「飛行機が好きなら、全部飛行機で型はめをつくればいいだろ」と。
ハッとしました。
僕が個別性の原理を理解した瞬間でもありました。

さっそく、木で工作して6種類の飛行機型はめを作成、その子に提示したら、うれしそうに一瞬で型はめをやってくれました。何分か飛行機だけの型はめを眺めた後、「お片付けしようか」とフィニッシュボックスと指さすと、自分でフィニッシュボックスにしまい、次の課題に取り組んでくれました。

このように、既存の教材や固定化されたプログラムを強要する、個別性を排除したアプローチは、抵抗や不安を引き起こしてしまいます。さらにそうしたアプローチに固執すると精神的苦痛や身体的苦痛を引き出す状況を子どもを強要することになってしまいます。

優れた支援というのは、こうした「個別性の原理」を重要視しています。TEACCHの構造化も、ABAによるABC分析も、書籍などを参考にしてみると、「どの子にもこれややればよくなる」みたいなものはありません。支援のアイディアだったり、考え方の枠組みを提供してますが、それを支援者が、個人に合わせてカスタマイズし、使いこなし、オーダーメイドの支援を作っていく必要があります。

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