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本を買った帰り道の鞄

本を買った帰り道の、本で重くなってしまった鞄が好きである。
二、三冊では、殆ど変化はないが、五冊以上になると、急に重くなる。
その重さ分だけ、まだ自分の知らないことがあると思ったら、楽しくなって来て心が軽くなるので、重くても気分が良い。
俺は、古本屋をよく利用するので、百円の文庫本、二百円の単行本などを、いつも七冊ほど買う。
鞄の中に、まだ俺の知らない世界が沢山詰まっているのだと思うと、嬉しくなって、自然、前向きになる。
ただし、これが借りた本ではいけない。
図書館の帰り道の鞄の重さは、数日後にこれを返しに行かねばならない為、重さが倍に感じてしまう。
そして、読み終えたあと、返しに行くさいには、ただ、紙の束を肩に担いでいるかの如き苦行と化すので、ある時期から、図書館を利用する場合には、少しづつ借りることにしている。
そんなことを考えながら、今日も、また、古本屋で買った本を鞄に入れた。
いつもより重たいのは、寄席の帰りである為、鞄に、風呂敷に包まれた着物が入っているからだ。
俺は、この重さ分だけの知らないことを、落語でどれだけ喋れるだろうかと、いつもより二倍重い鞄なのに、心がスキップする位、軽くなっているのである。

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