見出し画像

想像上の誰か

 僕には昔イマジナリーフレンドがいた。イマジナリーフレンドが何か一応説明しておくと、幼少期なんかにみられる現象で、架空の友人を頭の中に作り出して遊んだりすることだ。子供は『○○くんがね』みたいなことを言うのに親からしてみればそんな子はいないし幼稚園にも在籍していない、子供の頭の中に存在する謂わば幻覚のような存在。それがイマジナリーフレンドだ。昔から子供には幽霊や妖精がみえるなんて言われてるのももしかすると、同じような理屈なのかもしれない。

 そんな少し不思議なイマジナリーフレンドなのですが、僕はその自分が生み出したイマジナリーフレンド仲が良くなかったのです。といっても別にケンカをしていたとかでもなく、そもそも殆ど話したことがありませんでした。例えるなら『委員会で一回話したことがある人』くらいの感じでした。委員会で偶々一緒になったとき結構しゃべったけど廊下で会うと会釈くらいになってそのうち会釈もなくなっていく、僕とイマジナリーフレンドはそんな感じの関係性でした。もうフレンドと言っていいのかもわかりません。

 それでも、僕が生み出した存在なので結構な頻度で視界には入っていました。家の中でもよく見かけていたので、すれ違う度「…っす」みたいな挨拶をして通り過ぎていました。まだ幼稚園児だった自分には珍しいくらい離れた距離の知人だったので新鮮ではありました。きっと両親も僕にイマジナリーフレンドがいたことを知らないでしょう、「偶に会釈みたいな仕草で挨拶かどうかわからないくらいの息の抜き方をする癖」がある子くらいにしか思っていなかったのではないでしょうか。

 子供がイマジナリーフレンドを作る理由としては孤独感からの防衛や承認欲求を満たすためとからしいのですが、一体あいつが僕の何を満たしていったのでしょう、勝手に作っといてなんですが、もう少し僕に都合のいい行動をしてくれてもよかったのではないでしょうか?なんかずっと黙ってるし、たまにお菓子をあげようとしても「…だいじょっす」みたいことをいって断ってくるし、ごくまれに世間話をしようとしても「あ~」しか言わなくて話が全然続かないし、5歳の頃に初めてあったのにあいつ小4くらいだったし、とにかくとっつきにくい奴でした。そいつは僕が8歳くらいの頃には見かけなくなりました。

 
 何かの防衛本能によって子供の頃の僕があいつを作り出したとして、僕はあいつに何を求めていたのだろうか…

 


この記事が参加している募集

#眠れない夜に

68,748件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?