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【映画評】フランシス・D・ライオン監督『機関車大追跡』(The Great Locomotive Chase, 1956)。

 これは南北戦争時の有名事件を映画化したものである。1955年に開園したディズニーランド関係の業務に忙殺されていたため、ウォルト・ディズニーが初めて(監督ではなく)プロデューサー業に徹した実写作品だ。とはいえ「機関車狂」ウォルトのこと、歴史家を雇って徹底的に当該事件を調べ上げ、ロケーション撮影にも付き合った。
 パンフレットによれば、本作でウォルトは事実上の〝技術監督〟を務めた。結果、劇中に登場する西部大西洋鉄道(W&ARR)の蒸気機関車は、「主役」のジェネラル号、これを追走するヨナ号、ウィリアム・R・スミス号、テキサス号を初め、脇役の4台まで、当時の同型のものを借りてくるなど、極めて忠実に再現された。

 「1862年4月12日午前6時5分 ジョージア州北方36キロのビッグシャンティ駅に停車中の南軍輸送列車を22名の北軍密偵が奪って北上を開始した。驚いた列車の車掌ウィリアム・フラーは直ちにその後を追い、延々140キロにわたる息づまる大追跡が展開された」(『機関車大追跡』パンフレットより)。

 人間の方の主役、北軍密偵J・アンドルースに扮したのはデイヴィー・クロケット役でおなじみのフェス・パーカー(パブリシティで来日した時もアライグマの帽子に鹿皮服、愛銃オールド・ベッツィと共に羽田に降り立ったらしい)。彼に奪われたジェネラル号を追うのは、その車掌、W・フラー(J・ハンター)だ。
 北軍の22名は当時優勢だった南軍の主要輸送路を麻痺させようとした訳だが、結局は全員捕縛され、脱獄した14名以外はアンドルースを含め縛り首となる。前半は豪華な機関車追跡劇だった本作も、史実を受けて、死にゆくアンドルースと好敵手フラーの、要は将来の南北における和平を先取りする友情譚に収束する。
 お気づきの通り『キートンの大列車追跡』(The General, 1926)も同じ事件を元にした映画ですが、それについてはまたいつか。

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