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30歳、雨の季節

重い身体を起こして、どんよりとした朝を迎える。今年も梅雨がやってきた。

雨の日は苦手。家をいつもより30分早く出なければならないし、時間をかけて整えた髪は湿気で膨み、お気に入りの服は濡れ、傘で親指の皮を挟んで流血。さらには自宅のエントランスに大量のナメクジが這いつくばっている。

こんな日々が1ヶ月も続くのかと思うと憂鬱で仕方なくて、「雨が好き」だなんて到底言えそうにない。


昨年の誕生日を節目に30代へと突入したけれど、心に余裕がなくなんだか人生の梅雨入りを迎えた気分。

お肌のキメや体力はもちろん、考え方や立ち居振る舞い、置かれる環境、他者からの見え方など、20代の頃とはあらゆることが違っていて(変えていかなくちゃいけなくて)、30代をどのように生きていくべきか分からない。

かといって30代子なしパート主婦の生き方についてフォーカスした本など見つからないし、近くにこんな話ができる知り合いもいないので、ひたすらに1人悶々と考えていて。

それで、ふと過去に憧れた女性がいたことを思い出した。

独身時代に勤めた会社の上司で、年齢は40代だったかもしれない。彼女は自分の仕事をこなしながらチームの調和を図り、偉ぶることなく部下たちの面倒を見てくれて、感謝される前に自ら感謝を伝えられる人だった。

そんな人だから人望は厚かったのだろう。他部署との連携でミスが発生したとき、彼女が謝罪の言葉を口にすると
「気にしないで。寧ろいつもありがとう」
と他部署の課長にかえって感謝されていて感服してしまった。

彼女のようになれるかといえば、今の私には難しい。でもこんな素敵な人がいたことを忘れずにいようと思う。きっとこのエピソードは私を目指すべき方向へ導いてくれる気がする。


思えば、昔ほど人に干渉しなくなったし、若さに縋ることもなくなった。

ちょっとだけ寂しくもあるけれど、縛られていたものから解放される感覚に似ている。絡まっていた縄を一つ一つ解いていけば、だんだん心にも余裕が生まれるだろうか。

どんよりした朝も、雨の降り続ける季節も、容易く受け入れるにはきっと心の余裕が必要なんだ。

少しずつでも、自分なりの"30代の生き方"を見つけられますように。

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