見出し画像

トマト

トマトの苗を買った。360円
物価高の折、この苗からたくさんのトマトができれば、あっという間に元はとれる。
プランターでもできると聞いたので、買う。880円。
ん?1,240円。
さらに、底石と野菜の土が併せて750円。
ちょっとまて、合計1,990円
家に帰って、買った物を眺めながら、少し不安になる。

ユーチューブを見ながら、植え付けし、毎日せっせと水やりをする。
途中、肥料をやれとあったので、買いに行く。
550円。おいおい、二千円越えちゃたぞ。
しかし、ここで諦めてはいけないことは百も承知。
年を取れば少しは辛抱強くなる。
黙って買う。

「おお、実が付きはじめた!」
やれば、できるもんだ。思わず笑みがこぼれた。
水をやりすぎると甘くなくなるということで、細心の注意をはらう。
自分ながら涙ぐましい努力の甲斐あって、青かった実の一つが、大きく赤く熟しだした。
一日一日と食べごろになっていく。
明日には、もっと熟しているかもと、一日一日延ばしていくが、もういいだろう。
「いよいよ食べれそうなので、明日は採るよ」
と奥様に報告。
「ふ~ん。まだ採らないの」

次の朝
いつもより早起きして、ハサミを片手に庭に出る。
が、しかし。しかし。

昨日は、あれだけ赤く光沢していたトマトがなんと、無残にも半分食べられ地面に落ちてるではないか。
さらに、食べ残ったトマトには、無数のアリがたかっている。
よっぽど甘かったのか。
カラスか。
まだ、赤くなっていないトマトは無傷のまま。
本当に、カラスは賢い。よく見ていて、一番の食べごろの時に、一番に食べてしまった。
2,540円もする高級トマトを、、

ああ、こっちが、もう少し前に採っていれば、、、
おそらく甘くて美味しい、血と汗と涙の結晶。でも無いか。
否、甘くなくても、まずくても、初めて作ったトマトの感激が口にできていたはずなのに。
辛抱し過ぎたのか、欲をだしすぎたのか、カラスより、自分の判断の甘さに腹がたった。

肩を落とし、奥様に報告する。
「遅かった。カラスに先に食べられた」
「何しているの、さっさと採っておかないからよ。カラスが、バカー、バカーって鳴いているわよ」

本当に、カラスより、腹がたつ。


この記事が参加している募集

わたしの野菜づくり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?