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腸内細菌と私。食養を学んで深まった食への関心


食材へのこだわり


私は昭和43年から医薬品卸売業を営んでいます。長くこの仕事に携わってきた私は、真に私の財産と呼べるのはお客さんとの出会いであるとはっきりいうことができます。ですからメーカーエゴではなく、お客さんの求めるもの、お客さんの安心して使えるもの、お客さんに有利なものという目で商品を選び、お届けしているつもりです。また、医薬品を売るということのみにとどまらず、健康とはなにかを私なりに探究してきたのも、より良いものをお客さんに提供したいという思いからです。
ところで、玄米食の勧めなどを含めた「食養」という流れが古くからあります。この食養に出会ったのが食への関心を呼び起こされるきっかけでした。そして医薬品販売のかたわら、玄米食など「正食・食養」に深くかかわるようになりました。

私自身も玄米食を続けてみましたが、これを行うと実にいろいろなことが体に現れてきます。
まず食の味覚が変わる。2カ月くらい続けた頃でしたが、今までうまかった刺身がぱさぱさとしてうまくない、それから、みそ汁がうまい、漬け物がうまい、その一方でステーキに魅力を感じなくなってくる。それからとても通じがよくなるなどの変化が見られました。
食養をすすめている方々の食材へのこだわりには大変なものがあります。まず野菜や穀物をつくっている生産者と直接交流してより確かな食材を求めています。また実際に生産地に見学に行ったり、泊まり込みでのディスカッションをするなど、本当にいろいろなことをやっておられる。こうした方々とも広くお付き合いをさせていただきました。

作物の質は土で決まる


生産者にもすごい人がいます。ほとんど仙人みたいな方で、植物と話ができる、木とも話ができる。ちゃんと気持ちの交流ができるのです。もちろんそのような人は本当にいい作物をつくられます。
この食養の世界から農というものをじっくり見てみると、作物の質は70、80%は土で決まるのだということがわかってきます。いい土の畑は本当に軟らかで、棒キレを突き立てるとどこまでもずぶずぶと入っていく。私が出会った生産者の方たちもまずは土づくりに力を注いでおられました。いい土をつくれば、いい作物がつくれるのです。
ふかふかふわふわしたいい土には多くの微生物がすんでいます。微生物は土の中にあってエサとなる有機物によって繁殖します。植物や動物、微生物の死骸を有機・無機の成分に分解することで土を肥やしているのです。また有害なバイ菌でも、殺菌力のある鉱物金属イオンや有効微生物で分解されて消滅することもあります。
土1グラムの中には、およそ1億の微生物がいるといわれています。その中には有害な微生物や細菌もいます。それらは毒薬や蒸気消毒などで殺菌してきましたが、それを何度も行うと作物の収量が落ちてきます。なぜなら有効菌も殺してしまうからです。そうして微生物が減少すると土が固くなり土質が劣化してしまいます。
このように微生物はさまざまな働きをしますが、そのためにはpH、温度、水分、通気性、ミネラル・微量元素などによる栄養バランス等々、これらすべての環境条件が整わなければ有効な活動ができません。その環境を整えるのが人間による「土づくり」です。有効微生物がちゃんと働ける環境があってはじめて元気でおいしい作物が育つのです。
作物と人間の切っても切れない関係

栄養素の乏しい現在の野菜


野菜に含まれる栄養素が減っている、このことはずいぶん前から大きくとり上げられてきました。一番センセーショナルに減ったのがβカロチン(ビタミンA)です。昔はピーマンの中に400単位ぐらい、それが今は10分の1の40単位ぐらいしか入っていないといわれています。
それに比べるとミネラル・微量元素の欠乏は隠れて目立ちません。しかし食べ物からミネラル・微量元素が摂取できなくなったため、体の中のホルモン生産や代謝が低調になってしまい、結果として体の不調、不定愁訴に悩む人が増えてきました。
一方ではクスリが効かなくなってきています。昔はこんな副作用は出ていなかった、などといったおかしなことが増えてきました。ほんとに何だろう何だろうと、20年前から私もその原因に強い関心を持っていました。

ミネラルが生命の代謝を活性化する


そこでわかってきたのは、農業における化学肥料の多用による作物への影響です。やがて、時間が経過するにつれて、過剰な化学肥料の影響が見え始め、野菜も稲も日持ちが悪くなり、一見よく育っているように見える果樹が花も咲かせず実も結ばない。これは化学肥料によって増収を続けているうちに土が次第に衰えてきたからです。そのため一転して病気の発生や収量が激減する事態となってしまいました。
昔は食べたモノを地域で糞尿にしてそれを発酵させて田畑に還していました。今は化学肥料で量産した作物を街に持っていって食べさせる。糞尿として出てくるべきミネラルは全部下水道で海に直行し田畑には還りません。昔は赤土を田に入れたり、枝打ちしたものを田に持っていって焼いてそれを広げて、という作業をしていました。ミネラルそのものを土に還していたのです。しかし今はそのミネラル循環がうまく転回していません。
ミネラル、小さな小さな微生物と、植物や動物との連環が全部断ち切られています。
栄養の足りない作物(とくに土中ミネラルの欠乏したもの)が流通し、それを食べて生きている現代人の生命力が衰え始めています。
生命代謝を担っているのは酵素であり、その酵素を活発にするのがミネラルです。ミネラルが欠乏していては酵素が働かず、ビタミンも活性化しません。
いい土がいい作物を育んでこそ、その作物に含まれるミネラルが生命の代謝を活性化し、健康な人を育てます。地球上の生命活動の根源が土にあり、土が健康になれば人間も含めた生きるものすべてが浄化され健康になります。
土と作物、そして人間とはいわばそれぞれが深い関係で結ばれるトライアングルの関係にあります。そのどれもが「健康」な状態にあるためにはミネラル・微量元素が重要なかかわりを持つことになるのです。

(33) #05  1分でわかる 体の基礎が整うメンテナンスシリーズ「誕生物語」 - YouTube


次回は 第2章 腸の異常は万病のもと お楽しみください。
 

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