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傾聴技法とグルーミングの違いはあるのか? 性犯罪者、カルト宗教に悪用される傾聴技法

性犯罪者が未成年に性的行為をすることを目的に、やさしい言葉をかけたり、気持ちに共感したりして、信頼関係を構築することをグルーミングという。
    例えば、成人がSNSを通して未成年に、義父が再婚相手の子に、教師が生徒に、施設職員が保護児童に対して、信頼関係を築き、性的行為を行うことである。また、幅広くいうと、これは性犯罪者だけではなく、カルト宗教や霊感商法などの信者獲得にも当てはまる。さらに、占い師や自称心理カウンセラーの信頼関係構築にによる顧客獲得にも当てはまる。信頼関係構築を手法としたマインドコントロールと言っても良いと思われる。 要するに、グルーミングとは、心理学的手法を使い、信頼関係を構築し、相手を支配し、自己の欲望や所属組織の目的を遂行しようとするマインドコントロールの一種である。グルーミングは、性的目的だけではなく、相手を支配するために、色んな目的で活用されている。
 さて、信頼関係を構築するための心理学的技法としては、傾聴技法が存在する。傾聴技法は、ロジャースのカウンセリングの三原則である、受容、共感、自己一致が基礎にある。また、ソーシャルワーカーの世界では、対人援助の基本的態度として、バイステックの7原則というのがある。
 とりわけ、「相手を否定せずに話を聞く」という傾聴技法の態度だけでも、孤立化した子どもたちは、共感され、自身が受け入れられたと思い、相手を信頼する。このようなレベルだけでSNSで悩み相談をしている団体も多く見かける。これでは、グルーミングの手口と変わらない。ただ、目的が異なるだけである。
 本物の傾聴技法や対人援助の7原則とグルーミングは異なるのだろうか、目的が異なるだけなのだろうか? 
 ポイントは、支配という動機にある。信頼関係を支配の道具にするかどうかである。結論から言うと、支配的関係を否定し、相手の自由を尊重する要素があるかどうかである。現代哲学の立場でいうと、他者性である。つまり、関係性における他者性が担保されていれば、グルーミングとはならない。
 ロジャースのカウンセリングの三原則では、自己一致の部分が大切である。性犯罪者は、表面的な受容と共感はできるかもしれないが、自己の性的欲望のために傾聴技法を利用している自分に向き合っているかどうかである。健全に社会化されている人間なら、本当に向き合えば罪の意識が生じ、行為は抑止される方向に向かう。また、対人援助の7原則でいうと、被援助者の自己選択を尊重することになっており、支配的関係からの自由が担保されている。
  また、公認心理師、社会福祉士、精神保健福祉士の倫理要綱に従えば、相手の人格を尊重することになり、支配を目的にすることはできないはずである。
  心理カウンセラーが、カウンセリング効果ではなく、クライエントに対する洗脳効果を自己のカウンセリング効果だと勘違いしていないか懸念される。
 科学は悪用されることがある。自然科学だけではなく、人間科学においてもそうである。対人援助における信頼関係構築技術が盗用され、悪事に利用されるおそれは否定できない。
 傾聴技法がグルーミングの手法として悪用されないようにするためには、どのようにしたらいいのか、今後の課題である。

   参考
 グルーミングの手法として利用される心理学的手法は、傾聴技法の他にも、コールドリーディングが存在する。これは、占い師などが活用していると言われている。コールドリーディングは、相手のことを言いあてたと思わせることで、相手を信頼させ、マインドコントロールする手法である。


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