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人間関係と社会的格差

私は就労支援に通っていた時に知り合った人たちと今も交流を続けている。

その中の一人と激しく言い合いになったことがある。


ファミレスでのバトル

発端は彼が女子もいるグループチャットで頻繁に下ネタを発言したり、特定のメンバーを「イジり」と称して「クズ」と呼んだりしたことだった。
私は彼を咎めた。
「女子もいるのだからデリカシーのない発言はやめてほしい」「働くことに難しさを抱えている人もいる中で誰かを『クズ』と呼ぶのはお互いを疑心暗鬼にさせるし、二人の間では了解が取れていても第三者にはそれが伝わっていないのだから慎むべきだ」
しかし彼は
「俺はチャットが話題がないから盛り上げてるだけなんだ」「『クズ』は恋人とも『あんたクズやねー』とか言い合う。軽口だし、イジって面白くしてるだけだし、そもそも俺だって会社でイジられてきた。そうやって人は成長するんだ。」
と言って聞かなかった。典型的な悪い意味での体育会系だった。

その場では「余計なこと言ってごめんなさい。」と私から謝りひと段落したのだけれど、彼は納得がいかなかったようで再び例の彼をイジりだした。私は「イジりが面白いのは周囲にその二者の関係が伝わっていて初めて面白いし、テレビでやっていて面白いのはプロがやっているからであり、彼らは無償でやっているのではないし、綿密に打ち合わせをした上でやっている。ただ人を『クズ』と呼べば面白くなるわけではない」と説得しようとした。
というか完全に追い打ちをかけてしまった。
彼は数日後グループチャットを抜けた。
後日、共通の知り合いから彼はASDで人の気持ちがわからないのだと聞いた。

体育会系VS文化系という構造だったのか?

「イジられていた」彼は共通の知り合いで、今も頻繁に会っている。一緒にライブに行ったり、就職や精神疾患に関する情報交換をしている。彼は今でも例の「イジって」きていた彼とは仲良くやっているらしい。二人とも体育会系のノリが合うようで、山登りやランニングなどをさらに別の知り合いとも企画して楽しんでいるらしい。

私は圧倒的に文化系の人間だ。
音楽や美術、言語学などに興味が向いていて、考察することが好きだ。

ここであることに気づいた。
私がやりあった体育会系の彼は年下や後輩、部下に対する「イジり」が本当に生産的でその人を成長に導くのかを考えずに行っているようだった。「自分もそうされてきた。それで成長してきた。」と繰り返し言い、そういう肌感で生きているのだ。

私だったら部下や後輩を「成長させなければいけない」という考えには(上長からの命令がなければ)至らないし、もしそれが必要とあらばそれがどんな方法であるべきか、その人にとって最善の策は何かを考えるだろう。もちろん「イジり」が必要なのであればその手段も選択肢に入ってくるかもしれないが、誰それと使えるものではないと考えている。

ライブ映像とLINE

ある日、私は「イジられて」いた彼に「ラインで先日のライブの撮影可能曲の動画を送ってほしい」と頼んだ。私、実はそのライブに行けなくて(別のライブに行っていて)、X(Twitter)を見てもフルの動画が上がっていないのだ。

彼は言った。「俺電気系疎いんだよな〜」

私は手順を細かく教えた。
ラインのトークを開き、「カメラの絵の隣の四角にギザギザがついたとこ」をタップして、下からせり上がってくる写真と動画一覧の中から該当の動画をタップし、右下の紙飛行機の絵をタップするんだと。
ライブ会場の天井席でやったので電波が最悪だったため動画は届かなかった。
「家ならWi-Fi契約してますよね?」と言うと、彼は「いや?」と言った。そんなはずはない。彼はパソコンを使ってよくYouTubeを見ていることを話した記憶がある。今時有線しかないはずはない。
極め付けは以前「電子チケットの受け取りのためにアプリを入れてもらうことが必須だ」と話したとき「ドコモショップ行かないとわかんないなあ」と言ったことだ。
つまりITリテラシーが全くと言っていいほどなかったのだ。

これは格差だ。

そう私は思った。

私の父は通信の会社に勤め、後に独立してコンサルをやっていた。ITに関してはなんでもお任せだった。私も特別ITリテラシーが高いわけではないが、家でWi-Fiを契約していて、それでPCもスマホもタブレットも通信していることくらいは流石にわかる。それぞれにIPアドレスが設定されているとか、モバイルデータ通信すればスマホの契約の料金が上がってくることくらい知っている。アプリの探し方も落とし方も、通知の設定や情報の受け渡しの制限だって自分でできる。ポップアップが出てくる通りにすればいいだけなのだ。

しかし彼にはその能力がない。
以前無料のLINEスタンプの入れ方を教えようとしたら、何も考えずに「プレミアム〇ヶ月お試し」のポップアップのOKを押していた。「ああ、こういう人が契約書を読まずにハンコを押すんだ」と思った。その後プレミアムを解約できたかは聞いていない。契約状況も分かっていないのだろうし、おそらくあの調子だと同居されているご両親も月240円引き落とされていたところで気づいていないだろう。

格差と人付き合い

体育会系な彼ら二人の共通点は「方法を考えない、知らない」「感覚で生きる」ことにあった。
あとはASDという病気も。でも実は私もASDであることがのちに発覚するので、これは三人の共通点だ。

考える人間にとって、考える力のない人間と暮らしていくことは難しいのかもしれないと思った。大学の社会学の教授の言葉を思い出した。「大卒の人は世間の大半が大卒だと思い込んでしまう。なぜなら同じ階層の中でしか人付き合いをしないからだ。しかし実際に高等教育を受けているのは人口の三割に過ぎない」

真理だ。

私は体育会系の人との人間関係は本当に彼らが初めてだった。私の常識は通用しない。「考えればわかることなのになぜ?」と思ったところでどうしようもないのだ。私たち文化系が頭を使っている時、彼ら体育会系は体を使って行動に出ているのだ。

なんだか偉そうだな。うん、実に偉そうで上から目線。
これが格差の姿かもしれない。

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