見出し画像

ミライの小石24.臆病さんが孤独にならないための緩やかな意思表示

毎晩寝る前に、娘から今日あった出来事を聞くのが私の日課になっています。娘は「今日は学童クラブで○○ちゃんがレゴで大きなおうちを作ってたから『いーれーて』って言って一緒に遊んだんだ。」と楽しそうに話す日もあれば、「『あーそーぼ』って誘ったけど、『だーめだよ』って言われた・・・。」と思い出し、落ち込む日もあります。

自分のことを振り返ってみると、大人になるにつれ、『だーめだよ』の精神的ダメージは大きくなり、いろいろと言い訳をつけて『いーれーて』を言わなくなってきたように思います。また、おなじく拒絶されることを回避するために、『あーそーぼ』という自分からの声かけもしなくなってきました。そのせいで、「やってみたいな」と思うことに参加する機会や、「仲良くなりたいな」と思う人と関わる機会を逃してきたようにも感じます。

こんな人付き合いに臆病になっている人の背中を押してくれる仕掛けをいくつか見つけたのでご紹介します。


まずは、『いーれーて』の意思表示をしやすくする仕掛けです。

ベルギーのある村の小学校に「HAPPY Speeltijd」という遊具が設置されました。校舎の壁面に取り付けられるこの遊具は、スマイリーフェイスから2本の腕が長く伸びた形をしていて、スマイリーフェイスは、子どもたちが次にどんな遊びをするのかを決めるルーレットになっています。そして、その遊びに参加したい子どもは『いーれーて』と言う代わりに、長く伸びた腕にそっとタッチします。腕に触っている子は全員が遊びに参加するルールになっているので、『だーめだよ』と言われることはありません。

『いーれーて』が拒絶されないルールなので、子どもたちは意思表示をしやすくなるわけです。

In Bornem, a village south of Antwerp, a schoolyard innovation has been installed to prevent playtime exclusion. The HAPPY Speeltijd is a large, wall-mounted wheel that kids spin to decide what to play next. A key feature? Any child who touches the wheel's widely-extended arms is automatically part of the game.(中略)That basic rule lays the groundwork for inclusive play and removes the barrier of a child having to ask if they can join in.

(引用1)


次に、『あーそーぼ』の意思表示をしやすくする仕掛けとして紹介するのは、Oma's Soepというスープメーカーがオランダ・アムステルダム市内のスーパーと協力して試験的に始めた取り組みです。

Oma's Soepは、スーパーの通常の買い物かごの横に、「I'm open to a good chat」という文字が書かれた緑色の買い物かごを置きました。知らない人と交流したいと思う人は、ただ緑色の買い物かごを選ぶだけで『あーそーぼ』の意思表示をしていることになります。そして緑色の買い物かごを持った人に声をかければ、『だーめだよ』と言われることもありません。

a Dutch soup brand launched a campaign in ten of Amsterdam's Albert Heijn grocery stores to facilitate connections across different age groups. Next to the stores' usual bright blue baskets, Oma's Soep placed stacks of green ones. The green baskets feature the text "I'm open to a good chat," signaling a shopper's willingness to engage with strangers.

(引用2)

 この2つの仕掛けに共通するのは、緩やかな意思表示にあります。

意思表示がとても簡単で、しかもそれは拒絶されることがないため、一歩を踏み出しやすくなります。最近の研究によれば、孤独の健康への悪影響は、1日15本の喫煙にも相当すると言われています(出所1)。

日本でも、高齢者の孤独・孤立は以前から社会問題になっていますが、近年は若者が抱える孤独感も問題視されるようになってきました。

年齢を問わず『いーれーて』と『あーそーぼ』を緩やかに意思表示できるような仕掛けが町中にちりばめられれば、もっとつながりが生まれる機会が増え、孤独を感じる人が少なくなるかもしれないですね。


(引用1) HAPPY Speeltijd's spinning wheel tags game for kids to play and ensures no one is left out (trendwatching.com) 
https://www.trendwatching.com/innovation-of-the-day/happy-speeltijds-spinning-wheel-tags-game-for-kids-to-play-and-ensures-no-one-is-left-out
2023年1月31日閲覧

(引用2)In Amsterdam, green grocery baskets indicate shoppers are open to chatting with strangers (trendwatching.com) 
https://www.trendwatching.com/innovation-of-the-day/at-amsterdam-supermarkets-green-baskets-signal-shoppers-will-stop-to-chat-with-a-stranger 2023年1月31日閲覧

(出所1)孤独は「1日15本の喫煙」に相当する健康への脅威 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
https://forbesjapan.com/articles/detail/67477
2023年1月31日閲覧


この記事を書いた人:藍山
仕事と子育ての「ある」生活をしています(「両立」とはとても言えない)。混沌を解きほぐして一本の縄を綯うような作業が好きです。
関心…船釣り/Learning by doing/月イチ清里/ガロ系/法医学/ターコイズ

こんな記事も書いています


この記事が参加している募集

みらいの校則

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?