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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編

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人口減少と少子・高齢化は地域の産業にも大きな影響を及ぼしている。後継者不足、人手不足が叫ばれ、最近では新型コロナウイルスの影響もある中、各業界、企業、団体では、伝統産業や美しい農… もっと読む
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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(9・終)伝統産業 地元の味にファン 山本味噌醸造場 新商品、体験で発信力

 伝統産業は人口減少や後継者不足、中央の大企業の進出などの影響を受けている。伝統を守りたいが、将来の見通しが立たず、子どもには継がせられないというジレンマが立ちはだかる。

 上越市ものづくり振興センターは「淘汰(とうた)されているが、今も続いている所は何らかの取り組みをしている」と話す。市が力を入れている発酵食品の一つ、みそを製造している山本味噌醸造場(同市中央1)の山本幹雄代表社員(47)に取

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(8)伝統産業 内職から派生 伝統の手工芸 東京に販路求め活路 吉田バテンレース

 上越市の伝統産業として有名なものに、バテンレースが挙げられる。現在も生産を続けている吉田バテンレース(同市東本町2)の吉田節子代表(69)に、時代による変化とその対応について聞いた。

 バテンレースは手工芸品のレースの一種で、テーブルクロスやピアノカバーなどに使われている。『地方工業の研究・新潟県上越地方を中心として』(赤羽孝之、西山耕一編著・1990年)によると、上越市での生産は明治31年に

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(7)事業承継 どう〝外貨〟稼ぐか 「とがった強み」持つ

 上越市は事業承継に関するセミナーの主催や外部機関と連携して相談会を開き、承継を促進するほか、経営を継いだ人に経営やマネジメントを学ぶ機会を設け、後継者の育成を支援する方針だ。「事業者が望む形で引き継げるような意識啓発を推進していく」(市産業政策課)。

〈グラフ=廃業を予定している事業所のうち売上額、収益額、顧客・販路確保の状況(令和2年『上越市中小企業実態調査』の結果をもとに作成)〉

 では

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(6)事業承継 存続か廃業か岐路 地元の中小・小規模事業者 地域密着企業に難局

 人口減少や高齢化の進行は、地域の産業にも影響を及ぼしている。特に経営者の高齢化と後継者不在は、円滑な世代交代や事業承継の足かせとなっている。背景には競争の激化や企業の将来性、といったいくつもの問題がある。地域の現状と課題を探った。

 上越市、妙高市、糸魚川市それぞれの統計によると、3市合計で1万4000を超える事業所があり、従業員数は合計で約13万人。3市とも飲食業や小売業をはじめとする第3次

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(5)農業 増える耕作放棄地 農地の集約にも課題

 コメの作付面積と収穫量で全国トップクラスを誇る上越市。近年は少子高齢化による後継者不足、農地を手放す農業従事者の増加など、多くの問題を抱えている。

 同市高田の市街地から東に約10キロ、同市妙油の農業会社「花の米」はコメの生産、加工、販売を行っている。黒川義治社長をはじめ、長女の松野千恵さんと夫の直人さん、三女の黒川沙希さんが実務の中心となり、黒川社長の妻・薫さんと二女・西山安依さんが事務など

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(4)農業 6次産業を具現化 若手入り活性に一助 柿崎・中山間地

 農業は従事者の高齢化が著しく、担い手不足が叫ばれて久しい。機械化や農地集積などによる大規模農業が進む中、中山間地域や平野部の農地を守り、耕作放棄地を生かそうと、各法人、団体、個人農家は知恵を絞り、汗を流している。

 「柿崎名水農醸」と名付けられたプロジェクトがある。名水は、山あいの柿崎区東横山で湧き出ている大出口泉水(平成の名水百選)のことを指す。農醸は、農業と醸造を組み合わせたもの。東横山の

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(3)林業 森林整備し次代へ 技術継承、生産加工も

 上越市の面積の55%、妙高市では同73%を占める林野。かつて燃料や資材として木材が使われていた時代は変わり、現在は放置・荒廃している森林が増加、木材価格の低迷も続き、土地所有者や境界の不明など、多くの課題を抱えている。上越地域にはいわゆる、林業を営みとする林家はいない。森林組合と所有者が中心に守っている。昨年4月から新たな森林管理システムがスタート。地方自治体(市)と組合、所有者が一体となった整

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(2)漁業 担い手育成へ努力 収入増で魅力向上を

 「大変だけど、やりがいはある。新たにやりたいという若い人も相次いでいる」。穏やかな日和の3月下旬の名立漁港。8年前、勤めていた製造業を脱サラして漁師の道に進んだ船主の板谷憲さん(52、名立区名立大町)は、20代の若手と底引き網を修繕しながら話した。

 名立漁港には大型船4隻があり、年間の水揚げ額は9764万円。底引き網、ごち網、刺し網、ばい籠などの漁を行い、全量を長野市の卸業者が買い取っている

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〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(1)人手不足、維持に懸命 産業各界・農山漁村 労働生産性は向上

 人口減少と少子・高齢化は地域の産業にも大きな影響を及ぼしている。後継者不足、人手不足が叫ばれ、最近では新型コロナウイルスの影響もある中、各業界、企業、団体では、伝統産業や美しい農山漁村を維持し、次の世代へ受け継ごうと懸命に活動している。AI(人工知能)やコンピューターが発達しているとはいえ、人の手によるところは大きい。「地域を守る」第2シリーズは産業面のデータや取り組みを紹介する。

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